第2回ビブリオバトル@春日町図書館
visit:2013/11/03
近頃、新聞・テレビなどでも見かけるようになった「ビブリオバトル」。全国大会などの大きなイベントがニュースになりますが、ビブリオバトル自体は好きな本を持って集まれば誰でも参加できるゲームで、カフェや居酒屋などでも開催されています。春日町図書館でも2012年12月に初めてビブリオバトルを開催、そして今回2013年11月3日に第2回を開催しました。
ビブリオバトルについて説明をしておきますと、発表者(バトラー)が口頭で5分間の書評を行い、その後2~3分で発表者への質疑応答やディスカッションなどを行います。これを発表者の数だけ行う、つまり5人発表者がいたら、Aさんの書評発表→Aさんへの質問やディスカッション→Bさんの書評発表→(中略)→Eさんへ質問やディスカッション、といったかたちで進行します。そして最後に観覧者&発表者全員で「どの本が一番読みたくなったか?」を基準に投票を行い、最も票を多く獲得した本をチャンプ本とするというゲームです。発表者は自分の紹介本以外のものに対して1票を投じます。これだけ押さえておけばほぼ大丈夫ですが、より詳しく知りたい方はビブリオバトルの公式サイトをどうぞ。
今回のビブリオバトルには、私も含めて5人のバトラーが登場。今回のテーマ「中高生へのおすすめ本」に合わせて、中学生の女の子から40代の大人まで、それぞれのお薦め本を発表します。まずは、イベントの初めに発表の順番決め。二つ折りになっている紙を発表者が順番にひいて、皆でいっせいにパッと開くと数字が書いてあり、それが発表の順序となるわけです。一番最初は嫌だと言っていた中学生の女の子が1番をひいてしまって大慌てする様子など、可愛らしかったなあ。
そんなわけで、一番バッターは有川浩の『植物図鑑』を紹介してくれた中学生の女の子。彼女は自分の進路希望もからめて本を紹介してくれて、お薦め本の話もさることながら、受験も頑張ってと応援したくなるような発表でした。実はこの11月3日という開催日は、「中高生へのお薦め本」というテーマにしたにも関わらず、多くの中高生にとって中間試験を控えた日であったために参加しにくい日だったのですが、彼女はそんな状況のなか参加してくれました。素晴らしい!
2番手は私で、手紙を書く楽しさや可愛らしい手紙グッズが掲載されている『手紙手帖』を紹介しました。最近の中高生はメールやLINEばかりで手紙を書かなくなっているのでは、と思ってこの本を紹介したのですが、イベント後に1番手の中学生に聞いた話では、授業中に友達へ手紙を回したり、交換日記をしている友達もいるとか。交換日記も現役で使っているなんて頼もしい!私のお薦めは、要らないお世話だったようです(笑)。
3番手の男性は小野不由美の『月の影 影の海 十二国記』を紹介。彼の発表で面白かったのは、ディスカッションタイムに「ファンタジーということはとんでもない設定が出てくるのでしょうか。私はあれがダメで…」という質問があったのに対し、「はい、最初からとんでもない設定です!」とキッパリ言い切ったこと(笑)。質問者さんには合わない本だったかもしれませんが、あのキッパリな様子に惚れ惚れしてしまいました。彼は他人の発表のとき以外も、本や発表者の魅力を引き出すいい質問をしていて、ビブリオバトルを楽しむのが上手な人だったなあ。
立花隆『青春漂流』を発表したのが4番目の男性。いろんな職業についている人11名にインタビューして、そこに辿りつくまでに失敗し模索してきた様子を描いたこの本を、中高生へのお薦めという切り口だけでなく、初めてビブリオバトルに挑戦するご自身にも照らし合わせての発表で、実は私も投票の際にはこの本に投票しました。
最後を締めくくったのは、よしもとばなな『High and dry (はつ恋)』を紹介した女性。文京区本郷図書館で開催された「ビブリオバトル よしもとばなな編」を観に行ったときも思ったけど、よしもとばなな好きな女性はどうしてこんなに可愛らしいのでしょうか(笑)。この発表者さんも可愛らしい表紙のこの本の中に登場しそうな方で、発表を聞いているだけでほんわかした気持ちになってしまいました。
といったかたちで、5人の発表が揃い、いざ投票へ。紹介本のまとめと投票結果は以下の通りになりました。
1人目 | 『植物図鑑』有川浩 |
2人目 | 『手紙手帖』木村衣有子 |
3人目 | 『月の影 影の海 十二国記』小野不由美 |
4人目 | ★『青春漂流』立花隆 |
5人目 | 『High and dry (はつ恋)』よしもとばなな |
チャンプ本に選ばれた『青春漂流』を紹介した男性には、春日町図書館から表彰状の授与もありました。おめでとうございます!面白かったのが、投票後のコメントで、この男性がしきりに「中学生を差し置いてチャンプ本に選ばれて申し訳ない」とおっしゃっていたこと。「青春期には失敗を恐れずに」という内容の本を紹介したのに、中学生に勝たせてあげたかったというのは矛盾しているような(笑)。でも、たぶん、そうした矛盾こそが発表者さんの魅力なんだろうなあ。他の発表者の皆さんも、それぞれ個性ある発表で本当に面白かったです。
ひとつ残念だったのは、前回はイベント後にその場を開放して、観覧者と発表者が話せる時間を作ってくれていたのに、今回はビブリオバトル後に同じ場所で利用者懇談会があったためにそうした時間がなかったこと。ビブリオバトルは、本の紹介イベントであるだけでなく、本の発表を通じてその日初めて人とも近くなれるゲーム(だからこそ、公式サイトにも「コミュニケーションゲーム」と紹介されています)なので、そこまで含めたイベントとして楽しめると嬉しいです。発表者同士はイベント終了後もいろいろお話したのですが、観覧者も含めて参加者なので観に来ていただいた方とももっとお話したかった。次回は、第1回のようにイベント後の交流時間もぜひ作ってほしいです。
そう、イベント終了の挨拶で告知していましたが、今年度中にもう一度ビブリオバトルを予定しているそうです。今回見逃した人も、今回楽しんだ方も、ぜひ第3回にいらしてください。これまで観覧者としていらした方は、発表者としてもぜひ。観覧者として参加するより、発表者として参加するほうが100倍楽しいです!
図書館って本が好きな人が集まる場所で、利用者の数だけお薦め本があるはずなのに、何もなければそれぞれの人がそれぞれ本を読んでいるだけ。でも、こうしたイベントで同じ図書館を使っている利用者同士が本の情報を交換し合えば、「ただの同じ場所にいるだけ」だった人が、「本を通じた読書友達」になる。これってすごいことだと思います。そんなきっかけを作ってくれるビブリオバトル、これからも楽しみにしています。