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移転前の旧・北区立浮間図書館

旧・浮間図書館は2020年3月4日を最後に移転のための休館に入りました。その後、現在の浮間図書館が2020年4月1日に開館しました。

以下は、移転前の旧・北区立浮間図書館の訪問記です。

移転前の旧・北区立浮間図書館 訪問記

last visit:2014/01/19
§ 図書館の場所

浮間図書館のある浮間地域は、荒川と新河岸川に挟まれた土地で、まさに「間に浮いている」ような場所。浮間図書館の最寄り駅である北赤羽駅からして、水の存在を強く感じさせてくれます。というのも、駅のホームが新河岸川をまたぐかたちで建てられており、ホーム下を川が流れる様子が見える駅からの景色が面白い。また、北赤羽駅付近では埼京線に沿って東北・上越新幹線の線路が通っており、新幹線がすぐそばを通り過ぎる光景は、住民の方には見慣れた景色かもしれませんが、たまにしか来ない私には嬉しくなる光景です。

そんな北赤羽駅の下り方向の端から地上に降りたところが浮間地域で、北西方向に少し歩けば浮間図書館に着きます(詳しい道のりはこちら)。集合住宅の1階に図書館があるかたちで、図書館好きとしては住民の方が羨ましくなります。

§ 図書館内の様子

図書館入口を入ると、左に児童コーナー、正面にCDコーナーがあり、その奥に新聞・雑誌コーナーがあります。カウンターは右手前にあり、その前に一般書架が並んでいます。一般書架奥の窓際に閲覧机が並んでいるほか、右奥に机だけが並ぶ閲覧室があります。団地1階の一部分を占める図書館なので、規模としては小さめです。

建物の窓側が団地の緑地に面しており、ふと窓を眺めると木々の緑が目に入ってくるのがいい感じ。地味だけど落ち着ける雰囲気がとても居心地いいです。駅から浮間図書館まで歩いた限りでは、浮間地域自体がそんな雰囲気にも感じられて、勝手にイメージを膨らませてしまいました。

§ 児童エリア

児童エリアは扉などはなく開かれた区画ですが、一般書架エリアとは別室のような構造になっているので、読み聞かせをする際にも周囲に気兼ねなく声を出すことができます。窓側に広い靴脱ぎスペースがあり、休日は熱心に本を読む子どもがたくさん集まります。

絵本は、日本人作家の作品と外国人作家の作品を別にしたうえで、絵を描いた人の姓名五十音順で並んでいます。児童読み物も著者姓名五十音順に並んでいますが、日本or外国という分類ではなく、中国のよみもの、英米のよみもの…といったように、国・地域別に分けたうえで著者姓名五十音順になっています。

北区立図書館では布絵本を所蔵していて貸出も可能です。浮間図書館では児童エリア入口正面の棚の窓に面している側に布絵本があり、小さなものから大きなものまでバラエティ豊か。紙の絵本とは違う手触りや、マジックテープやボタンを活用しての仕掛けが楽しめるので、小さいお子さんをお持ちの方にはお薦めです。

§ 一般書架

一般書架も地道にやるべきことをやっているという様子です。図書館規模にしては机席が45席と多いのが、机でじっくり調べものをしたい人には嬉しいところ。更にその机が全て一人分ずつ仕切りで区切られているタイプなので、正面に座っている人が視界に入ると集中しにくいという人にはお薦めです。

日本の小説・エッセイは一緒にして、著者姓名の五十音順に並んでいます。但し、複数の著者による作品集は、タイトル名を元に五十音順の並びに入れられています。例えば、小池真理子(コイケ マリコ)が書いたの本の隣に、7人の作家のアンソロジーである『恋のかたち、愛のいろ』(コイノカタチアイノイロ)という本が並び、その隣に小泉すみれ(コイズミ スミレ)が書いた本がある、といったかたちになります。外国の小説は、「中国文学」「英米文学」「ドイツ文学」のように国・地域別に分類したうえで、著者姓名の五十音順に並んでいます。

上で、小説とエッセイが一緒になっていると書きましたが、小説は「913.6」、エッセイは「914.6」とラベルの番号が違うので、「エッセイではなく小説が読みたい」というときなどにはラベルを元に本選びができます。たとえば、山田詠美さんのように小説もエッセイも多数書いている方の棚を見ると、小説もエッセイも一緒になって並んでいるわけですが、「山田詠美さんの小説が読みたい」という場合は、棚にある本のうち「913.6」のラベルがついているものを選べばいいというわけです。

カウンター向かって左にある大型本の棚上は、北区が登場する本のコーナーになっています。北区立図書館では、北区が登場する本をリスト化しており、その本には背に北区のコミュニケーションマーク(桜の花びら3枚で「K」の文字をかたどっている)が貼っています。浮間図書館の蔵書では、高村薫『照柿』や平岩弓枝『王子稲荷の女』といった小説本や、戦時中の翼賛選挙に対して無効の判決を下した裁判官を取り上げた『気骨の判決』といった本にシンボルマークがついています。

この「北区が登場する本」については、利用者に情報募集を呼びかけており、私も2度ほど情報を寄せたことがあります。浮間図書館でも「北区が登場する本」コーナーに投稿用紙が用意されているので、見つけた方はぜひご協力を。既に集まっている情報については、こちらのページで確認できます。

カウンター向かって左手前の棚には漫画も揃っています。『ちびまる子ちゃん』『YAIBA』などの子ども向け作品から、手塚治虫、浦沢直樹など比較的大人向けの作品までありますし、持ち運びやすい文庫マンガもあります。

§ 浮間のことなら浮間図書館!

カウンター向かって左の角にある地域資料コーナーには、浮間図書館オリジナルキャラクター「マーチャン」と「ウッキー」のイラストが入った浮間の地図が掲げられてます。浮間のトリビアも紹介されており、西浮間小学校で毎日校旗を掲げているポールは、1964年の東京オリンピックで使用されたポールだそうです。

図書館の地域資料コーナーには東京都や北区に関する資料が揃っていますが、浮間図書館の地域資料コーナーは浮間の資料も充実しており、それは「図書館で収集している」という事実に加えて、「浮間に関する資料がいろいろある」という事実も示しています。例えば、『知らなかった!驚いた!日本全国「県境」の謎』という本には、浮間地域が昔は埼玉県だったという事実が掲載されています。1926年10月に東京府岩渕町に編入されるまでは、埼玉県横曽根村に属していたんですって。

もう一つ、私が気になるのは『マルエツ55番店物語 -スーパー反対闘争の記録-』(大スーパーマルエツ進出反対協議会著)という本。浮間地域にマルエツが店舗を出店しようとした際、商店街など地域の皆さんが反対し、この本の発行時点では浮間にできるはずだった55番店は欠番状態のままなのだそうです。川に囲まれた地域で頑張っていらした商店街の皆さんの思いがその行動につながったように思えて、いつかじっくり読んでみたいと思っている1冊です。

どの図書館もその地域性が出るものですが、浮間図書館には浮間地域全体の落ち着いた雰囲気や、川で隔てられているからこその結びつきみたいなものが感じられて、つい長居したくなります。いつか浮間の資料をじっくり読みに再訪しようと思っています。