ビブリオバトル部第1回部活動 テーマ「自己紹介」
visit:2014/11/15
今ではあちこちの図書館で開催されているビブリオバトルですが、練馬区立春日町図書館は2012年12月に第1回ビブリオバトル@春日町図書館を開催しており、都内では早くから開催していた館の一つです。その春日町図書館で更なるバトラー発掘を求めて、従来のイベント型ビブリオバトルとは違うタイプの「ビブリオバトル部」を立ち上げることになり、私も部員として参加しています。その記念すべき部活動第1回目が2014年11月15日に行われ、私も紹介本を片手に行ってきました。
ビブリオバトル部とは、その名の通り部員同士でビブリオバトルを行う部活動。ビブリオバトルがしたい人なら誰でも参加できます。図書館で開催されるビブリオバトルは少数の発表者と多数の観覧者からなる「イベント型」が多いですが、考案者・谷口忠大氏の『ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム』を読めばわかるように、ビブリオバトルの本質はそうした大きなイベントよりも、草の根的に知り合い同士で気軽に楽しめるところにあります。同じ図書館を利用する人で作った「ビブリオバトル部」は、まさにその本質に近いかたちといえ、とても楽しみに当日を迎えました。
集まった部員は4名で、第4回ビブリオバトル@春日町図書館にバトラー参加し、そこでの部員募集にさっそく名乗りを上げた遠藤さん(第4回で遠藤周作『沈黙』を紹介した方)と私。そこに、イベント型の春日町図書館ビブリオバトルで司会を務める谷口さんと、副館長の則武さんが加わるというメンバーです。全員揃ったところでジャンケンし、勝った人から好きな順番を選ぶという方法で順番決めをして、いざゲームスタート!
部活動の記念すべき第1回目ということもあり、お題は「自己紹介」。部員の自己紹介を兼ねた発表を促す意味でのテーマ設定だったと思うのですが、個人的にはすっかりテーマを失念して、単に発表したい本を持っていってしまいました(笑)。まあ、多かれ少なかれ、この本が好きだという話自体が既に自己紹介になるからいいでしょう。他の方も、自分が好きな作家の作品を選んできた、自分のポリシーに近い本、自分の子育てや物の見方に影響を与えた本などを持ち寄り、紹介された本は以下の通り。
1人目 | ★『海も暮れきる』吉村昭 |
2人目 | ★『図書準備室』田中慎弥 |
3人目 | 『無敵のハンディキャップ―障害者が「プロレスラー」になった日』北島行徳 |
4人目 | 『子どもへのまなざし』佐々木正美 |
1冊目は自由律俳句の尾崎放哉の生涯、特におちぶれるように小豆島に行ってからの晩年を描いた本だそうで、他のバトラーさんの中に尾崎放哉の句集を読んだばかりの人がいたこともあり、話が盛り上がりました。私が投票した本も実はこの本。2冊目は私で、この小説の主人公の振る舞いが芥川賞受賞時の田中さん自身(「断ったりして気の弱い委員の方が倒れたりしたら、都政が混乱するので。都知事閣下と東京都民各位のために、もらっといてやる」宣言をしたあの感じ)を思わせるという、ブログ記事での感想にも書いた自説を披露しました。
3冊目を紹介した遠藤さんは尺八奏者で、発表タイムで尺八の演奏を披露。私は組立式の尺八を目にしたのが初めて、いや、それどころか、尺八の演奏を生で見ること自体が初めてで、それだけでも面白い体験でした。演奏した曲(尾崎豊の「僕が僕であるために」)の「勝ち続けなければならない」という歌詞と本の内容を重ね合わせた発表が印象的。ビブリオバトルの発表ではこうしたパフォーマンスもありですが、2年前からビブリオバトルに参加するようになった私にとって、実際に発表のなかで楽器の演奏をしたのを見たのは初めてでした。
4冊目は、児童精神科医の著者が講演などで話してきたことを本にまとめたものですが、発表者さんはこの本を読んだことで、子どもとの接し方だけでなく大人に対する見方も変わったのだそう。ご家庭の話なども出て、まさに発表が自己紹介になっていた内容でした。
全員が発表者である4人のビブリオバトルというのは、質疑応答タイムがイベント型に増して盛り上がります。というのも、イベント型だと「私ばかりたくさん質問しては、他の方が質問できなくなってしまうかも」と気を配らないといけないところ、少人数ならその遠慮が要らないし、「こんな質問に大勢の前では答えにくいかな」という内容の質問もできるから。つまり、少人数の方が、質疑応答の時間が深いものになっていくのです。大勢の人に向かって話すと広く関心がありそうな内容になるところ、誰かと二人で話せばその二人の関心事について深い話ができますよね。それと同じことが起こるのです。
そんなこともあり、4人でのビブリオバトルにも関わらず、終わってみたら1時間も経っていました。発表はきちんと時間を計測、質疑応答は時間を気にせずに、というかたちで行っていたのですが、単純計算すると発表5分に対して質疑応答を10分していた計算になりますね(笑)。
投票はいっせいのせで投票する本に指を差すかたちで行い、『海も暮れきる』に2票、『図書準備室』に2票が集まり、この2冊がチャンプ本になりました。でも、実際のところ、チャンプ本決めなんておまけのようなもので、本の話やそこからいろんな話題に広がっておしゃべりすること自体が楽しいんです。
図書館での部活という意味では、図書館職員さんと気軽に本の話ができる機会としてもいい時間です。図書館職員さんの持つ本についての知識はいろいろ聞いてみたいところですが、静かにすべきとされている図書館の中で気楽におしゃべりというのはなかなかしづらい。こうした部活があればそんな話もできますし、そうやって職員さんと顔見知りになることで、普段の図書館利用でも本に関する質問をしやすくなります。
こんなかたちで始まったビブリオバトル部ですが、まだまだ部員が少ないのでご興味ある方はぜひご参加ください。だいたい3,4ヶ月に1度こうした部活を行う予定で、次回は2月に行います。きちんとした日時は1ヶ月くらい前に部員の予定がわかってきてから決めようということになっており、こうやってメンバーの都合に合わせられるのも一般の図書館行事とは違うタイプの「部活」だからこそ。
今回の部活の最後に次回のテーマを決めたのですが、「こたつに入りながら読みたい本」「鍋をつつきながら読みたい本」など季節を意識した案が出たなか、それらをひっくるめて「2月に読みたい本」ということになりました(笑)。どうにでもこじつけられそうなテーマなので、実質上好きな本を持ってきて参加できるビブリオバトルといえるでしょう。来たれ、新入部員!詳細は春日町図書館にお問い合わせください。部員一同お待ちしております。