トップ図書館訪問記江戸川区江戸川区立東葛西図書館 > 「はじめ男ありけり、の本」

「はじめ男ありけり、の本」

―2009年1月5日から2009年2月2日までの展示
visit:2009/02/02

東葛西図書館の2009年1月5日からの特集は「はじめ男ありけり、の本」。「むかし男ありけり」の伊勢物語、古文の授業以来すっかりご無沙汰だなあ(笑)。この頃には羽振りいい感じに書かれていた「男」も、今や肉食女子に草食男子が食われてしまう時代?この特集が、男性陣の奮起を促すものとなるでしょうか(笑)。

特集コーナー上段右には、男性のおしゃれの本。『男のふだん着物』なんて見てみると、女性よりも男性の方が普段着として着物を着やすい気さえしてきます。これって、本の企画に乗せられすぎでしょうか(笑)。この本、着物の知識や着付けの方法はもちろん、”はじめて着物を買うときは、簡単に似合うとか言わない人と一緒に行くといい。余計な買物もしにくくなるし、何も買わないで店を出るときにも一人より二人の方が気楽”なんてアドバイスもあり、とても親切な着物入門となっています。若い男の子が呉服店にいたら、なかなかやるなと思ってしまいますね(笑)。

男の変身術』という本は、男性の洋服について書いている本なのですが、生地や型に関する文章の中に、「主人公はあくまでも洋服ではなく着る人だ」という考えがにじみ出ていて、これは女性のおしゃれにも通じるものがあるなあ、なんて思いながら読みました。仕草をきれいに見せることへの意識や、自分に似合っている服かどうかを見るときのチェックポイントとか、要は「おしゃれな服を着る」というより「おしゃれな人に見える」ことが上手な服の選び方ってことかな。

他に目に留まったのは、男性の更年期の本。女性の更年期障害に比べて、男性の更年期障害は知られていないことが多いように思いますから、本を読んで少し知っておいておくといいかも。当事者になりうる男性だけでなく、女性だって知識を持っていれば、周囲にそうした方がいたときに気を配ることができますしね。東葛西図書館もそうですが、最近の図書館は自動貸出機を備えているところもあり、借りにくい病気の本なども他人の目を気にせず借りやすくなっています。

特集コーナー下段右には、タイトルに「男」が含まれる新書が並んでいて、これがなかなか面白い。『萌える男』『もてない男』『感じない男』…って、何だかまともな恋愛ができないどうしようもない男っていうタイトルですね(笑)。『萌える男』は想像通りオタク文化を論じた本。『もてない男』は恋愛論、といってもこういう男がもてる・もてないといった内容ではなく、恋愛自体や恋愛にまつわるいろいろなことがどう扱われているかという点からの文化論・社会学論といった本。そして『感じない男』は、制服とかロリコンとか何らかの設定にあてはまらないと萌えないというのは、裏を返せば不感症ということではないかという内容の本。でも、これ、「萌える女」や「感じない女」も絶対にいますよね。なのに本のタイトルとして「男」が使われてしまうというのは、そうした人の中では女性より男性の方が多いってこと?

「男」がタイトルに使われている小説も『電車男』『袋小路の男』など。展示コーナーにはなかったけど、私が挙げたい「男」小説は『箱男』だな。あと、フリーマントルのチャーリー・マフィンシリーズ(『消されかけた男』『追いつめられた男』など)も好きです。

今回の特集の中で、私が一番気に入った本は『小池邦夫 男の絵手紙』。日本絵手紙協会会長の小池邦夫氏と作家の井上明久氏の往復書簡を中心に、男性の絵手紙や文字だけの手紙も掲載している本なのですが、このお二人の絵は文字の配置が自由でいいんですよね。この本の中には、緒方拳氏の(絵)手紙も掲載されているのですが、そちらは私には風流を気取りすぎているように見えてしまった。その点、先の二人の(絵)手紙は自由で、パッと見も楽しい、文章を読んでも楽しい!男性でまめに手紙を出す方は稀でしょうし、私は結構まめな男性は好きではないのですが(笑)、こんな手紙だったら欲しいなあ。

こうしてみると、タイトルが男性向けの本にも、男性だけに読ませておくのはもったいない本があるものですね。実用書やアイデアが欲しいときに読む本などは、あえて異性の冠がつけられた本を読むと、新たな視点が獲得できるかも。