久が原図書館まつり
visit:2012/10/21
毎年10月27日~11月9日は読書週間ということで、図書館はもちろん、書店などでも、この時期はさまざまなイベントが開催されます。2012年の久が原図書館では、読書週間を翌週に迎えた10月20,21日の土日に、「久が原図書館まつり」を開催して、この先の読書週間を盛り上げていました!
イベント内容としては、「図書館クイズ」「リサイクル本フェア」「バリアフリー絵本の展示」「おはなし会」の4つ。最初の3つは2日間共通で、「おはなし会」は土曜が子ども向け、日曜が赤ちゃん向けと内容を違えて開催するかたちでした。「図書館クイズ」は子ども向けと大人向けの両方が用意されていて、年代を問わず楽しめるイベントになっていました。
「図書館クイズ」は、大人向けが5問、子ども向けもたぶん同じくらいだったと思います。図書館入口を入ると、右に職員さんが控えていて、ちょっと興味ある風なそぶりを見せると(笑)、問題用紙を渡してくれます。これがなかなか面白い質問で、ヒントを見ずに解いたら間違えしまった問題があったり(笑)、解くことでこんな資料ががあったのかと知識が増えたり、楽しませていただきました。
例えば3問目。
2番と3番の棚の間を抜けると窓側は地図や旅行のガイドブックコーナーです。2012年夏(7月と8月)久が原図書館所蔵の「るるぶ」と「まっぷる」では、どちらが多く貸し出されたでしょうか。
実際にガイドブックコーナーに行くと、この問題の答えだけでなく、2012年7,8月のガイドブック貸出ランキングが発表されていて、1位を飾ったのは『るるぶ大田区 2010年版』とのこと。地元のガイドブックって、「これ確かにお薦め!」というところもあれば、知らなかったスポットがあったりして、結構楽しいですよね。夏休み期間だから、子ども連れで近場で楽しめるところを探す人もいたのかも。久が原図書館では2冊所蔵しているので(2012/10/25現在)、興味を持った方はぜひ借りてみてはいかがでしょう。
あとは第4問(太田区の情報を載せた雑誌は何でしょう)の答えである「月刊おとなりさん」という雑誌も、このクイズで初めて知りました。しかも、図書館まつり当日に最新だった号の特集は「10月21日京急蒲田駅付近の上下線が全線高架化」と、まさにこの日の出来事を特集していました。そこまで計算していたのでしょうか?!車を使うことが多い方は、高架化でかなり混雑が緩和されて助かりますよね。ちなみに、これで事業が完了したわけではなく、今後は不要になった地上の線路の撤去や側道作りをして、2014(平成26年)度中に事業が完成する予定だそうです。
おはなし会は、私は子どももいないので参加はできませんが、ちょうど私がじどうしつにいるときに奥のおはなしの部屋で赤ちゃん向けおはなし会をしていたので、様子を聞くことはできました。図書館まつり中の特別なおはなし会だったようで、声を聞いて想像する限りでは、赤ちゃんのツボ押しになるような身体遊びみたいなことをやっていたようです。ただ、ツボを触られて嫌がる赤ちゃんもいるので要注意だとも言っていました。
リサイクル本フェアは、2階の1部屋を使って図書館の除籍蔵書を自由にもっていけるイベントで、確か1人10冊までだったと思います(うろ覚えなので、違うかも)。本や雑誌のほかCDもあって、私も1冊いただいてきましたし、持ち帰り用の紙袋も用意してありました。2階にあがるなり、「リサイクルはどこでやってるの?」と職員さんに聞く人もいたしりて、図書館まつりで開催されていた4つのイベントのうち、おそらくリサイクル本フェアが一番人気だったのではないかと思います。
そして、ぜひともお伝えしたいのが、2階のロビーで行っていたバリアフリー絵本展。手触りを楽しめる布絵本や点字の本、障害について書かれた本など、バリアフリーに関連する本がたくさん展示してありました。
布絵本は貸出してくれる図書館も最近増えてきており、布を使って立体的に絵が作られているほか、マジックテープやボタンを使って部品の取り外しができたりするのを活かした絵本。視覚障害者も楽しめるバリアフリー資料として扱っている図書館もあるし、誰もが貸出できる資料として扱っている図書館もあります。このイベントで展示されていた作品は図書館資料ではなく、布絵本作りの活動をしているグループから特別にお借りしたものでしたが、これがもう、イベント用にお借りしたものだけあって、図書館貸出に使われるもの以上に凝った作品で、観ているだけで楽しくなってきちゃう!
例えば、いろんな童謡を布であらわした分厚い作品があって、童謡「アイアイ」を布作品にしたページでは、テナガザルの手足の先に穴が開いてて、絵本のページに縫い付けたヤシの木にボタンがついていて、好きな木から好きなポーズでぶら下げて遊べるようになっていたり、童謡「ふしぎなポケット」のページにはファスナーの付いたポケットが縫い付けてあって、それを開くと布で作ったビスケットがたくさん入っていたり。ほかにも折り本状になっていて、長い線路が続いているかたちの作品があったりして、造りをじっくり観察してしまいました。
あと、もう一つ、読んでよかったと思える本に出会えました。『手話で生きたい』という本で、デフアーティスト(デフ=ろう(耳が聞こえない)の意味)の乘富秀人さんの著作。乘富さんの作品とともに、ろう者としての辛い経験を文書にまとめているのですが、私は恥ずかしながら手話が禁じられていた時代がある、しかもそんなに昔のことではなく、いまだに手話で教育しているろう学校が少ないまま(本が発行されたのは2008年なので少しは状況がよくなっているかもしれないけど)だという事実を初めて知りました。
何でも、口を読むことで相手の話を聞き自分も口で話す口語法が手話より優れている、手話はろう者同士しかわからないけど口語法ならろう者以外の人とコミュニケーションが取れるんだから手話法を捨てて口語法を身に着けるべき、という考えが主流になった時代があったそうで、1933年には国がろう学校に手話法を禁止、口語法での教育を強制したそうです。著者が通学していた頃も、生徒の親が学校の授業に付き添いで参加していて、というのも口語法教育を家庭でもやりなさいということで、子どもは学校でも家庭でも口語法を強要されて本当に辛かったそうです。文部省が手話の必要性を認めたのが1993年というから、本当につい最近まで手話で話す自由を奪われていたんですね。
そして、そんな体験をしてきた乘富さんが、渡仏して絵を学び、画家の道へと進む。後半のフランスのホテルでの経験などは、読んでて拍手したくなってしまうくらい。他人とのコミュニケーションの取り方って、本当に面白いものだなと思えるので、機会があったらぜひ読んでみてください!
と、図書館まつりをきっかけに、知らなかった本や雑誌を知ることができ、とても楽しかったです。最近はネットでの検索・予約が普及したせいで、図書館に行っても予約した本を貸出・返却するだけという人もいると思うのですが、図書館の中を回ると本当にいろんな本に出会えるんですよね。ちなみに、イベントアンケートを投稿したときに、職員さんが「たぶん来年もやるので、ぜひまた来てください」とおっしゃったので、「来年と言わず、数か月に1度でも」と言ったら、それは準備が大変だとのことでした(笑)。イベントはそう頻繁でなくても、通常の特集展示でもいろんな本を紹介してくれたりしていますので、図書館内ではぜひアンテナを広く張って、多くの本と出会いましょう!