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足立区立あだち産業センター内産業情報室

足立区立あだち産業センター内産業情報室 訪問記

last visit:2011/07/17

足立区立あだち産業センター内産業情報室は、北千住にある「あだち産業センター」の1階にあるビジネス関連書を集めた図書室。足立区立図書館カードでの貸出ができます。図書室としてだけでなく、製本サービスや簡易名刺作成サービスなど、ビジネスコンビニ事業も利用できますよ。

§ 図書館の場所

あだち産業センターの最寄り駅は北千住駅で、駅から南西方面に10分ほど歩いた場所にあります。東京藝術大学千住校や東京芸術センターのそばと言えばわかりやすいかな。

駅からの道のりとしては、北千住駅から西に伸びている「きたろーど1010」に進んでいき、りそな銀行の先の角で左折して、本町中央通りに入ります。そこから350mほど行った、左にモスバーガーがある辺りで、右に少し開けたスペースが現れます。その奥の高い建物が東京芸術センターなのですが、東京芸術センターを見上げてから、視線を右下に下ろしてください。中層の建物が並ぶ中、かすかに頭を出している建物に「あだち産業センター」の文字が見えると思います。その1階が産業情報室です。

この東京芸術センターやあだち産業センターは、旧足立区役所の跡地を整備して建てられた施設です。足立区のホームページ内の東京芸術センターの説明によると、『あだち産業芸術プラザ』として東京芸術センターとあだち産業センターを一体的に整備したそうですが、22階建ての立派な東京芸術センターに比べて、5階建てのあだち産業センターは地味すぎる。あだち産業センターさん、もっと目立ってください(笑)!

§ 施設内の様子

あだち産業センターの1階全体が産業情報室です。入口を入ると、右にカウンター・図書の書架・足立区の産業展示、左に新聞・雑誌スペースがあります。

図書館という雰囲気はあまりしません。というか、実際図書館とは違う施設です。あくまでも産業支援の一環としてビジネス書の閲覧・貸出ができるという形で、同じカウンターでビジネスコンビニ(出力や製本サービス)や勉強会・相談会の受付も行っています。ビジネス関連本を読みたい人がここに来れば、本を読むことに留まらず、それによって思いついたことを実行に移す支援までしてもらえるかも。

§ ビジネスに特化した蔵書

産業支援施設のサービスの一つとしての図書の閲覧・貸出なので、蔵書数も少ないだろうと想像していたのですが、これがなかなか。ビジネス関連図書に特化している分、このジャンルに限っていえば中規模図書館より多いといえます。貸出・返却・予約は足立区立図書館のカードで利用できます。

書棚を見ると、棚の分類も細かいです。例えば、「ビジネス実務」の棚では、「ノート」「会議」「プロ論」「スピーチ」「交渉」「ビジネスマナー」「ビジネス文書」…、人事・人間関係の棚では「コンピテンシー」「キャリア」「人材活用」「人材育成」「成果主義」「ワークライフバランス」「上司」「コミュニケーション」…、といった感じ。こうしたビジネス関連図書だけが目的なら、23区立図書館で一番の蔵書数を誇る足立区中央図書館よりもいいと言えるくらいです。

棚を見ていてびっくりしたのが、この細かい分類の棚を作るのに、棚と対応したラベルなどを使っていないんです。本に貼られているのは、通常の図書館と同じ日本十進分類法の請求番号のラベルなのですが、書棚は日本十進分類法を無視した、内容による細かい分類なんですね。つまり、職員さんが返却本を棚に戻すとき、普通の図書館なら請求番号を見て、あてはまる場所に戻せばいいところ、産業情報室では内容を見て棚に戻しているということです。実際、久しぶりに行くと分類が変わっていたりするので、臨機応変に分類を変更したりしているのかも。ビジネスの速い変化に追いつくには、書棚もそれくらいの機動力があった方がいいですもんね。もし、館内で本を読んだ後、戻す場所がわからなくなった場合は、適当なところに戻したりせず、職員さんにお願いしましょう。

書棚に関するもう一つのユニークな点は、棚上の目盛り。多くの棚の上に、左端が「経営者向け」、右端が「従業員向け」という目盛りがあり、その棚が対象としている読者層がマークされているのです。ずばり経営者向けの棚だとか、やや従業員向けの棚だとかが、図解で示されている。大雑把な分類ではありますが、ビジネス技術としてもよく使われる図解を、ビジネス関連書棚自体で行われているのはいいですね。

ビジネス新書にも力を入れていて、書棚に新書を並べるだけでなく、貸出手続きする窓口のすぐそばにお薦めの新書を置いているのです。職員さんのお話では、この窓口脇の新書コーナーは、レジそばにガムなどの商品を並べる、スーパーやコンビニで御馴染みの陳列法から思いついたアイデアだそうです。実際、貸出手続の際に、ここから新書を手にとって、そのまま借りる人もいるそうですよ。産業情報室で本を借りる際には、カウンター回りの新書も忘れずにチェックしましょう!

注意すべき点としては、図書館ではないので利用者用検索機はありません。また、貸出システムは足立区立図書館のものを利用しているので、貸出・予約は20時まで、毎月最後の平日は貸出・予約は不可。産業情報室が開いていても、足立区立図書館システムが閉じてしまっている日時には処理ができないということですね。

ネット閲覧PCもカウンター脇に2台あります。但し、利用は産業情報に関わる検索に限られていて、カウンターで利用申込をする際に検索内容を記入する必要があります。利用できるのは、足立区在住または在勤の方のみです。

§ 図書館にはない、産業支援施設ならではのサービス

図書館は、「静かに本を読む場所」というイメージが強いですが、この産業情報室は「ビジネスに関する情報収集や商談・打合せなどの交流の場としてご利用ください!」とある。いわば、「小さな図書館が併設されているコワーキング・スペース」という印象です。実は、この文章自体、産業情報室のビジネス利用者スペースで入力しています。ただ、以前は無線LANサービスを行っていたのですが、今はなくなってしまったのが残念(ソフトバンクWi-Fiの電波だけは入ります)。

産業情報室にある図書館機能以外のサービスとしては、大型ポスターなどのプリントアウトや製本サービスなどを有料で行っています。プレゼンの資料や、店舗等で使う宣伝ツールを作れますね。

また、足立区で作っている製品の取次販売もしています。窓際の奥の棚に取次販売をしている製品の展示があるので、ちょっと覗いてみるもよし。また、何か作っている方は、産業情報室の取次販売を利用してみてはいかがでしょうか。

§ 只者ではないブックレビュー誌「ほんナビ!」

私がお薦めしたいのは、産業情報室が発行している『ほんナビ!』。ビジネス関連図書のブックレビューの冊子で、偶数月1日に発行しています。この産業情報室だけでなく、足立区の各図書館のビジネス関連コーナーでも配布しています。B5用紙1枚に両面印刷して三つ折にしただけの冊子なのですが、内容満載なのです。

まず、本を紹介するのに、図や絵を多用していて、ビジュアル的にわかりやすい。図書館による本の紹介って、ほとんどが文章でお薦めするだけですが、「ほんナビ!」ではビジネスでも活用される図解を多用して、わかりやすく本を紹介してくれるんです。

また、Vol.12とVol.17では、利用者が寄せたお薦め本の感想をもとに、職員さんがその本を読んで、内容のまとめ、職員さんの感想、関連本の紹介などを掲載しています。図書館の発行物で、図書館の方から本を薦めることはよくあっても、利用者の薦める本を図書館職員さんが読んで取り上げるケースはなかなかありません。一方通行ではない、双方向的な姿勢に、親近感が沸きますね。

ちなみに、実は私もこの「ほんナビ!」に登場しております。2011年1月に、東京都立中央図書館で、図書館関係者様向けの講演会を行ったのですが、その講演内容を工夫を凝らしている図書館の事例紹介にしたんですね。そうなれば、書棚周りに工夫を凝らしている産業情報室を取り上げないわけにはいかないと思い、取材させていただいたところ、産業情報室さん側からも逆取材を受けまして、「ほんナビ!」のVol.16に掲載していただきました。

その掲載号を読んでさすがだと思ったのが、私への取材記事も本の紹介につなげていたところ。あのときの取材での私は、ただただ産業情報室さんを絶賛するばかり(同行していただいた都立中央図書館の職員さんに、産業情報室の人間でもない私が、「この展示すごくいいでしょ~」と自慢していたくらい 笑)で、もっと内容のある話をたくさんすればよかったと後悔するくらいでしたが、ちゃんと記事としてまとめていただいて。それも、ただ「工夫あふれる図書室として取り上げられました」という内容ではなく、私が挙げた産業情報室のいいところを、<そういう工夫を凝らすのに参考になる本は…>という形で、本の紹介につなげているのです。「ほんナビ!」の本質である、ブックレビューという目的につなげていく姿勢、さすがです。

上記の話を読んで、バックナンバーを読んでみたいと思った皆さん、産業情報室では「ほんナビ!」バックナンバーを全号配布していますし、足立区の各図書館の配布場所でも、最新号のほか、バックナンバーが数冊残っていることも多いです。ぜひ手にとって読んでみてくださいね。

§ 利用するだけでなく、参加しましょう!

産業情報室のカウンター向かって手前右の壁にはホワイトボードがあり、産業情報室への意見や要望、産業情報室で所蔵している本の感想など、利用者が自由に書き込めるようになっています。気軽に書き込めるし、ホワイトボードだから文字だけでなく図やマークで表すのも可能、他の人の書いたことが読めるという開かれた点もいいですね。利用者の書き込みに対しては、職員さんのコメントも添えてありますし、過去に書かれたメッセージは、消される前に写真に撮ってホワイトボード脇に掲示しています。ぜひ、いろいろ書き込んで、産業情報室を盛り上げましょう!

利用者のお薦め本を取り上げてくれる「ほんナビ!」も、参加型の冊子と言えるでしょう。本を読んだとき、読んで納得するだけでなく、その内容を人に伝えようと文章にすることで、更に理解が深まるともいいます。産業情報室が所蔵している本で、他の人にも勧めたいような本を見つけたら、ぜひ投稿してみましょう。

産業情報室だけでなく、あだち産業センターの相談サービスやセミナーなども活用して、自分のビジネスを発展させていくのもいいですよね。私も足立区に住んでいたら活用したいくらい。図書館カードを作れる条件などをいろいろ考慮して、次に引っ越すときには葛飾区に住もうかと思っているのですが、事務所を足立区に構えて、あだち産業センターを利用しようかな(笑)。既に足立区に住んでいる方、足立区で働いている方なら、こんないい施設を使わない手はありません。受身的な利用だけでなく、積極的に参加する形で、自分の仕事に活用しましょう!

足立区立あだち産業センター内産業情報室 データ

住所東京都足立区千住1-5-7 あだち産業センター1階 →Google Mapで見る
Tel03-3870-1221
開館時間9:00~21:00
但し、貸出・予約は20:00まで。また、毎月最終平日は終日貸出手続きができません。
定休日月末日(※足立区立図書館ウェブサイトの「図書受渡窓口」のご案内には、「毎月月末(土日祝に当たる場合は、その直前の平日)は、閲覧のみのご利用となります」との記載がありますが、「各図書館の休館一覧」を見ると、曜日に関わらず毎月末日が休館になっています)
12月28日~1月4日
最寄駅 東京メトロ日比谷線千代田線JR常磐線つくばエクスプレス東武伊勢崎線 北千住駅から徒歩10分
京成本線 千住大橋駅から徒歩11分
駐輪場建物入口向かって右に駐輪場あり
駐車場一般用駐車場はなし。建物入口左に障害者用駐車場1台分あり。
SNS等
所蔵資料
図書所蔵数3,870冊(2023/03/31現在、出典『足立区の図書館 令和4年度事業報告書』)
CD所蔵数なし(2023/03/31現在、出典『足立区の図書館 令和4年度事業報告書』)
DVD所蔵数なし(2023/03/31現在、出典『足立区の図書館 令和4年度事業報告書』)
ビデオ所蔵数なし(2023/03/31現在、出典『足立区の図書館 令和4年度事業報告書』)
設備
ブックポストなし
自動貸出機なし
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PCネット閲覧PC2台あり。1回30分。次の予約がない場合は1時間に延長可能。利用は産業情報に関わる検索に限る。
持参PC利用ビジネス利用者用スペース(16席)で持参PCの利用可能。電源あり。
LAN接続ビジネススペース(16席)・商談スペース(1部屋)で館内無線LANが利用できます。利用にはカウンターでの申込が必要です。
館内や公式サイトには明記されていませんが、ソフトバンクWi-Fiスポットにあだち産業センターが登録されており、1階の産業情報室でWi-Fiの電波が入ります
飲食設備等蓋付き容器(ペットボトル・水筒など)の飲料に限り、館内での摂取可能。