移転前の旧・江東区立豊洲図書館
旧・豊洲図書館は2015年9月9日を最後に移転のための休館に入りました。その後、現在の豊洲図書館が2015年9月24日に移転開館しました。
以下は、移転前の旧・江東区立豊洲図書館の訪問記です。
移転前の旧・江東区立豊洲図書館 訪問記
豊洲図書館はゆりかもめの豊洲駅のすぐそば、有楽町線の豊洲駅からも数分という好立地にある豊洲文化センターの2階にあります。特にゆりかもめの豊洲駅からは地上へ降りるまでの通路から鶯色の豊洲文化センターが見えるので、道のりの説明も不要なくらいです。
豊洲は十年くらい前まで、ビルがぽつぽつ建つほかは何もないという印象でしたが、あっという間に高層マンションが増え、大きなショッピングモール「アーバンドッグららぽーと豊洲」ができたりと、雰囲気が変わりました。そして更にこれからも、東京オリンピックに向けていろいろな施設が建つ予定がある激動の地域といえそうです。変わるといえば豊洲図書館もその一つで、現在豊洲文化センターの目の前で建設中の「豊洲シビックセンター」に移設される計画があります。豊洲図書館からゆりかもめの軌道に沿って少し進むと運河に面した豊洲公園もありますし、東京タワー・レインボーブリッジといった風景も楽しめるのでお薦め。天気のいい日は公園で読書もいいですね。
豊洲文化センターの2階に上がって図書館エリアの入口を入ると、右手前に児童コーナーが、その奥に一般向けの小説が並び、右の最奥が閲覧席コーナーです。入口の左先にはカウンターがあり、左奥に小説以外の一般書架、また入口正面を奥に進むと、CDコーナーと中高生コーナーがあり、一番奥に新聞・雑誌コーナーがあります。子ども向けのおはなし会を行う「おはなしの部屋」は、この図書館エリアの外に出た、1階への階段向かって左にあり、対面朗読もこの部屋で行われます。
1989(平成元)年5月に開設された豊洲図書館はそれほど古いわけではありませんが、すぐ隣の敷地に新しく建設されている豊洲シビックセンターに移転する計画があります。既に建っている豊洲シビックセンターが地上12階の大きな建物であるのに対し、豊洲文化センターは2階建てで、新しい建物の陰で運営の最後を迎えている様子が物悲しい気もしてしまいます。が、これも開設からこれまでの間にゆりかもめが通り、マンション建設によって住民が増えた影響の表れ。豊洲図書館を通じて、豊洲という地域の変化が垣間見えます。
児童エリアは休日に来ると近隣の若い世帯がお子さん連れでいらっしゃって賑わっています。児童エリア中央にひょうたん型のテーブルがあり、ざっくり言ってテーブルの入口側が絵本や幼年向けの読みもの、テーブルのカウンター側が高学年向け読み物とちしきの本という配置です。ちしきの本の「遊び クイズ」の棚上にはカルタも所蔵しています(貸出も可能)。
児童エリアの棚を見ると、絵本は日本人作家の作品も外国人作家の作品も一緒にして、絵を描いた人の姓名五十音順に並んでいます。児童読み物は、日本人作家の作品も外国人作家の作品も一緒にしたうえで、対象年齢によって「幼年よみもの」と「高学年読み物」に分けて、著者姓名五十音順に並べています。紙芝居の棚下には仕掛け絵本もあるので、そちらも手に取ってみてください。
豊洲はここ数年でマンションがたくさん建ち、子どもがいる世帯数が増えた地域。その状況を受けて、週1回の子ども向けおはなし会に加えて、赤ちゃんから小さい子向けおはなし会が週2回行われています。他の江東区立図書館での赤ちゃん向けおはなし会が多くても月2回であることと比べると、豊洲の赤ちゃん世帯の多さがわかります。私には子どもがいないので参加者として出たことはありませんが、傍から様子を見るに、図書館の赤ちゃん向けおはなし会ってママ友・パパ友ができる場でもあるんですよね。お子さんがいる方はぜひご活用ください。
一般書架は文学とそれ以外で場所が分かれており、文学に低い棚、それ以外に高い棚を使用しているため、面積として文学エリアが広くなっています。日本の小説は著者姓名五十音順、但し複数の著者にアンソロジーは「ン」に分類され、「ワ」行の著者の後にまとめて並んでいます。外国文学は、「中国文学」「英米文学」といったように、国・地域別に分類したうえで、著者姓名五十音順に並んでいます。
場所柄が表れている資料として面白いのは、新聞・雑誌コーナーに東京ビッグサイトの広報誌があること(窓に向かって左側の雑誌棚の上)。東京ビッグサイトも住所としては江東区なんです。年間スケジュールを見ると、東京モーターショーや東京国際ブックフェアのような有名なイベントだけでなく、洗浄総合展や「クルマの軽量化技術展」のようなニッチな展示会が開かれているのがわかって、眺めているだけでも面白いです。
豊洲図書館はあまり強くアピールしていないのですが、帆船の日本丸をマスコットにしているようなんです。児童コーナーの柱にも日本丸の彫刻が飾られているし、所蔵雑誌につけられる「x年y月z日からかりられます」というシールも日本丸。ただ、以前カウンターの真ん中辺に置いてあった日本丸の模型も現在はなくなってしまい、今となっては本当に隠れマスコットになりつつあります。雑誌コーナーの片隅には、雑誌が貸出可能になる日は「ヨット」のシールの日付で確認できるという説明があるので、もしかしたら職員さんも日本丸でなく単なるヨットだと思っているのかもしれません(笑)。
豊洲図書館は上に書いたように移転計画があり、現在の豊洲図書館はもうすぐ閉まってしまいます。大きな施設への移転なのでその新しい施設への注目が集まりますが、豊洲に現在ほど住民がおらず、陸の孤島は大げさにしても江東区の端っこ感が強かった頃からいた住民の読書環境を支えていた現在の豊洲図書館のことも忘れてはならないと思います。
豊洲図書館はゆりかもめ豊洲駅のすぐそばで、通勤通学でゆりかもめと有楽町線を乗り換える人にも寄りやすい場所にあります。最近の電車内ではスマートフォンを操作している人が多いですが、新しい豊洲図書館がオープンしたら、有楽町線やゆりかもめで江東区立図書館の蔵書を読む人が増えるかも?そんな風に地域の人にとって身近に使える図書館になることを願っています。