世田谷区立奥沢図書館
以下は、休館前の世田谷区立奥沢図書館の訪問記です。
世田谷区立奥沢図書館 訪問記
世田谷区立奥沢図書館は、奥沢駅そばの奥沢区民センター内の図書館。緑を基調にした内装で、古びた施設なのに不思議と居心地がいいです。原子力発電に関するさまざまな本を集めた「原発コーナー」があります。
奥沢図書館は東急目黒線奥沢駅から歩いてすぐ。日吉方面ホームから改札を出た場合はすぐ左にある建物、目黒方面ホームから改札を出た場合は左の踏切を渡って駅前広場の左にある建物から奥沢図書館に入れます。
ただ、この建物、一つの建物に見えますが、厳密には隣接している二つの建物が1階内で行き来できるようになっているので要注意。駅前広場に面している側が三敬ビル、その奥側が奥沢図書館がある奥沢センタービルで、奥沢センター側の階段・エレベーターから上がっていかないと奥沢図書館には辿りつけません。駅前広場側の入口から入ったら、通路をしばらく進んで、右に現れる化粧品屋さんの先の階段で上るか、化粧品屋の先辺りで左の通路に折れて突き当りのドアを入った右にあるエレベーターで上がってください。
ちなみに、この奥沢センタービル1階の商業フロアが、ここだけ昭和のままなのではないかと思うような雰囲気で、何ともいい味わいなんです(笑)。(たぶん)チェーン店ではない100円ショップや、お菓子屋さん、八百屋さん、魚屋さん、小さな本屋さんなどが所狭しと集まっている。「書店」ではなく「本屋さん」、「鮮魚店」ではなく「魚屋さん」と呼ぶのがふさわしいような、小さくて地域密着の雰囲気に満ちたフロアで、奥沢図書館への階段に直接入れる入口もあるのに、不思議とこのフロアを通ってしまいます。
奥沢図書館は奥沢センタービルの3階にあたります。ちなみに、2階は奥沢区民センターで、2階以上が区の施設というかたちになっています。2つの階段それぞれから図書館エリアへ入れる入口があり、2つの入口の間にカウンター、その前に一般書架が広がっており、カウンターから見て左端の別室がこども室、こども室入口手前右には中高生コーナーがあります。また、カウンターからみて右にCDがあり、さらに右へ行くと手前側に新聞・雑誌コーナー、奥側に閲覧席がずらっと並んでいます。
奥沢図書館が開設されたのは1973(昭和48)年、建物としては、1968(昭和43)年に開設された梅丘図書館に次いで世田谷区で2番目に古い施設です。でも、本棚同士の間が広くて書棚が見やすいし、絨毯もわりとふかふかしている。床も壁も緑の空間で妙に居心地良く、私にとっては気が付くと長居してしまっている図書館です。
こども室は、特に靴脱ぎスペースなどは設置していないのですが、右奥に何もない空間があり、おそらくここでおはなし会をするのではないかと思います。多くの図書館では対象年齢別に児童コーナーの棚を配置していますが、奥沢図書館は絵本を入口入って左手前、紙芝居を右奥と少し離れた場所に置いています。が、空間がゆったりしているせいか、それが使いにくさではなく、小さい子も大きい子も一緒に好きなところで本が読めるといった雰囲気につながっているように感じます。一般書架とは壁で仕切られたこども室なので、少しくらい大きな声を出しても大丈夫。読み聞かせも心置きなく楽しめます。
絵本は、本の大きさによって青ラベル(小さい本)と赤ラベル(普通~大きい本)に分けたうえで、日本人作家と外国人作家を交互にして、絵を描いた人の苗字の頭文字で分類されています。交互というのは、まず苗字が「あ」で始まる日本人絵本画家の絵本が並び、次に苗字が「ア」で始まる外国人絵本画家の絵本が並び、その次に苗字が「い」で始まる日本人絵本画家、「イ」で始まる外国人絵本画家の本、苗字が「う」で始まる日本人絵本画家…といったかたちの並び順です。児童読み物も同様に、低学年向けの青ラベル、高学年向けの赤ラベルに分けた上で、日本人作家と外国人作家を交互にして、著者姓名の五十音順に並んでいます。
こども室入って右には「子育て支援コーナー」があり、子育てに関する本、赤ちゃんの名付けに関する本、離乳食の作り方や通園グッズの作り方に関する本などを揃えています。児童向けのCDも、一般書架のCDコーナーではなく、この子育て支援コーナーにあるので、ご利用の方はご注意ください。その右に児童文学に関する棚もあるし、子育て支援コーナーの下段で図書館が作成した児童向けお薦め本のブックリストなども数種類配布しているので、それらも活用してお子さんがたくさんの本の出会えたらいいですね。
奥沢図書館自体がシンプルな長方形の区画なので、一般書架も同じ向きで配置された本棚に、本が分類記号順で並んでいてわかりやすい書架です。強いて言えば、壁沿いにある棚に家事関連本などが飛んでいるのが、初めてきたときはわかりにくいかもしれませんが、わかってしまえば問題なし。座席も、右奥に集中している机席のほか、左の家事関連本付近にパソコン利用可能席(但し、電源なし)があったり、書架の棚脇にソファがあり、皆さん思い思いの本を読んで過ごしています。
料理や手芸の本は分類が細かいです。特に料理は、「日本料理」「西洋料理」といった地域分類、「魚料理」「野菜・フルーツ料理」といった素材別分類、「調味料・ソース」「お弁当・野外料理」といった種類別分類、また「栗原はるみ・平野レミ・小林カツ代・ケンタロウの本」のように著名料理家の項目もあるという細かさ。「食のエッセイ」という項目とは別に「外国食のエッセイ」という項目もあるので、海外の食に関するエッセイが読みたい方はそちらをどうぞ。
日本の小説とエッセイは一緒にして、著者名の姓名の五十音順で並んでおり、複数作家による作品集は「ん」に分類され、「わ」の後に並んでいます。外国の小説は、国別分類はしておらず、“外国文学”でひとまとめにして、日本の小説と同様に、著者姓名の五十音順。複数作家による作品集も、日本の小説と同様に「ン」に分類されています。
カウンターから見て右奥の一画には「原発コーナー」が設置され、原子力発電の仕組みに関する本や、内部被爆に関する本、原発報道に関する本、南相馬市や飯舘村など福島の様子を取材した本、チェルノブイリに関する本など、原子力発電に関する様々な本が集められています。これらの本は、一般的な図書館の分類だと、原子力発電の本は「電気工学-発電」、内部被ばくは「医学」、原発報道は「ジャーナリズム」といったように、全くバラバラの棚になってしまう。それをこうして一箇所にまとめてくれるというのは、原子力発電所をどうしていくかがこれからも長期的に大きな課題となるだろうことを考えると、とても助かる工夫です。いろんな意見の本が揃っており、こうした資料を活用してしっかり考えなければならない問題なんだと感じます。
カウンター右手には奥沢周辺の情報コーナーがあり、宮本三郎記念美術館に関する本や、自由が丘のカフェのガイドブック、奥沢で見つかった諏訪山遺跡に関する資料などもあります。どちらかというと地味なコーナーなのですが、奥沢の小・中学校が連携して世田谷9年教育に取り組む試み「和みの学び舎」の紹介展示もあったりして、へぇ~とじっくり読んでしまいました。
私のもともとの考えなのですが、図書館だって他の建物だって、新しくてきれいであればいいってものじゃない。古いものには新しいものにはない味わいがあると思うんです。そういう視点でみると、奥沢図書館は古さがいい味わいになっているんですよね。私がこう感じてしまうのは、奥沢図書館自体だけでなく、上で書いた1階の昭和の匂いを感じる商店街のせいもありそうですが(笑)。
私としては、奥沢図書館のあちこちで見られるリサイクル精神にも心くすぐられます。例えば、CDの棚。CDのうち半分くらいが、細かい仕切りの入った深い棚に入っているのですが、この棚、よくみるとLPレコードを入れるラックなんです。LPレコードを本棚に本を差すのと同じように入れられる棚に小さな台をいれて、手前にせり出す上下2段に改造して使っているんです。
また、海外小説の文庫の棚では、空のCDケースを著者見出しに使っていました。文庫本の棚は奥に板を渡して奥行きをぴったり文庫サイズになるよう調節しており、そこにCDケースを入れると少しはみ出て見出しとしてちょうどいいんです。こんなふうに館内でリサイクル工夫を見かけるにつけ、なるほど上手いと手を打ってしまいます。
また、古い図書館だと、棚と棚の間が狭くて見にくかったり、一人分の座席・机が小さかったりと、空間の使い方がキツキツであることが多いのですが、奥沢図書館は古いのに空間の使い方がゆとりあるんです。施設は古いのに使い勝手は悪くない、いいかたちで歳を重ねた大人のような図書館…といったら、褒めすぎかな(笑)。
奥沢図書館が開館してから40年もの間、いろんな人がここで本を読んで喜怒哀楽を感じたり、勉強したりしていたと想像すると、場所で昔の人とつながっている気分にもなります。妙に居心地がいい奥沢図書館の雰囲気をぜひ味わってください。
世田谷区立奥沢図書館 データ
以下は、休館中の仮事務所のデータです。
住所 | 東京都世田谷区奥沢3-5-7(旧奥沢まちづくりセンター) →Google Mapで見る | ||||
Tel | 03-3720-2096 | ||||
開館時間 |
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定休日 | 月曜(祝日は開館し、翌日を休館) 12月29日~1月3日 | ||||
最寄駅 |
東急目黒線 奥沢駅から徒歩7分
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設備 | |||||
音声試聴設備 | なし | ||||
映像視聴設備 | なし | ||||
ネット閲覧PC | なし | ||||
持参PC利用 | パソコン利用可能席(6席)で持参PCの利用可能。電源なし。 | ||||
LAN接続 |
2024/10/12に世田谷区立図書館ウェブサイトにて確認
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