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CurrentIcon ビブリオバトル・インターナショナル・オオクボ 第2回

―2015年10月10日のイベント
visit:2015/10/10
§ 外国人と日本人のバトラーが一緒に本の紹介をしあう、国際的なビブリオバトル

5分間で本の紹介、その後2分間で質疑応答を行い、最後に参加者全員の投票でチャンプ本を決めるコミュニケーションゲームの「ビブリオバトル」。公共図書館での開催も増えて、都内だけで見てもいまや同じ日に複数館で開催されることが珍しくないくらいです。そんな中、2015年10月11日に新宿区立大久保図書館にて、その場所柄にふさわしいビブリオバトルとして、「ビブリオバトル・インターナショナル・オオクボ」が開催されました。

大久保図書館がある新宿区大久保やその西隣の町である百人町は、外国人居住者の多い地域。新大久保駅周辺に韓流グッズや韓国料理のお店が並んでいることをご存知の方も多いと思います。新宿区自体が東京の区市町村の中で最も外国人居住者の多い区(2015年1月1日現在で36,016人)なのですが、その中でも外国人居住者が多く、日本語学校も多いのが、大久保図書館のある付近。その大久保図書館が国際交流にもなるイベントとして、外国人と日本人双方からバトラーを募り、日本語で本を紹介しあうビブリオバトルを開催したというわけです。

当日集まったのは、外国人バトラー2名と日本人バトラー4名。当初、日本人バトラーで1ゲーム、外国人バトラーで1ゲームの2ゲーム開催を予定していたのですが、3名応募があった外国人バトラーのうち1名が体調不良でキャンセルになってしまったため、ならば外国人・日本人合わせてゲームをしようということになり、外国人1名・日本人2名のグループを2つ作って、2ゲーム開催ということになりました。そういえば、グーパーでグループ分けということになったとき、外国人バトラーのお二人がとまどっていらしたのですが、グーパーでのグループ分けって海外では一般的ではないのかも。その話もしてみればよかったなあ。

§ 本を通じてインターナショナルな話が広がる

大久保図書館の上にある大久保地域センターの会議室で行われた今回のビブリオバトル・インターナショナル・オオクボ。先に2ゲームで紹介された本を挙げてしまうと、以下の通り。

第1ゲーム第2ゲーム
1人目 『The Atlas of Middle-Earth 「中つ国」歴史地図 ― トールキン世界のすべて』カレン・ウィン・フォンスタッド 『鉢かづき』あまんきみこ/狩野富貴子
2人目★『英語で新宿二丁目を紹介する本』森村 明生/ポール・ネルム 『ドラえもんの国語おもしろ攻略 四字熟語100
3人目 『1リットルの涙―難病と闘い続ける少女亜也の日記』木藤亜也★『真鶴』川上弘美
★がチャンプ本

トップバッターさんが紹介した『「中つ国」歴史地図』は、トールキンの『シルマリルの物語』『ホビットの冒険』『指輪物語』の舞台を地図や表をふんだんにつかって説明した本で、フィクションの世界を扱ったものとは思えない、本格的歴史研究書のような本。『指輪物語』シリーズにすっかりハマったバトラーさんは、この本で物語世界を再度味わっているそう。世界中にファンがいる物語を更に楽しめる本を紹介してくださいました。

『英語で新宿二丁目を紹介する本』を紹介したのは私なのですが、これぞ「新宿区で」「インターナショナルを冠して」行われるビブリオバトルにふさわしいのではと思い、紹介本に選びました。もてないオネエがアメリカから来た素敵なゲイを二丁目に案内する会話を、日本語と英語の対訳を並べるかたちでまとめた本なのですが、会話のなかで具体的なお店を挙げてお値段や店内ルール(女性も入れるかどうかなど)を説明していたり、HIV/エイズをはじめとしたセクシャルヘルスの情報センター「akta」のような真面目な活動も紹介していたりして、国籍やセクシャリティを問わず新宿二丁目を知りたい人にお薦めの本です。実はこの本の著者は私の友達で、チャンプ本に選ばれたと報告したらとても喜んでいました。投票していただいた皆さん、ありがとうございます。

『1リットルの涙』を紹介してくれたのはベトナム人の女性。彼女は今年の6月に日本に来たばかりだそうですが、あらすじを説明してくれる様子を聞くかぎりでは、そんなに最近日本にきたばかりとは思えないくらい、ときどきつまりながらも5分間でしっかり紹介していました。イベント後の懇親会で彼女の日本語学校の先生ともお話したのですが、先生からみても日本滞在期間に対して日本語が上手な生徒の一人なのだそうです。

外国語でのビブリオバトル参加は、弁論大会のように発表の上手さを競うものではないから参加しやすい反面、用意してきた話をするだけではなくて質疑応答にも答えないといけないから、その点の語学力が必要になる。そんなハードルを超えて参加してくれたのがとても嬉しいです。このときには、観覧者からの「どのようにしてこの本を知りましたか」という質問に、ベトナムでドラマが放映されていたのを見たという話をしてくれて、後で更に話を聞いたり、ネットで調べたりしたところ、沢尻エリカ主演のドラマがベトナムでも放映されたよう。どの国にどんな作品が輸出されているのかという点でも興味深い話でした。

第2ゲームの『鉢かづき』は、日本に昔からある物語の絵本。シンデレラに似たストーリーで、そのような物語は世界各国にある、でもそのディテールにお国柄が現れていて、その違いが面白いとのこと。これもイベント後の懇親会で、「鉢かづき」発表者さん・ベトナム人発表者さん・私などで話す機会があったので、ベトナムにもそのような話があるか聞いてみたら、やはりあるそう。タイトルを聞いたら「ドンファン」みたいな発音に聞き取れたのですが、家に帰ってからネットで調べてみると「Tam Cam(タムとカム)」という物語のようで、自分の外国語ヒアリング能力の低さを思い知りました。

ドラえもんの四字熟語の本を紹介してくれたのは中国福建省から来た女性で、私自身はこの方の発表者がツボにはまってしまい、まさかのこの本に投票してしまいました。日本の四字熟語には中国でも使われるものもあれば、そうでないものもある、その四字熟語を学ぶ本として読んで、一番好きな四字熟語は「以心伝心」。まさに彼女の旦那さんが、彼女が何も言わなくても気持ちをわかってくれる人なのだそうです。

と、ここまでは素敵なエピソードですが、その後に「私はこれです」と言って彼女が指さした四字熟語が「独断専行」。彼女は、おそらく緊張もあって、5分間の間に何度か言葉にも詰まっていたのですが、ユーモアのセンスは語学力や緊張を凌駕するんですね。私がこの本に投票したのは、私もいい四字熟語を見つけて「私はこれです」をやりたくなったから。まさか大人になってドラえもんの学習本を読みたくなるとは、とても面白い体験でした。

最後に紹介された『真鶴』は、バトラーさんが台湾へ旅行した際に読んだところ、あまりにも日本を感じさせる小説で、台北の街で読むのは違うと感じ、日本に帰ってから読み直した作品だそう。主人公たる女性の夫が失踪してしまい、夫の日記を読みながら捨てていた「真鶴」の文字があるのを発見し、女性自身も真鶴へ向かう…というストーリーだそうで、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』に似ているけど、そちらは世界のどこでも読めそうな作品。それに対して、『真鶴』は強く日本を感じさせる作品だとのことでした。外国人や外国文化に触れるということは、日本とは何かということをあらためて考えることになる。それはこのイベント全体を通じても感じたことでした。

§ バトラー・観覧者を交えた懇親会が楽しい!

チャンプ本に対して表彰式を行った後は、その場でバトラー・参加者を交えた懇親会が行われました。これは私の持論なのですが、コミュニケーションゲームであるビブリオバトルはそれ自体が目的ではなく、ビブリオバトルをツールとして参加者同士がいろいろな話で盛り上がれることの方が目的だと思います。だから、ゲーム終了後にすぐに撤収するようなビブリオバトルは目的を十分果たしているとはいえないし、バトラーのみで懇親会をする場合もありますがそれも不十分。大久保図書館のように、ゲーム後に参加者同士話ができる時間を作って、限られた質疑応答時間で聞けなかったことを聞いたり、本とは関係ないことも含めていろいろお話できる機会を作ってこそ、ビブリオバトル開催の意味があると思います。

上で、ゲームの様子を説明した部分でも懇親会で聞いたことを含めて書きましたが、今回の趣旨もあって、参加者は本が好きな人だけでなく、国際交流活動をしている人や国際的なお仕事に就いている方も多く、そうした方々といろんな話ができたのがとても楽しかったです。初対面の人でも本の話をきっかけにすれば話が弾むし、例えば、私の紹介本『英語で新宿二丁目~』から派生して、例文が面白い英語学習本として「DUO 3.0」を教えてもらい、私、家に帰ってからAmazonで注文してしまいました。ご一緒した皆さん、楽しい時間をありがとうございました。

こうした楽しい時間は、大久保図書館や地域の皆さんのご尽力あってこそ。実は今回のビブリオバトル・インターナショナル・オオクボは2回目で、今年の3月15日に第1回を開催したのですが、この時期は日本語を学びに来た外国人が帰国することが多い時期でもあり、第1回では外国人バトラーさんの応募はありませんでした。第1回の前にも大久保図書館の職員さんが日本語学校を回って参加を募っていたのですが、その後も引き続き日本語学校でデモバトルを行って、今回のビブリオバトルに繋げています。

また、今回日本語学校の先生から話を聞いて初めて知ったのですが、大久保図書館の児童担当の職員さんが日本語学校に出向いての絵本の読み聞かせも定期的に行っているそうです。こうした活動は、日本語ヒアリングの勉強という直接的な効果だけでなく、外国人居住者の方に図書館サービスを知ってもらうという意義もある。大久保図書館では、中国語・朝鮮語・英語による調べもの相談も受け付けていたり、毎月日本語朝鮮語の2ヶ国後による子ども向けおはなし会をしているのですが、その事実がサービス対象者に知られていなければ意味がない。名目だけではないリアルな多文化サービスを行っている図書館として、大久保図書館はかなり充実している図書館の一つだと思います。

また、今回バトラー参加したベトナム人の方は、前に大久保図書館で開催された日本語多読ワークショップに参加されたそうなのですが、そのイベントには大久保図書館の職員さんだけでなく、NPO多言語多読のスタッフさんも関わっています。ビブリオバトル・インターナショナル・オオクボの第1回は、しんじゅく多文化共生プラザという施設で開催されたのですが、このときも外国人の日本語学習をサポートする活動をしている方が参加していました。こうした図書館や地域の皆さんのいつもの活動があってこそ、楽しいイベントが実現したのだと思います。

図書館側からもこれから回数を重ねていくというお話があったので、私もぜひまた参加したいです。図書館事業としても地域のためのイベントとしても意義がありますし、何より参加して楽しい!そして、外国人の皆さんにもぜひバトラー参加して欲しいです。今回、ドラえもんの四字熟語を紹介してくださった方が証明したように、どこかで聴衆の心をつかんでしまえば、全体として言葉に詰まってしまう時間が長くなってしまっても、皆楽しんで聞いています。これからの開催でいろいろな外国人の方とお話しできるのを楽しみにしています。

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