図書館と話そう~ミニ職場体験~
visit:2013/10/27
新宿区立北新宿図書館で開催されたイベント「図書館と話そう~ミニ職場体験~」を覗いてきました。このイベントは2013年7月13日の回に続いて2度目で、前回は新宿区立図書館・北新宿図書館に関する展示を見ながら職員さんと図書館のことを話しせる場となっていましが、今回はより具体的に選書の過程を示した展示をしたり、透明フィルム掛け体験ができる場が用意されていました。展示を見たり、職場体験をしながら、職員さんと話ができる場というわけです。
私、最初に「覗いてきました」と書きましたが、その表現がふさわしい、ふらっと寄りやすいイベントなんです。イベントとしては14時から18時までで、図書館と同じフロアの北新宿生涯学習館の一室にそうした空間を作って開放しているかたち。出入りは自由で、何だろうと覗くと職員さんがどうぞと招いてくれたりして、通りがかりの生涯学習館利用者さんも入りやすい雰囲気です。私も展示を見ながら、新宿区立図書館での選書の様子を説明していただいたのですが、このイベントのいいところは、利用者の集まりに対する一様な説明ではなく、来場した一人一人に職員さんがついて説明してくれること。たとえていえば、住宅展示場にいくとスタッフさんが一緒に室内を回って説明してくれるようなかたちです。なので、疑問に思ったことを説明途中で聞いたりできるし、詳しく知りたい部分をさらに説明してもらったりもできる。まさに「図書館と話す」場なんです。
選書の流れとしては、リクエストや取次店からの新刊データ、その他情報をもとにこれぞという本に目をつけたうえで、実際の本を見た上で発注するわけですが、新宿区立図書館の場合は、週1回中央図書館に実物の本が届き、その日は各館の担当者が中央図書館に行って選書するのだそうです。これは新宿区立図書館のやりかたであって、中央館が全館分の選書をしてしまう自治体もあるし、各館に実物の本が届く自治体もある。こうした説明を聞くと、これまで漠然と見ていた棚の裏を覗く感覚で、図書館との距離が近くなったような気分になります。
また、選書した後の流れを知るということで、図書館の本に掛かっている透明保護フィルムをかけられる体験もさせてもらいました。私、この日初めて知ったのですが、この透明保護フィルムを指す言葉として使われる「ブッカー」は一企業の商品名であって、普通名詞ではないんですね。
体験では、図書館の蔵書にするためのやり方にならって、透明保護フィルムを貼る前段階の「分類ラベルを貼る」というところから体験しました。図書館で使われている日本十進分類法には現時点で第9版まであり、新宿区立図書館では(何版だったか忘れたけど)全館で何版を使用すると決まっているのだそうです。その中から、自分の選んだ本の内容を考えて最適な分類を選択するのですが、書誌データベースに載っている分類記号が必ずしも適切とは限らず、実際の本を見て、ときには他の図書館での分類を参考にしたりして決めているのだそうです。ここで間違えて最適ではない棚に行ってしまうと、この本を望んでいる人に届かないこともあるので、責任重大ですね。
分類記号が決まっても、まだ油断してはいけません。ラベルの書き方にもコツがあり、数字の上下を枠いっぱいに書くのがいいそうで、言われてみるとその方が見やすいし、新宿区立図書館のラベルは確かにそうなっています。今は手書きではなく印刷しているケースの方が多い気もするのですが、各区立図書館のラベル比較をしてみるのも面白いかも(笑)。
そしてついに透明保護フィルム掛け体験です。私にとっては初めての透明保護フィルム掛け体験で、前にある図書館で新しい本なのに透明保護フィルムの掛け方に大失敗してリサイクル本に回っていた本を目撃したこともあり、上手くいくかどうかドキドキでした(笑)。ちなみに体験に使った本自体は、図書館蔵書ではないので、失敗しても大丈夫。でも、注意点を丁寧に説明していただきながらできたおかげで、背部分を少し失敗した程度で済みました。空気が入ってしまった場合は、本を傷つけいないように針で小さな穴をあけて空気を抜くというわざもあるそうで、それを聞いて借りた本の透明フィルム部分をじっくり観察しちゃったり(笑)。
その他には、前回と同様に図書館というものを知ることができる展示や、各地の図書館を取り上げた本、図書館を舞台にした小説・漫画なども。いろんな切り口から図書館を見て、それについて自由におしゃべりできる場で、とても楽しかったです。
例えば、ブッカー掛け体験自体は他の図書館でも開催してるイベントです。でも、「図書館と話そう」のユニークな点は、ブッカー掛け体験自体はきっかけであって、それを通じて利用者と図書館職員さんが気軽に話せること。職員さんにとっても、顔は覚えているけどこれまで話をしたことがなかった常連さんが会場にいらして、話すきっかけができたそうです。その常連さんにとっても、前々から何となく疑問に思っていた、でもわざわざ聞くまでもなかったことが聞けたよう。
利用者にとっても、図書館の職員さんって、よく通っていれば顔も覚えているくらい。でも、だからといって話すかというと、貸出&返却時しか接することなく、「知っているけど知らない人」みたいな微妙な存在ですよね。でも、話をすれば図書館のことをより知ることができたり、手間のかかる調べもの相談などもしやすくなるかも。図書館にとっても、具体的な感想や要望を聞くことができたりして、「話す」って大事だと思うんですよね。このイベントはそうしたきっかけになるし、ぜひ他の図書館にも広まって欲しいです。
北新宿図書館では年度内にもう一度開催したいと考えているそうなので、図書館とお話したい方はぜひ!今回は、私自身が1時間しかいられなくてそういう機会がなかったのですが、前回は他の利用者さんとも話せて、利用者さん・職員さん一緒にゆったり話せる空間がとてもよかったんです。図書館が「私たちの居場所」として感じられるようなイベント、次回も楽しみです。