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葛飾区立男女平等推進センター(ウィメンズパル)図書資料室

葛飾区立男女平等推進センター(ウィメンズパル)図書資料室 訪問記

last visit:2016/04/22

葛飾区立男女平等推進センター(ウィメンズパル)図書資料室は、お花茶屋と青砥の間にある施設で、葛飾区立図書館のカードを使って資料の貸出ができます。女性やジェンダー、家族などに関する図書を多数揃えています。

§ 施設への道のり

男女平等推進センターの最寄り駅はお花茶屋駅。距離としては青砥駅も近いのですが、直線状に行けるルートがなく、青砥駅からの道のりは1km以上になってしまいます。一方、直線距離としては青砥駅より遠い京成立石駅からだと道のりで1km未満。京成立石駅からウィメンズパルまでの道のりは、葛飾区役所やタカラトミー本社の前を通るルートでもあり、「葛飾区を歩いている」というのを体験できます。

§ 施設内の様子

ウィメンズパルは4階建ての建物で、男女平等社会の実現に向けた講座・講演会を開催したり、女性向けの相談を受け付ける男女平等推進センターがあるほか、消費生活センターや障害者就労支援センターも入っています。そんな施設の2階に男女平等社会の実現に役立つ資料を集めた図書資料室があり、葛飾区立図書館カードを使って本を借りたり、葛飾区内の他の図書館にある本の予約受取場所にしたり、返却することもできます。

図書資料室は、公共施設内の一部屋が図書室になっている小さな部屋。入口を入ると、左手前にカウンターがあり、その先に書架が広がっています。奥の中央に6席分の大きな机があり、座席はこれだけ。また、右奥の一画には子ども連れの方が絵本を読んだりできる靴脱ぎスペースがあります。ただ、大人用の閲覧席のすぐそばなので、声に出して絵本を読むことはしにくい造りです。右手前の隅には葛飾区立図書館の検索機があり、これを通じて葛飾区立図書館全館の資料の検索・予約が可能です。

§ ジャンルが特化された図書室

こうした男女平等推進施設というのは多くの自治体に設置されており、そのほとんどでこうした図書資料室を設けているのですが、女性の社会進出に重きを置いているところもあれば、世代格差や経済格差などあらゆる差別・格差に広げて資料を充実させていたりと、それぞれ傾向が分かれています。それは、どのかたちが優れているとか遅れているとかというものではなく、それぞれの自治体が地域の現状を踏まえて必要なところに力を入れている現れだと思いますが、葛飾区の場合は比較的前者寄りで、女性の生き方に関する本が多いです。

それは書棚を見ると一目瞭然で、図書の分類法としては図書館と同じ分類法を使っているのですが、全書棚に占める「367」(家族問題、男性・女性問題、老人問題の本がこの分類にあたります)の割合が2割弱。また、 「159」(人生訓)もほとんどが女性向けですし、「335」(経営)にある本も女性の起業に関する本が多数。「366」(労働問題)も働く女性に関する本が棚を占めています。婦人白書や男女共同参画白書などの白書・統計類の資料や、国や都、他の自治体の男女共同参画事業に関する資料も充実しています。

ただ、例えば「働く女性に関する本」のなかには、働いている女性に向けた本もあるし、女性従業員を抱える会社にとって役立つ本、共働きの家族に向けた本など、さまざまな本が含まれるので、「働く女性に関する本」=「対象読者は女性だけ」ということではありません。また、私自身は女性ですが、自分にとって役立ちそうな本・面白そうな本だったら男性向けでも読みますし、この図書資料室も男女を問わず多くの人が活用できる図書室です。実際、近所の図書室というノリで利用している風の男性利用者もいますし、誰でも気軽に利用できます。

こうした男女平等推進施設の図書室には、女性の生き方や家族のあり方を描いた小説を多く所蔵していることが多いのですが、ウィメンズパルの図書資料室では、日本の現代小説が川上未映子『乳と卵』、楡周平『介護退職』など25冊ほどを所蔵するのみ、外国小説も『ワイルド・スワン』『マルタの鷹』など40冊程度です。個人的には『マルタの鷹』を所蔵していることを興味深く感じました。言わずと知れたハードボイルド小説ですが、男女平等施設の図書資料室で見ると、「ハードボイルドな生き方って、格好いいけど疲れません?」と問題提起しているように思えてしまいます。

そのように小説が少ない一方、エッセイは多く、女性の生き方を考察させられる瀬戸内寂聴や紫門ふみのエッセイ、先天性四肢切断の障害を持つ乙武洋匡の『五体不満足』などを所蔵しています。小説に対するエッセイの多さは、フィクションの世界より現実の人生や暮らしを見ようというメッセージでしょうか。

また、部屋の入口からみて右の壁際には「人権コーナー」があり、男女の差別に限らず、部落差別や障害者差別、病気に関する差別、子どもの人権や在日外国人に関する本など、さまざまな人権に関する本が集まっています。このコーナーの大部分は部落差別に関する本ですが、比喩ではなく実際の住まいで外国人と隣人となることに関する本や、外国人とともに働くことに関する本など、最近の社会の現状に即した本も少しあります。2016年4月からは障害者差別解消法も施行されましたし、そうした社会の変化に対して一般市民が知っておくべき情報など、新しい本もぜひ更に増やして欲しいです。

もう一つ特徴的なのが絵本の棚。上で、子どもが絵本を広げられる靴脱ぎスペースがあるけど、実際に読み聞かせなどするのは難しいと書きましたが、絵本のラインナップを見ると一般的なおはなし絵本は半分強で、残りは、性教育(赤ちゃんはどうして生まれるかなど)の絵本、親が離婚した子どもの気持ちに寄りそう絵本、子どもが被害者になりうる犯罪から身を守る方法の絵本など、この図書室の性質に合った内容の絵本です。図書室自体が小さいので絵本の所蔵数も限られていますが、子どもさんがこれらの絵本を読むだけでなく、子どもと話しづらい話題をどう話したらいいかを大人が考えるのにも役立つと思います。

§ この特徴を活かして利用したい

一般的な図書館のようにあらゆるジャンルの本を揃えているのではなく、特定のジャンルに特化した図書室ならば、せっかくですので利用する側もそれを活かした利用をしたいところ。例えば、男女問題の一つであるドメスティック・バイオレンスに関する本は、中規模程度の図書館に行くより、この小さな図書資料室のほうが冊数が多いように見えます。入口入った右先の棚(手前に新聞ラックのある棚)の一番手前の列の中段にある、赤枠で囲まれていることろがDVに関する本なのですが、被害者支援や被害者が自分を守るのに参考になる本はもちろんのこと、加害者の更生に関する本も所蔵しています。また、男女平等推進センターの事業として女性の相談受付も行っているので、ここにくれば本を借りるだけでなく相談サービスも一緒に利用できます。

また、小規模図書室なので利用者が少なく、静かに本を読める利点があります。どうやってキャリアを積んでいくかや、男女を含めた人間関係などについて考えるときは、流行りの本に飛びつくような読書をするのではなく、自分に合う本をじっくり選ぶほうがいいと私は思いますが、利用者が少ない図書室だと自分の思索に入りやすいです。

もう一つ、利用者が少ないことによるメリットを挙げると、プライバシーを守りやすいこと。ドメスティックバイオレンスの本や離婚に関する本などはプライバシーに関わるジャンルで、こうした本を借りるところを他人に見られたくない人も多いと思います。その点、この図書資料室はカウンター周りに他の利用者がいない時間がほとんどで、見られる心配がありません。

ただ、開室時間が17時まで、かつ、土・日曜・祝日が休みと、働いている人にとって利用しにくいかたちなのはとても残念です。女性の社会進出に関する本を揃えていることを考えると、この時間帯ではせっかくの所蔵本を活用すべき人に届かない施設になっていると思います。最寄の鉄道駅からも少し距離がある立地を考えると、もし遅くまで開室していても仕事帰りには寄りにくい面もありますが、せっかくこうした施設を作るなら必要とされる人が使いやすいかたちになって欲しいと思います。ちなみに、開室していても、12時から13時まではカウンターが閉まり、その間の貸出返却手続きは1階の事務室でしているので、この時間帯に利用する際はご注意ください。

また、女性に関する本なら何でも充実しているかというと、女性のからだや妊娠・出産・育児に関する本のコーナーは古い本が多く、他の葛飾区立図書館に行った方が新しい情報に触れられます。少子化対策という側面もあり、子育て支援に関する本は多くの図書館で充実させているジャンルなので、これらの本をあれこれ見たいときはこの図書室より他の図書館がお薦めです。

このように、メリットもデメリットもある図書室ですが、そもそもどんな図書館でも、大きければ大きいなりのメリット・デメリット、交通アクセスがよければそれによるメリット・デメリットがある。また、青砥にお住まいで月曜に時間がとれる人なら、月曜が定休日の青戸地区図書館ではなく、月曜に開いているこの図書室を予約受取館にすれば、葛飾区立図書館の蔵書を広く活用することができます。葛飾区立図書館のネットワークに組み込まれているけど、図書館とはちょっと違うこの図書室、その「違い」をぜひ活用してください。

葛飾区立男女平等推進センター(ウィメンズパル)図書資料室 データ

住所東京都葛飾区立石5-27-1 ウィメンズパル2階 →Google Mapで見る
Tel03-5698-2211
開館時間9:00~17:00
※12:00~13:00は貸出手続きを1階事務室で行います
定休日土・日曜・祝日
12月29日~1月3日
最寄駅 京成本線 お花茶屋駅から徒歩12分
京成押上線 京成立石駅から徒歩15分
駐輪場建物西側(水戸街道側)に駐輪場あり
駐車場建物から道路を挟んだ北側に駐車場16台分あり。利用時間は、月~土曜8:30~21:45、日祝8:30~17:15。最初の30分は無料で、以降30分ごとに100円。
建物南側に障害者用駐車場5台分あり
設備
ブックポスト図書資料室入口手前左に建物が開いていて図書資料室が使えない時間帯に返却できるブックポストあり。開館中の使用は不可。
自動貸出機なし
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PCなし
持参PC利用不可
LAN接続なし
飲食設備等建物1階に喫茶・食事「八十八」あり。営業は11:00~15:00(ラストオーダー14:30)で、土日祝日休み。