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荒川区立中央図書館(ゆいの森あらかわ)

荒川区立中央図書館(ゆいの森あらかわ) 訪問記

last visit:2018/09/19

荒川区立中央図書館(ゆいの森あらかわ)は、2017(平成29)年3月26日に開館した、荒川区の新しい施設です。中央図書館、吉村昭記念文学館、子どもひろばが一体になった施設で、それらの施設が「併設」されているのではなく、「融合」している感じの、これまでにない施設です。

※ゆいの森あらかわは、施設が大きくてすぐには訪問記を完成させられないので、執筆途中段階の原稿をUPしておきます。項目ごとに書ける部分から書いていき、最後にひとまとまりの訪問記となるような書き方をしていこうと思っています。
§ 施設の様相

「ゆいの森あらかわ」という名前からして、「ナントカ図書館」という名前ではないの?という疑問が生まれますが、ゆいの森あらかわの「施設のご案内」ページによると、「中央図書館、吉村昭記念文学館、ゆいの森子どもひろばが一体となった」ものが「ゆいの森あらかわ」だそうです。荒川区立図書館HPでは、「ゆいの森あらかわ」を図書館の一つとして扱っていますが、荒川区立図書館条例で定められた名称には「荒川区立中央図書館」とありますので、図書館としては「中央図書館」があり、それが図書館以外の施設と融合されたものが「ゆいの森あらかわ」だ、というのが正しいところだと思います。

実際に訪れると、確かに「融合」しているのを感じます。他の機能との融合を目指している施設は都内にいろいろあるのですが、現実的には何階が図書館、何階がそれ以外の何か、といったように「同じ建物に別の施設を入居させている、ただの併設」のところばかり。でも、ゆいの森あらかわは、各エリアが繋がっており、「ここからここまでが何のエリア」みたいな境目を感じさない、「ゆいの森あらかわ」でひとまとまりとなっている施設で、個人的には、融合を謳って実は併設にすぎない他の施設に見習ってほしいと思うくらい、気に入っています。

§ フロア構成

そのように、複数の要素が融合している施設なので、フロア構成を説明するのも難しいのですが、ざっくり説明しますと、まず1階が乳幼児向け中心のフロア。図書館要素としては絵本がありますし、子どもひろば要素としては遊具などがあって乳幼児が遊べる遊び場があります。また、カフェやイベントホールも1階。ホールは1階から2階を繋ぐ大きな階段が座席になっていて、左右の壁には絵本がたくさん展示されており、イベントがないときは閲覧席として使えます。このホールは従来の"ホール"の概念を崩すような、図書館の中であることを活かしたデザインで面白いので、大人の方もぜひ閲覧席として利用してください。

2階は、図書館要素としては児童書とティーンズコーナーがあり、自由に話していいスペースもあるため、放課後の時間には小学生・中学生・高校生が勉強やおしゃべりの場として利用しています。また、2,3階の一画が吉村昭記念文学館となっていて、2階の文学館エリアには、吉村氏の書斎を再現したコーナーもあります。ちなみに、私が最初にここを見に来たときには、親子連れのお子さんがお母さんに「こんな書斎があれば、俺もちゃんと勉強するのに」と書斎のおねだりをしていました(笑)。

3,4階は、図書館としては一般書架エリア。新聞・雑誌、文学などが3回、自然科学、人文科学などの専門書が4回と分かれています。3階の一部は2階から繋がっている吉村昭記念文学館で、3階の映画上映スペースでは、毎日一回吉村氏の作品を原作とした映画を上映しています。また、4階は中央にメインの書架、その周囲に本棚と閲覧机のある小部屋があり、後述する5階の学習席が満席でも、4階の閲覧席をこまめに覗けば空いていることがあります。

5階には指定席制の学習室があり、こちらは他のエリアと区切られていて、静かに学習をする空間です。その外にもテーブルがあり、こちらは自由におしゃべりできる空間です。静かな場所で集中したいときにも、相談したり話したりしながら利用したいときにも、それぞれの用途にあったスペースがあるのが嬉しいです。4階や5階にはテラスもあり、5階のテラスの端からは東京スカイツリーも見えます。

§ 蔵書数が多い図書館、荒川区に現る!

ゆいの森あらかわは、ゼロから新しい図書館を作ったのではなく、荒川区にとって最初に設立された荒川図書館の蔵書を継承し、更に、それまでの中心館だった南千住図書館の蔵書の一部を移して、中央図書館を設立するという経緯を辿っています。なので、その経緯のまま、以前の荒川図書館に南千住図書館の一部を足した程度の規模と想像していたら、これが大間違い。荒川図書館の蔵書が十数万冊、南千住図書館の蔵書が二十数万冊だったのに対して、ゆいの森あらかわの蔵書数は約60万冊です。正確な蔵書数はゆいの森あらかわの情報は反映された荒川区立図書館の事業概要の発行を待ちたいですが、これまでも荒川区立図書館を利用していた人には、まさに「大きな図書館が荒川区に現れた!」という状態。

3,4階は、中央に大きな書架エリアがあり、その周囲に小さい部屋が配置されているという構造なのですが、この中央の書架エリアが、全体に本棚が並び、更に周囲の壁も本棚になっているので、「本に囲まれている空間」感を強く感じます。それでいて、各段の高さを多くとっているので、圧迫感はありません。棚を細かく見ていっても、各ジャンルの冊数の多さを感じます。特に、「B210 日本史文庫」はやけに多くて、文庫棚の一つの分類でこんなに冊数があることにびっくり。日本の歴史を綿密に調べて作品を創った吉村昭氏の文学館も併設されていることから、日本史の資料は特に充実させているのかもしれません。

棚にある本のうち、荒川図書館から引き継いだ本は、蔵書バーコードが荒川図書館のまま、ゆいの森あらかわができるにあたって新しく購入した資料には、ゆいの森あらかわの蔵書バーコードが貼られています。ジャンルにもよりますが、ゆいの森あらかわバーコードの本はかなり多く、継承前の図書館の冊数を考えても、ゆいの森図書館の設立にあたって多くの本を買い揃えたことが窺えます。

ただ、本が多いにしては棚見出しが少なく、図書館の並べ方に詳しくない人には本が探しにくい面もあります。例えば、スポーツの棚には「783 球技」という見出しが差してあるだけなので、バスケットボール、バレーボール、サッカー、テニス、野球などたくさんの球技があるなか、野球の本が読みたい人は膨大な本が並ぶ棚のなかから野球の本を探すことになります。

本の分類としては、数字3桁+小数点以下1桁を使い、783.1がバスケ、783.2がバレーボール、783.3がハンドボール…と図書館でよく使われている分類をしているので、図書館に詳しい人なら<野球は783.7だから、「783 球技」の範囲の後半を見れば野球の本があるだろう>とわかるでしょう。でも、図書館と他施設を融合して誰にでも使いやすくした施設として、利用者にその知識を求めるのは矛盾しているように思います。

また、棚見出しが小さくてあまり目立たず、本の多さに埋もれてしまっている印象を受けます。見出しを多用してごちゃごちゃした印象になるのを避けたいのかもしれませんが、本が探しづらくなっては図書館としての意味がない。棚見出しをわかりやすい大きさ・色にして、数も増やせば、本が探しやすくなると思います。

§ おしゃべり厳禁!!の図書館とは一味違う

実は今、3階のエスカレーターを囲むカウンター席の北側の1席に座ってこの部分を書いていているのですが、この席にいると映画の音声が聴こえてきます。というのも、図書館に併設されている吉村昭記念文学館のなかに、入口に扉がなく自由に入れる映画上映スペースがあり、吉村昭氏原作の映画を毎日日替わりで上映しているんです。私が今座っている席は、書架の中で最も上映スペースに近い席で、上映時間に利用すると映画の音声が聞こえてきます。

ただ、上映スペースの入口が開放されているとはいえ厚い壁に囲まれた空間なので、セリフがきちんと聞こえてくるとまではならず、音声が漏れ聞こえてくるという程度。これが書架エリアにどういう雰囲気を与えているかというと、「静かにしないといけない!」のような堅い雰囲気がなくなり、例えば誰かと一緒にこの図書館を回ったら、「先日あの本を読んだら面白かった」みたいな会話が自然に出てきそうな雰囲気なんです。もちろん、うるさく騒いだりするのは図書館に限らず迷惑なので、他の公共スペースと同じ程度のマナーは必要です。

最近は図書館の中にカフェを併設したりして、人が賑わう要素を組み込む図書館もありますが、ゆいの森あらかわの雰囲気はそれとは少し違う。ゆいの森あらかわにもカフェ・ド・クリエが入っていますが、そちらは1階の端にあり、カフェのうるささが書架エリアに漏れる造りにはなっていません。それよりも、映画も含めて、本や資料を閲覧したり、勉強をしたりするなかで、自然に出る音への許容度が大きく、利用するのに居心地がいい施設になっていると感じます。

ちなみに、そのカフェも、貸出手続きをする前の本を持ち込めるだけでなく、カフェの中にも図書館の蔵書が展示されていて、気軽に本を手によって読める図書館と、食事やお茶をしてくつろげるカフェのよさが同時に味わえます。ちなみに、蔵書検索で検索した本がカフェの中にある場合は、きちんと「配架:1階カフェ」と表示されます。ただ、こちらのカフェは人気があり、特に土日は激混みでなかなか席が空いていません。平日は比較的空いており、他の荒川区立図書館より長く20時半まで開いているので、カフェ利用をするなら平日がお薦めです。

荒川区立中央図書館(ゆいの森あらかわ) データ

住所東京都荒川区荒川2-50-1 →Google Mapで見る
Tel03-3891-4349
開館時間9:00~20:30
定休日第3木曜(祝日は開館し、翌日休館)
年末年始
最寄駅 都電荒川線 荒川二丁目駅から徒歩3分
都電荒川線 荒川七丁目駅から徒歩5分
京成本線 町屋駅から徒歩8分
東京メトロ千代田線 町屋駅から徒歩9分
都電荒川線 町屋駅前駅から徒歩9分
都電荒川線 荒川区役所前駅から徒歩10分
都電荒川線 荒川一中前駅から徒歩14分
駐輪場建物北側から西側入口手前にかけて駐輪場あり
駐車場地下1階に一般用駐車場10台分、障害者用駐車場2台あり。駐車場への入口は建物東側で、利用可能時間は9:30〜20:30。料金は最初の30分無料、以降30分毎200円。
所蔵資料
図書所蔵数388,636冊(2023/03/31現在、出典『荒川区の図書館 令和5年』)
CD所蔵数12,220点(2023/03/31現在、出典『荒川区の図書館 令和5年』)
カセット所蔵数なし(2023/03/31現在、出典『荒川区の図書館 令和5年』)
DVD所蔵数2,034点(2023/03/31現在、出典『荒川区の図書館 令和5年』)
ビデオ所蔵数なし(2023/03/31現在、出典『荒川区の図書館 令和5年』)
設備
ブックポスト西側入口向かって右の壁面にブックポストあり。東側入口向かって右の壁面にもブックポストあり。開館中の使用も可能。
図書の除菌1階の北側階段向かって右に、書籍消毒機「デンネツ殺菌ブッククリーンCOCOCHI」1台あり
LAN接続館内用無線LAN「YUINOMORI-ARAKAWA」(暗号化なし)の使用可能
飲食設備等
  • 1階の東側にカフェ・ド・クリエあり
  • 授乳室などあるエリアに、子供向け飲料自販機(牛乳パックなど)あり
その他設備
  • 地下1階に喫煙室あり
  • 1階にコインロッカーあり18個あり。100円硬貨使用。お金は使用後に戻ります。