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移転前の旧・江戸川区立小岩図書館

旧・江戸川区立小岩図書館は2011年9月30日を最後に移転のための休館に入りました。その後、現在の小岩図書館が2012年1月22日に移転開館しました。

以下は、移転前の旧・江戸川区立小岩図書館の訪問記です。

移転前の旧・江戸川区立小岩図書館 訪問記

last visit:2011/09/29
§ 図書館の場所

小岩図書館の最寄り駅はJR小岩駅。南口を出て、左手に伸びているサンロードから小岩区役所通りへと歩き、小岩区民館の先の通りを左折してしばらく進むと、右側に小岩図書館が現れます。

JR小岩駅は南口から放射線状に商店街がいくつか伸びていて、サンロードもそのうちの1つ。これらの商店街(の中でもフラワーロード商店街が中心なのかな)では、「小岩=恋話」にちなんで恋の川柳を募集するなどのイベントをやっています。小岩図書館の本を参考に句や歌を作って、こうしたイベントに応募するのもいいかもしれませんね。

§ 図書館内の様子

小岩図書館は2棟からなる面白い構造の図書館です。メインの建物は3階建てで、1階が一般書架、新聞・雑誌コーナー、カウンター、CD。2階は図書館事務室と小岩コミュニティホールで、図書館利用者が使う設備はなし。3階にあがると2部屋の読書室があります。

離れのようになっている2階建ての建物は、1階が小岩図書館の児童室で、2階が小岩コミュニティホールの音楽室。メインの建物と図書館児童室は、通路で行き来できるようになっています。2つの建物はそれほど離れておらず、書架にいると演奏や歌声が聞こえてくることも。無意識のうちに、上手いか下手か判定しちゃっていたりします(笑)。

§ 1階の様子

メインの建物の入口を入ると、正面に細長い棚の特集コーナーがあり、右に行くとカウンター、CD・カセットコーナー、新聞・雑誌コーナー。入口入って左の区画が一般書架で、児童室への通路はカウンター向かって左にあり、通路の手前にティーンズコーナーがあります。一般書架から児童コーナーへ向かうと、どんどん書架が若返っていくような配置です(笑)。

入口正面にある特集コーナーは、小さいながらも力が入っているし、何より建物に入った正面にこの棚だけがあるので、とても目立ちます。このサイトを始めたころ、この場所にはリサイクル本コーナーがぽつりとあったのですが、今のように特集コーナーになっている方が断然いいですね。

一般書架は、背の高い棚がずらりと並び、やや圧迫感を感じます。この書架の中には閲覧席が3つしかないので、じっくり読書や調べ物をしたい方は3階の読書室をご利用ください。

日本の小説は、同じ頭文字の中で、棚見出しを作るくらいの主要な作家を先に並べて、その後に見出しのない作家をまとめて並べるという順序で並んでいます。例えば、「ゆ」の棚では、「唯川恵」「柳美里」「結城昌治」「夢枕獏」「由良三郎」「その他のゆ」となっており、見出しのある5名以外で頭文字が「ゆ」の作家は「その他」に入ります。また、複数の作家による作品集は、書名の頭文字で分類され、「その他」に入れられます。外国の小説は、国別に分類した上で、著者の姓名の五十音順に並んでいます。

書架の中でも、料理本は手芸本はラベルプリンタの絵文字機能をつかって分かりやすく分類しています。例えば、レシピ本には鍋の絵文字、お弁当の本にはおにぎりの絵文字、パン・お菓子の本には食パンの絵文字といった具合。手芸本も、春夏ニット本にはヨットの絵文字、秋冬ニット本には雪ダルマの絵文字のラベルが貼られています。幅広い内容を含む料理や手芸の本の分類は、色別シールを使うところも多いですが、小岩図書館のように絵文字を印刷した色ラベルを使うと、直感的にわかりやすくていいですね。

§ 児童室

離れの1階にある児童室へは、メインの建物から通路を伝っていくこともできるし、外から児童室に直接入れる入口もあります。離れの1階が全て図書館の児童室で、結構広いスペースです。児童室内にもカウンターと検索機があるので、児童向け図書だけを利用する際には、貸出手続のためだけにわざわざメインの建物に行く必要はありません。ただ、児童向けCDはメインの建物1階のCDコーナーにあるので、ちょっと足を伸ばして見てみるのもいいですね。

児童室の書棚は年季が入っていて、古くからある図書館だということを感じさせます。扇形の読み聞かせコーナーは、広くて居心地いいですよ。カウンターの正面の机には、ふかふか絵本や英語の絵本も数点置いています。

絵本は絵を描いた人名の苗字の頭文字1文字で分類されていまが、同じ頭文字の中の並び順が少し複雑で、日本の主要な絵を描いた人、外国の主要な絵を描いた人、その他の絵を描いた人、という並び。例えば、「わ」の棚は「わかやまけん」「和歌山静子」「和田誠」「レナード・ワイズガード」「バーナデッド・ワッツ」「その他のわ」という具合に並んでいます。探している絵本が見つからなかったら、遠慮なく職員さんに聞きましょう。絵本に関しては、カウンター向かって左の棚に展示絵本もありますよ。

一般書架のところで、ラベルプリンタの絵文字機能を使って家事関連本を分類していると書きましたが、児童室でも占い本にハートの絵文字ラベル、昆虫の本に蝶の絵文字ラベルという具合に絵文字を使っています。

上の文章で、メイン建物から児童室に向かって進むと棚が若返ると書きましたが、小岩図書館を利用する児童にとっても、一般書架デビューするのに通路を進むと、まずティーンズコーナーが迎えてくれるという配置はいいですね。この通路を通じて、若返りや大人へのステップアップを楽しみましょう!

§ 読書室

3階の読書室は2部屋に分かれていて、手前の部屋が一般用、奥の部屋が中高生・一般用となっています。平日昼間はともかく、受験シーズンの土日ともなると、座席の確保はかなりの競争率。こころして座席を確保してください。

§ 小岩の資料いろいろ

小岩図書館ならではの特徴といえば、一般書架の中にある小岩の資料コーナー。「小岩~甲和の里~」と題して、小岩にゆかりがある本を集めたコーナーを作っています。小岩ゆかりの本のリスト(冊子になっていて、自由にもらえます)にある説明によると

小岩の地名は奈良時代にさかのぼります。正倉院にある戸籍帳に「下総国葛飾郡大島郷の甲和里」の記載がありますが、その甲和が現在の小岩にあたるとのことです。

だそうですよ。小岩には遺跡なんかもあるそうで、かなり昔から人が住んでいた場所なんですね。

「小岩~甲和の里~」コーナー向かって右の柱には、大正末期の小岩村の古地図も掲示してあります。古地図そのものではなく、図書館がわかりやすく書き直したもののようですね。西が上になった地図なので、北が上になった地図に慣れている身には、頭の中で回転しないといけないのが少し大変ですが、京成線とJRの路線が書き込まれているので、それを基準にするとわかりやすいです。どちらの線も明治時代に敷かれたんですね。

このコーナーの書架は、「小岩お役立ちガイド」「相撲」「歴史」「江戸川~今昔」「草花・自然」「小岩ゆかりの作家・作品」という分類で整理されています。相撲というテーマがあるのは、栃若時代を作った力士、栃錦清隆の実家が小岩にあったため。家は蛇の目傘の製造業をしていたのだそうです。JR小岩駅の改札を出たところにも栃錦像がありますね。子どもの頃の栃錦を書いた本は、昔の小岩の様子まで窺えそう。図書館が作ってくれているゆかり本のリストには、何ページのどんな形で小岩が取り上げられているのかの説明もあるので、どれを読もうか迷ったときの参考になりますね。

小岩ゆかりの作家として一番クローズアップされているのは、作家の島尾敏雄。1917年生まれの島尾敏雄は、1952年3月に神戸から小岩町4丁目1819に移り住み、妻の病気の療養で転居するまで3年間小岩の住んでいたとのこと。作品中にも小岩が登場していて、このコーナーにも小岩が登場する場面の引用がたくさん貼ってあります。中には小岩図書館が登場するものもあるんですよ。

その他、北原白秋や井上ひさしも小岩に住んでいた時期があるそうで、関連本が紹介されています。奈良時代にまでさかのぼれる町とあって、掘ればざくざくゆかり本が出てきそうだなあ。小岩ゆかり本のリストの巻末にも「小岩に関する資料について情報がありましたら是非お知らせください。」とあるので、本を読んでいて小岩に関する記述を見つけたら、小岩図書館にご一報を!