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ブックトレード・誰かに読んでもらいたい「おすすめ本」の交換市 交換券→お薦め本の引き換え

―2017年9月16日のイベント
visit:2017/09/16

葛飾区立立石図書館で行われたお薦め本の交換市「ブックトレード」に行ってきました。自分が持っている本でお薦めのものを図書館に持ち寄り、持ち寄った冊数分の交換券と引き換え、他の人が持ち寄った本のなかから読みたい本を選んで交換券と引き換えにもらうことができるという仕組みです。「本を持ち寄って引き換えに交換券をもらう」を2017年8月15日から9月15日まで、「交換券と引き換えに気に入った本をもらう」を9月16日に行うというかたちで、事前に本を持ち寄っていた(事前持ち寄りの様子はこちら)私も16日を迎えて、いざ立石図書館へ。

皆が持ち寄った本が並ぶなかから好きな本を選んで交換券と引き換えにもらえるのは、16日の13時から16時までの間で、私が着いた15時過ぎの時点では100冊弱ほどの本が並んでいました。職員さんに聞いたら、引き換え開始時点ではこの倍、つまり200冊ほどの本があって、参加者は13時にどっと集まり、どんどんと引き換えていったそう。早く来ればいろいろな本があったでしょうが、人混みは好きではないので、私はこの時間でちょうどよかったです。

雑誌・漫画・自費出版本などは不可という縛りしかないので、集まった本のジャンルは実にさまざま。会場は、2階にあるエコ工房(立石図書館はかつしかエコライフプラザとの併設施設で、エコに関するイベントなどをするのがこの部屋)で、広さとしては小会議室程度の小さな空間なのですが、長机を並べて、この辺りは絵本、この辺りは実用書と、ジャンルごとにまとめてあります。

配分としては、小説・エッセイが全体の3,4割というところでしょうか。絵本や料理本では、日本語で書かれた本だけでなく英語で書かれた本もありました。実用書も株の本、言葉遣いの本などいろいろあり、確かに便利な実用書でも書かれている情報が身についてしまったら、持っている必要性は低くなるかもしれませんね。

§ 持ち寄った人によるお薦めコメント

このイベントの特徴は、「古本の交換イベント」ではなく「お薦め本の交換イベント」であること。なので、本を持ち寄るときに、感想などを書いたメッセージカードや自作の帯などを付けて持ち寄ってくださいと呼びかけていました。また、そうしたものを作るのが苦手な人のために「おすすめポイントチェック表」が用意されており、「ワクワクする」「泣ける」「考えさせられる」などの項目の中からその本に該当するものにチェックをいれればいいだけ。会場に並べられた本は、そんなかたちで持ち寄った人のお薦めポイントが添えてあります。

例えば、ソフロロジーという出産方法に関する本は、それだけなら単なる本かもしれませんが、妊娠して不安だったのがこれを読んで気持ちが楽になったと、持ち寄った人の体験が自筆で添えられていることで、お守りのような存在だったことが伝わってきます。小説なども、売られているときに付いている帯や、文庫本の裏表紙に書かれたあらすじなど、出版社による情報に加えて、読んだ人のコメントがあることで、どんな内容なのかがより立体的に見える気がします。

葛飾区立立石図書館 ブックトレード 交換本

そんな中から私が最終的に選んだのが写真の2冊。是枝裕和『歩いても歩いても』は、お薦めコメントにある「人生はいつもちょっとだけ間に合わない」という言葉がとても気になり、そこを絶妙に描いている作品だということで、これは読んでみようと。外山滋比古『ものの見方、考え方』は、このタイトルだけだと難しい本かとも思ってしまいますが、「お楽しみ下さい!」という言葉が添えられていることで、気楽に読めそうだなと手が伸びました。

§ 本を持ち寄った人へのプチプレゼント

冒頭で、本の持ち寄りが9月15日まで、交換券と本の引き換えが16日と書きましたが、16日の会場でも本の持ち寄りを受け付けていました。つまり、16日の13時以前の時間帯が持ち寄り不可になっていて、おそらくは担当の職員さんが会場準備に追われるからでしょう。私も事前持ち寄り分に加えて、当日もう1冊本を持ち寄りました。

葛飾区立立石図書館 ブックトレード プチプレゼント

お薦め本を持ち寄ると、冊数分の交換券だけでなく、図書館からのプチプレゼントがもらえます。事前持ち寄りのときはカンガルーのカードでしたが、当日持ち寄りのときはリスのカードで、写真のようにリスが手にしている本を開くと、お薦め本情報が書かれています。図書館による本の情報は、図書館だよりや館内展示などいろんなかたちがありますが、こんな可愛らしいかたちでいただくのもいいですね。

§ お薦め本を交換する楽しさ

葛飾区では、中央図書館がブックシェアというイベントを何度が行っていて、そちらはお薦め本の紹介文を大々的に募って貼りだす企画です。立石図書館のブックトレードは、お薦め情報を交わす点では同じですが、本そのものも交換するのが特徴。エコライフプラザとの併設施設という性質とも親和性がありますし、実物の本にメッセージが添えられることで、本の魅力がぐっと増します。

この点、個人的には反省があって、事前に持ち寄った1冊はメッセージや帯を用意せず、お薦めチェックリストにチェックしただけで済ませたんです。でも、皆のお薦め本が並ぶなかどれにしようかなと見ていると、やっぱり手書きのお薦めコメントが添えられている本の方が目に留まる。更に、当日持ち寄った本は家にあった絵葉書にお薦めコメントを書いて本に挟むかたちで持っていったのですが、私がもらった本の写真のように、本を閉じて並んでいる状態でお薦めコメントが目に入るかたちにしないと、そもそもコメントを添えたことにも気づかれない。たくさんの本が並んだ状態を想定して工夫すればよかったなと思います。

また、イベント全体としても、今以上に「不要な本の交換」ではなく「お薦め本の交換」だという色を強めてもいいように思いました。というのも、私が行った時間が遅かったので特に目立ったと思いますが、自作の帯やメッセージもお薦めチェックリストもなく、ただの古い本という状態のものもいくつかあったんです。お薦めコメントがついているものと比べると見劣りするし、遅い時間帯に行ってそうした本が少なからず残っていたのは、他の参加者もそう思ったからでしょう。

葛飾区立図書館には、図書館が除籍した本と利用者が持ち寄った古本を並べて自由にもらえるようにしているリサイクル本コーナーが常設されているので、「不要な本の交換」であればとりたててイベントとして行う必要はありません(イベントにすることとでふだん以上に古本が集まるというメリットはあるでしょうが)。お薦めコメントなどがついていない本は、このイベントでは受け付けずにリサイクル本コーナーに回して、このイベントはあくまでも「お薦め本の交換」とする方が、魅力的なイベントになるように感じました。

もう一つ、このイベントの楽しさとして、自分が提供した本を誰かがもらってくれたという点もあります。私は事前に本を持ち寄ったのですが、行ったときにはその本がありませんでした。それはつまり、私が持ち寄った本を誰かが読みたいと思って選んでくれたということ。事前に持ち寄った本は吉田修一さんの『さよなら渓谷』で、私のお薦めだからではなく、吉田さんの人気のおかげで選ばれたと思いますが、自分が面白いと思った本を誰かが読みたいと思ってくれたことが単純に嬉しいです。

立石図書館のブックトレードは、今回が2回目、前回はおよそ1年前に行っていたので、これからも年1回ペースで行われると思います。職員さんに「これからも開催しますよね」と聞いてみたら、「そうしたいと思っています」というお返事で、正式に継続が決まっているわけではなさそうでしたが、私自身お薦めコメントの書き方を改善してまた参加したい。図書館がお薦め本を交換する場になるのも、とても素敵な取り組みだと思うので、ぜひ今後も続いて欲しいです。確か前回も同じ季節の開催だったと思うので、参加してみたい方は来年以降のこの時期の図書館HPや館内掲示物をぜひチェックしてください。