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江戸川区立小松川図書館

江戸川区立小松川図書館 訪問記

last visit:2017/07/25

江戸川区立小松川図書館は、江戸川区立図書館で唯一、荒川以西にある図書館。すぐそばにある小松川高校からの「テニス部の掛け声が大きくてすみません」のおことわりメッセージには、むしろ応援したい気持ちがわきあがります。

§ 図書館の場所

小松川図書館の最寄り駅は総武線平井駅です。小松川といえば小松菜の名前の由来となった土地で、江戸川区HPの中の「江戸川の小松菜はエライ!」によると、「小松菜は、江戸時代鷹狩りで小松川を訪れた8代将軍徳川吉宗が昼食に出されたすまし汁に入っていた冬菜を気に入り小松川の名をとって“小松菜”と命名したと云われています」とあります。鷹狩りの場所になるくらいだから、獲物となる動物がこの小松川にたくさんいたのでしょうが、駅から小松川図書館まではずっと商店街を進むかたちで、今の姿からは想像が付きません。

§ 図書館内の様子

小松川図書館は3階建て。1階は入口を入った両脇が小説・エッセイなどの読み物の本、大活字本、ティーンズコーナー、CDコーナー。その先に進むと右に検索機とカウンターがあり、カウンターの対面に家事関連本・医学・育児・旅行ガイドがあり、突き当り一帯が児童コーナーです。2階は、階段をあがって左先に新聞・雑誌コーナー、左手前に参考図書コーナーがあり、更に左側の一帯が1階にあるもの以外の一般書架。3階には資料はなく、読書室と視聴覚室があります。

1階入口からカウンターまでの通路がとても広く、棚が密集している区画とそうでない区画にはっきり二分している印象です。本棚をぶらぶら眺めるブラウジングをするというより、本がある場所と閲覧する場所をはっきり分けるタイプのデザインは、古い図書館に多いのですが、あらためて調べてみたら、2012年1月に小岩図書館が新しく移設された現在、この小松川図書館が江戸川区立図書館の中で一番古い建物なんですね。その分確かにバリアフリー面は弱く、エレベーターがなかったり、車椅子で入るには狭い個所もありますが、1階の広い通路に車椅子優先席を設置するなど、この施設でできる工夫をしてくれています。

§ 1階の様子

1階入口付近は、中央の通路を挟むようにして、左に日本の小説とCD、右に日本のエッセイ、外国小説、ティーンズコーナーがあります。日本の小説の棚は、ただ本を並べるだけでない工夫がいろいろあり、石田衣良、角田光代、重松清といった人気作家の本がある場所には、台本板のようなかたちで著者の略歴が描かれた箱が挟まっています。この箱の厚みの分だけ棚に入る本が減ってしまうという面もあり、そのデメリットを上回るメリットがあるかというと個人的にはそうでもないと思いますが、小説を読むようになったばかりで、誰の本を読もうかなと迷っている人には参考になるかもしれません。

また、小説の棚に並ぶ本をよく見ると、ところどころに「図書館員のオススメ」という帯がかかった本があります。これは文字通り、図書館員さんがお薦め本かけている手作りの帯で、表側にはその本のお薦めコメントが、裏側にはその本に関連する別のお薦め本が紹介されています。帯がかかっている本の中から気になる本を借りてもいいし、読んだことがある本に帯がかかっているのを見たら、裏側で紹介されている関連本を借りてみるというようにも使えます。ちなみに、貸出の時にはカウンターで帯を取り外すので、借りている間ん帯をなくすかもといった心配は不要です。

小説エリアの窓際の棚には、大きな文字で読みやすい大活字本が並んでおり、小説の大活字本だけでなく、薬の事典や国語辞典、パソコンノウハウ本といった実用書の大活字本もあります。また、その棚の上(向かって左端のほう)には、読んでいる行に焦点をあてやすくするリーディングトラッカーがあり、館内用と貸出用が用意されています。リーディングトラッカーは、視野狭窄などの障害がある人のためのツールと思われがちですが、難しい専門書を読むときなどの集中力をサポートするツールにもなるもので、誰でも貸出可能。最近はこうして用意している図書館も増えてきているので、使ってみたい方はぜひ試してみてください。

右側書架の奥にあるティーンズコーナーは、ピンクの見出しで男子には入りにくい空間かも(笑)。ティーンズコーナー入口で配布している「Patter Patter Paper」は、区内の高校生・大学生・専門学校生スタッフが誌面作りに参加していて、中高生はもちろん大人が読んでも楽しい広報誌です。大人もぜひ!

カウンター前の家事関連本や健康関連本の棚は、棚と棚の間が狭いです。誰か棚を見ている人がいるとすれちがうのが難しいくらい。声を掛けたりして、マナー良く利用したいところです。料理の本は、「アウトドア」「ガイド・レストラン」といった大きなジャンル分けもあれば、「つまみ」「漬物」といった細かい料理などでも見出しがついているし、医学の棚も「うつ」「肝臓病(肝炎・肝がん)」「高血圧」「高脂血症・コレステロール・中性脂肪」「通風」「糖尿病」等、病名で見出しがついているので便利ですね。それと、雑誌は2階ですが、女性誌のバックナンバーの一部は1階カウンター前の家事関連本と一緒にあるので、それらを利用したい人はお見逃しなく。

児童コーナーは床も明るい色でにぎやかな雰囲気ですね。壁から吊り下げられた可愛いモビールが出迎えてくれるけど、決してごちゃごちゃした感じではない、メリハリの効いているエリアです。児童コーナー内の配置は、向かって左側が絵本や紙芝居、右側が読み物やちしきの本。壁周囲にあるちしきの本の棚上部には、ジャンル名が大きく書かれていて、何がどこにあるのかわかりやすいです。

カウンターの端には、子どもが面白かった本を投稿できる「この本面白かったよ」の用紙と投稿されたもののファイルが置いてあります。新しいものは絵本コーナー内に展示されているので、そちらもぜひ。「この本面白かったよ」のいいところは、用紙がA4と大きいこと。子どもたちが面白かった本について、文章と絵を存分に使って書いています。いろいろなおはなしを読むのも楽しいし、それについてあれこれ書くのも楽しいんですよね。

絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも合わせて、絵を描いた人の頭文字で分類されていますが、完全な絵を描いた人名五十音順ではなく、頭文字1文字で分類して、主だった絵を描いた人は見出しをつけ、その後に見出しのない絵を描いた人を並べているような形です。でも、有名なシリーズでも、絵を描いた人の名前って言われるとわからなかったりもしますよね。そんなときのために、絵本の棚の側面には、「ぐりとぐら」「バーバパパ」「ムーミン」といった主だったシリーズの絵を描いた人名・分類番号がわかる表を貼っています。

児童読み物は、日本、英米、ドイツ、フランスなど、著者の国・地域別に分類した上で、著者の苗字の頭文字で分類しています。こちらも絵本と同様、完全な姓名五十音順ではなく、同じ頭文字内での並び方に決まりはありません。対象年齢で棚を分けたはしていませんが、低学年向けの本には猫の顔の黄色いシールが貼られているので、それが本選びの目安になります。シールを目安にしつつ、面白そうな本を見つけたら、高学年向けの本にチャレンジしてみてもいいですよね。

§ 2階の様子

2階も、新聞・雑誌コーナーや参考図書(辞典類)コーナーは比較的ゆったりしていて、一般書架は椅子もほとんどなく書棚がずらっと並ぶかたちです。一般書架の案内が三段階になっているのがとてもわかりやすく、まず書棚の側面にその列に収められているジャンルが書かれており、更に棚上部にその棚に収められているジャンルを掲げ、またまた更に本の間に挟むタイプの見出しで細かい配置がわかるというかたち。棚側面や本の間に挟むタイプの見出しは、どこの図書館でも設置してくれていますが、その中間にあたる棚上部のガイドがあることで、初めて来た人でも読みたい本がある場所の絞り込みがスムーズにできると思います、

本の間に差すタイプの見出しは、基本的には分類番号+著者名頭文字で、例えば鈴木という人が書いた経営管理(336)の本なら「336 ス」になるのですが、経営管理のようにいろいろなキーワードが含まれる本の場合は、キーワード名の頭文字で分類しています。「経営管理」のうち「財務会計」に関する本は(“会計”の頭文字をとって)「336 カ」、「経理」に関する本は「336 ケ」、「国際会計基準」に関する本は「336 コ」、「ビジネスマナー」に関する本は(“マナー”の頭文字をとって)「336 マ」といったかたちです。336.1、336.2…といったように分類番号を細分化するやり方と比べて、この方式のいいところは、新しいキーワードが登場したときに番号の系統立てに悩まずに増設しやすいこと。ビジネス本もそうだし、インターネットに関する本が置いてある「007 情報科学」の棚も、Excel、Wordなどの具体的なソフト名はもちろん、「ソーシャルメディア(SNS)」「タブレット型情報端末」など新しいキーワードの見出しがあり、時代のニーズに応えた棚の分類になっています。

2階の書棚の真ん中辺りには、小さい地域資料コーナーがあり、小松菜の本もなどもここにあります。そう、小松菜は江戸川区小松川付近で品種改良して栽培され始めた野菜で、名前も小松川の地名からきているのですよね。といっても、小松川図書館は住所でいうと「江戸川区平井」で、小松川図書館のすぐ南からが「江戸川区小松川」です。地域資料の棚の側面では「江戸川区文化財 史跡探訪マップ」を配布しているので、図書館の行き帰りに時間があったら、ちょっとお散歩するのもいいですね。

§ 地域のお店とのコラボも

小松川図書館のキャラクターは(たぶん)リスの「こまぞー」くんなのですが、こまぞーくんは図書館で館内を彩っているだけではありません。歩いて徒歩6分のところにあるパン屋さん「リヨン エトワール」では、こまぞーくんのイラストが描かれたラスクを作って売っています。リヨンは東京周辺に店舗展開をしているパン屋さんですが、こまぞーラスクが売っているのはこの店舗だけ。ただ、不定期で作るラスクで、お店に必ずあるわけではないとのこと。私も一度行ってみましたが、残念ながら売り切れでした。また小松川図書館に行ったときに寄ってみようと思います。

皆さんも小松川図書館へ行く際にはぜひ。ということで、お店の場所を説明しましょう。住所は平井1-2-19。図書館からお店へ行く場合は、小松川図書館の敷地を出て右へ進み、突き当りで右へ曲がり、最初の十字路で左に曲がります。中央分離帯のある車道・ゆりのき橋通りと交わったところで、やや右にある横断歩道でゆりのき橋通りの向こう側の歩道に渡ってから左へ進むと、少し先に都バスの停留所「小松川三丁目」があり、そのすぐそばにパン屋さんがあります。営業時間は8時から19時までで、月曜が定休日です。

図書館と地域のお店とのコラボ企画としては、商店街の店員さんにお薦め本を聞いて展示するなどの例を見たことがありますが、図書館キャラクターをモチーフにした商品を販売するというのは珍しいです。これから先、小松川図書館が地域とともに発展していくのを楽しみにしています。

江戸川区立小松川図書館 データ

住所東京都江戸川区平井1-11-26 →Google Mapで見る
Tel03-3684-6381
開館時間9:00~21:30
定休日第4月曜(祝日は開館し、翌日を休館。振替休日は休館)
12月31日~1月2日
最寄駅 JR総武線 平井駅から徒歩18分
駐輪場建物入口向かって左に駐輪場あり
駐車場なし
SNS等
所蔵資料
図書所蔵数96,124冊(2023/04/01現在、出典『江戸川区図書館 事業概要 令和5年度』)
CD所蔵数6,988点(2023/04/01現在、出典『江戸川区図書館 事業概要 令和5年度』)
カセット所蔵数なし(2023/04/01現在、出典『江戸川区図書館 事業概要 令和5年度』)
DVD所蔵数22点(2023/04/01現在、出典『江戸川区図書館 事業概要 令和5年度』)
ビデオ所蔵数なし(2023/04/01現在、出典『江戸川区図書館 事業概要 令和5年度』)
設備
ブックポスト建物入口左に回り込んだところ(2つの自動ドアの間の空間の側面)にブックポストあり
自動貸出機建物入口からカウンターへ向かう通路途中の右側に、タグ自動貸出機1台あり
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備試聴用CDプレーヤーあり
映像視聴設備なし
ネット閲覧PCネット閲覧ができるタブレット型端末の利用可能
持参PC利用視聴覚室が閲覧席として開放されているとき(=13時以降のイベント開催がない時間)、視聴覚室に持参PC利用可能席を設置。電源なし。
LAN接続館内に「ソフトバンク wifi」のアクセスポイントあり。緊急時(災害などのとき)は他の携帯電話会社のユーザーにも回線を開放するとのこと。
飲食設備等なし