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ミステリークエスト ~夏目漱石からの挑戦状~

―2018年7月21日から8月26日までの企画
visit:2018/08/10
§ 夏目漱石からの挑戦状!?

夏目漱石の出身地も、生涯を終えた地も、新宿区にあることはご存知でしょうか。そんなゆかりがあるので、新宿区立図書館では、夏目漱石に関するイベントを多く開催しています。そのイベントの一つである、新宿区立西落合図書館での「ミステリークエスト ~夏目漱石からの挑戦状~」に参加してきました。

「挑戦状」といっても、夏目漱石が参加者に謎解きを挑んでくるストーリーがあるわけではなく、問題の内容が漱石に関するものというかたちです。小学生から高校生をこのイベントの主な対象としていて、問題の難易度としては小学生から中学生にちょうどいいくらい(高校生には物足りないかも)だと思いますが、私が参加しているように、大人が参加しても構いません。推理力が必要な問題もあり、漱石について詳しければ解けるとは限りません。

また、西落合図書館だけでなく、早稲田にある新宿区立漱石山房記念館も謎解きの舞台になっており、両方行かないと全ての謎を解くことはできません。記念館は、入館だけなら無料、通常展を観るには観覧料が必要で、謎解きには通常展を観て解く問題が含まれますが、開催期間は夏休みで、小中学生は通常展の観覧料が無料になっていますし、高校生は、ミステリークエストの問題用紙を受付で提示すれば、通常300円のところ半額の150円で観覧できます。ミステリークエストを解くなかで知った夏目漱石のことを、自由研究としてまとめるのもよさそうです。

§ 出題の仕方で3つのレベル

謎解きに必要な問題用紙は、西落合図書館でも漱石山房記念館でももらうことができます。西落合図書館では、児童エリアの入口から見て左先にある「戦争と平和の本」の展示をしている棚で、問題用紙を配布しています。漱石山房記念館では、受付で職員さんに言えばもらえますし、私が行ったときに中学生と父親の2人連れがいたのですが、職員さんのほうから「今、こんないイベントをしているのでよかったらどうぞ」と問題を渡していたので、対象の年代の来場者が来たら参加を呼び掛けているようです。

問題用紙は、初級編(小学校の低・中学年向け)・中級編(小学校の中・高学年向け)・上級編(中高校生向け)の3種類があります。内容はどれも同じですが、ふりがなの有無やヒントの出し方で難易度を変えています。用紙のなかでは、先に西落合図書館で解く問題が並び、その後に漱石山房記念館で解く問題が出されていますが、必ずしもこの順序で解く必要はありません。問題の表紙には、期間内に謎解きをして西落合図書館のカウンターにもっていくと、参加賞として缶バッチをもらえると書いてありますが、要望が多かったため、現在は漱石山房記念館の受付でも缶バッチを配布しているとのこと。問題を全て解き終えた場所で、答えの埋まった解答用紙を見せてください。

§ 推理問題中心の西落合図書館

西落合図書館で解く問題は、書架の中を探したり、推理力で解くような、いわゆる「謎解き」問題です。謎解きに関係するものは全て児童エリアの中にあり、通常開館している西落合図書館に行って謎を解くことになります。書棚や掲示物の中に問題があるので、知らずに児童エリアの本を読みに来た人も、「何やら謎解きが行われている」と気づくと思います。

進むにつれ難易度が上がっていく5問の問題を順に解くもので、難易度としては子ども向けなのですが、私が1つ解くのに時間がかかった問題がありました。ある人物の誕生日を答えないといけないのですが、『ポプラディア』を見ても、『ポプラディア プラス 人物事典』を見ても、その人物のことは載っているのに、誕生日は載っていない。実はそれらを見なくてもわかるものが児童エリアにあったのですが、この謎解きとは別に、「児童向けの事典には人物の誕生日や命日は載っていない」ということがわかり、勉強になりました。子ども向けの情報にする際、何を捨て、残ったものをどう説明するかは、こうした事典から日常生活まで、さまざまな局面で問われるところ。ポプラディアの方針の一端を見たかたちになりました。

更にこの後、この企画について職員さんとやりとりするなかで、『ポプラディア プラス 人物事典』の各人物の説明には誕生日が載っていないものの、それとは別の箇所に著名人の誕生日をまとめたページがあることを教えていただきました。さすが、調べものの専門家が持つ情報は豊富です。この一例だけを見ても、何かを調べる際、自分でいろいろ調べるだけでなく、図書館でレファレンス(調べもの相談)をお願いして、更に資料がないか聞いてみることが大切だと思いました。

また、西落合図書館の中で本を運ぶのに使えるカゴに関する問題があり、私は西落合図書館を10回以上利用しているものの、カゴを必要とするほど何冊も持ちながら館内を歩いたことはなかったので、そのカゴに漱石にちなんだ名前が付けられていることも知りませんでした。西落合図書館は、落合文士村と呼ばれた地域に近いことからその紹介に力を入れていて、入口に林芙美子の顔はめパネルがあるくらいなのですが、漱石のこともこんなかたちで館内に取り入れていたとは。利用したことがある図書館でも、知らないことがいろいろあるものだなと、あらためて思いました。

§ 知識問題中心の漱石山房記念館

問題の後半は、東西線の早稲田駅の近くにある漱石山房記念館で解く内容です。夏目漱石に関する知識だけでなく、記念館がどうなっているかを知らないと解けない問題があるほか、記念館のスタンプを押すというミッションもあるので、足を運ばないと全問クリアはできません。むしろ、問題の答えを調べようとすると、地下や庭(漱石公園)も含めた記念館全体を自然と回ることになり、漠然と記念館に来たら気付かないような細かいことも目に入る。記念館の紹介になっている内容の謎解きです。

漱石山房記念館は、夏目漱石が晩年暮らした、まさにその場所にあり、当時の「漱石山房」を再現しているほか、漱石の交友・子弟関係や、俳句・絵画など小説以外の漱石の作品にも焦点をあてた展示を行っています。私も、2017年9月24日の開館当時から「いつか行きたい」と思っていたものの、これまで時間を作れずにいたのですが、ミステリークエストのミッションになったのをきっかけに「いつか行きたい」が「今行こう」になりました。周遊型の謎解き企画は、こうやって「どこかに行かされる」ことで、知らない場所に行けたり、知らないものに出会えるのがいいところ。行ってみたら予想以上に居心地のいい場所で、もっと早く来ればよかった。西落合図書館さん、いいきっかけをくれて、ありがとうございます。

ちなみに、この謎解き企画とは別に(厳密に言うと、別とも言えない…と書くとヒントになってしまうのですが)、地下1階に漱石に関する問題に挑戦できるタブレットが置いてあります。こちらも初級・中級・上級の3段階があり、ミステリークエストと比べてもかなり難易度の高い漱石知識問題で、大人でも全問正解できる人は少ないと思います。漱石山房記念館に行った際は、こちらもぜひ挑戦してみてください。

§ 答え合わせとプレゼント

西落合図書館を巡る問題と、漱石山房記念館を巡る問題をともに解いた後、西落合図書館のカウンターへ行き、ミステリークエストの答え合わせをしたいと申し出ました。このイベントのポスターに記念に缶バッチがもらえる旨が書いてあり、私はてっきり正解者にプレゼントが贈られるのかと思い込んでいたのですが、参加記念としていただけるよう。カウンターでは、職員さんが問題に答えていることを確認した上でプレゼントを出していただき、参加者が自分で答え合わせができるよう正解を渡されました。考えてみれば、記念館を巡る問題が間違っていた場合に、もう一度行って正解を出せというのも酷ですし、楽しみながら漱石山房記念館を学ぶ企画としては、行ったことで目的は果たせていると言えるのでしょう。

子どもを主な対象としている謎解き企画に参加した大人としては、全問正解していないと格好がつかないところ。答え合わせをしたら全問正解していて、安心しました。振り返ると、記念館のカフェで漱石ゆかりのお菓子を味わったり、あらためて漱石作品に触れることができたりと、いい時間を過ごせた企画でした。

このミステリークエストは、2018年7月21日から8月26日まで行っているので、挑戦してみたい方は期間内にぜひ。缶バッチのプレゼントは8月31日まで行っているので、問題の配布や掲示が26日で終わった時点で解けない問題があったとしても、31日までは考える猶予があります。謎解きを楽しみつつ、夏目漱石の世界を堪能してください。