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府中市立中央図書館自動書庫見学ツアー

―2011年5月29日のイベント
visit:2011/05/29

府中市立中央図書館を利用していたときに、「自動書庫見学ツアー」というポスターをみかけて、ぜひ見てみようと参加してきました。このツアー、先月開催分のポスターも見たことがあるので、たぶん月に1度のペースで開催しているのではないかと思います。申込みのとき、午前(確か11時からの回)と午後(14時からの回)とどちらにするかと聞かれたので、毎月同じ日に2回にわけて行っているかたちのようです。

私は、少し古い本を読みたがるせいか、府中市立中央図書館で読みたい本を検索してみると「自動書庫」と出ることが多いんです。その度に思うのですが、資料の場所を示すだけなら「閉架」とか「書庫」と表示すればいいものを、わざわざ「自動書庫」と書いているところに、「うちの書庫は自動なんだぜ!」という宣伝魂を感じます(笑)。その自動書庫が実際に見られるツアーとあれば、ここは宣伝に乗せられて参加してみようかと。

私が参加したのは、2011(平成23)年5月29日の14時の回。14時少し前に、3階のカウンターに行くと、見学ツアーの控え室である、新聞・雑誌コーナー横のボランティア活動室に案内されます。参加者は私も含めて7名。4人家族1組と一人での参加者が3人という組み合わせでした。この7名を職員さん2人が案内してくれるという形です。

§ 予約本コーナー

自動書庫の見学を売りにしているものの、ツアー自体は図書館全体を案内してくれる構成でした。まずは、児童コーナーの説明をしてから、その隣にある予約本コーナーへ。予約本コーナーは、予約した本を利用者自らが棚から探して貸出手続する仕組みです。利用者にとって探す手間が少し増えるかもしれませんが、職員さんの手を介さずに予約受取できるので、人目が気になるような悩み事に関する本なども、気兼ねなく予約できます。

府中市立中央図書館で予約ができるのは、府中市在住・在勤・在学者のみ。私以外の大人の参加者は、この条件に適っている人ばかりで、皆さん予約本コーナーを実際に利用しているとのことでしたが、私は多摩市在住・在勤で予約ができないため、予約本コーナーに入るのは今回が初めてでした。また、児童向け資料とCD・DVD等の視聴覚資料、他の自治体からの借りた資料の場合は、予約してもカウンター預かりとなるので、ご家族参加のお子さん2名も、予約本コーナーを利用するのは今回が初めて。というわけで、初めての人でもわかるような説明をしていただきました。

仕組みとしては、予約本コーナー入って左の機械に自分の利用者カードを読み込ませると、本の場所が示されたレシートが印刷され、それと同時に本がある棚板のランプが光ります。それをもとにして本を取り出し、入口右脇の自動貸出機で貸出手続すればOK。複数の人が一度に予約本コーナーに入っても、最初の人は紫のランプ、次の人は黄色のランプ…といった具合に、違う色のランプが光るので、自分の色で探せば大丈夫です。

万が一、他人が予約した本を間違えて貸出手続しようとしても、ちゃんとメッセージが出て貸出手続はできないようになっているそうです。現に、見学ツアーのときに、誰かが忘れてしまった利用者カードが自動貸出機に差しっぱなしになっていたのですが、その状態でツアー説明用の予約資料を貸出機に置いたところ、貸し出しできないというメッセージが出ました。

この予約本コーナーは、複数の予約本が届いている場合でも、それが一箇所にまとまっていなくて、棚のあちこちに置いてあるんですね。同じ利用者の予約本が一箇所にまとまってくれていたらいいのに、と思っている人もいると思うのですが、この棚は日本十進分類法の、0類:総記、1類:哲学、2類:歴史…という分類にしたがって置いているのだそうです。もし予約本コーナーの棚が書籍のICタグをうまく読み込まなくて、目で資料を探さなければいけなくなったときにすぐにさがせるよう、そうした置き方をしているとのことでした。

さて、私、今、「もし予約本コーナーの棚が書籍のICタグをうまく読み込まなくて」と書きました。そうなんです、この予約資料の棚は、自動貸出機みたいに、置かれた本のICタグを読み込むんです。予約本コーナーだけでなく、本日返却された本の棚、特集コーナーや新着本の棚は、棚板が茶色とグレーの線がうねうねしている模様の棚で、この棚は置かれている本のICタグを読み取るんです。それによって、一般書架のあるべき棚に置かれていない本も、どこにあるのか正確にわかるようになっているのです。

例えば、『ドラッカーの講義(1991-2003)』という本が読みたいとします。この本は、普段は一般書架の304(社会科学の論文集・講演集)の棚に置かれています。ただ、このときたまたま、特集コーナーでドラッカーの特集をしていて、この本が特集コーナーにあるとします。ここで、検索機を使って書名で検索したとき、「304」という“いつもだったらあるはずの場所”が表示て、そこをどんなに探しても絶対に見つからないですよね。「ちょっとの差で誰かが持っていっちゃたのかなあ」とあきらめることになる。でも、検索機が「特集棚のC-2にあります」と“今、この瞬間にその本がある場所”を教えてくれたら、見逃すことなくその本に辿りつけますよね。

府中市立中央図書館では、予約本コーナー・本日返却された本・特集コーナー・新着本など、一時的に本が置かれる棚を、ICタグ読取棚にしていることで、上のような場所管理ができるようになっているのです。利用者が今読んでいる本、手にしている本はさすがに無理ですが、棚に置かれている本は一時的な置き場所にあろうとも、どこにあるかがほぼ確実にわかるといえる仕組みです。

見学ツアーでこの説明を聞いて、後日私は「あえて一時的な場所に置かれている本を検索する」という実験をしてみました。「本日返却された本コーナー」にある本を検索すると、確かに「743.5」みたいな請求記号ではなく、「返却2C-3」(本日返却された本コーナーの2列目の棚のC列の3段目)といった具合に、本のある場所が表示されます。そこで更に、返却2C-3にある本を返却2D-1に移してから検索してみると、リアルタイムには反映されないけど、少し経つと移動先の場所が反映されます。何度か試したところ、たぶん1分おきくらいにICタグ読み込みして、それを反映しているようです。1分ごとに最新データを取って反映しているなんてすごいですね。

長くなりましたが、予約本コーナーの本が、予約者ごとにまとまっていなくて、本の内容の分類でわけられているのは、このような場所管理の元となるICタグを万が一読み込めなかったときのため、ということ。そのために、複数の予約本が届いたときには、バラバラに置かれた本を1冊1冊探すことになりますが、レシートと棚のランプで探せるから、それほど困らないと思います。

ちなみに、人気本だとよく起こるケースですが、AさんとBさんが中央図書館を受取館にして『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を予約して、同時に届いたとします。すると、予約本コーナーに『もしドラ』がAさんの分とBさんの分と2冊あることになりますよね。データ上は、こっちの『もしドラ』がAさん用、そっちの『もしドラ』がBさん用と決まっていて、予約資料コーナーでも間違えないようになるべく違う場所に置くようにしているそうですが、もしAさんが間違ってBさん用の『もしドラ』を取っちゃったとしても、AさんがBさん用の『もしドラ』を自動貸出機に載せた際に、機械の方で「Bさん用の『もしドラ』をAさん用に、Aさん用の『もしドラ』をBさん用に入れ替える」という処理をしてるので大丈夫だそうです。

§ 返却ボックス

自動書庫見学ツアーの体験記なのに、既に予約本コーナーの話だけで相当長くなっていますが(笑)、ツアーの行程では、予約本コーナーの案内の後、3階書架、4階書架、5階学習室と回って、その後いよいよ地下へ。ついに、自動書庫かと思いきや、その前に返却ボックスがベルトに載せられてやってくるところを先に見せてもらいました。

府中市立中央図書館は、建物の正面入口の右側に返却ポストがありますが、ポストの下に置かれているボックスがいっぱいになると、自動的にボックスを入れ替えて、いっぱいになったボックスは地下に下りてきます。ボックスには穴があいていて、そこを赤外線センサーが通るようになっており、赤外線が向こう側まで通らなくなったら、本がセンサーを邪魔している、つまり返却ボックスがいっぱいになったと判断し、自動的に空のボックスと入れ替えるとのこと。

そう言われてみれば、返却ポストの上に「投入可」「投入不可」のランプがついていて、「投入可」の緑ランプがついているときでないと、ポストに本を入れられないんです。「投入不可」って何事かと思っていましたが、返却ボックスの入替作業を行っているときが、投入できないときなんですね。投入不可の瞬間に出会ったことはないのですが、耳をすますとボックスが入れ替えられている音が聞こえるかも。

説明によると、この返却ボックス自動入替システムや、後に案内してもらった自動書庫は、府中市立中央図書館が日本初の導入なのだそうです。こういう新しいシステムは、得てして、最初は何かと不具合があったり、実際に利用してみて初めてわかったことがあったりするもの。初めての導入に踏み切った府中市立中央図書館は、その後の改良にも一役買っていると思います。

§ 自動書庫見学ツアー

さて、いよいよ待望の自動書庫。とにかく大きい!高さは地下1階・地下2階をぶち抜きにした高さで、広さも奥がどこまで続いているのかわからないくらい、もうデカい!の一言です。その空間に、本の入ったボックスがずらっと並んでいて、その真ん中をボックスを入出庫するクレーンが高速で動いています。

自動書庫では、一般書架みたいに内容で資料を分類してはいないんですね。Amazonの倉庫などでの採用が有名な、「フリーロケーション」という方式で、空いているボックスに資料を入れているだけなんです。府中市中央図書館の自動書庫の場合は、書籍などの普通サイズの資料、CDなどの小さい資料、大型本などの大きい資料、と大きさによってボックス使い分けているだけで、大きささえ一緒ならば、小説も、難しい専門書も、何でも一緒に入れてしまいます。

私、この見学ツアーの日に、『12人の浮かれる男』という本を中央図書館で借りたのですが、この本も自動書庫で保管している本だったんですね。この本を読みたい場合、利用者である私は、検索機で出庫依頼票を印刷して、カウンターに持っていきます。すると、職員さんはカウンターの裏に回って、自動書庫システムで出庫依頼書のバーコードをスキャンします。自動書庫システムの方では、『12人の浮かれる男』がどのボックスに入っているかというデータを持っているので、そのボックスごとそのフロアに運んできます。ボックスが届いたら、自動書庫システムが、「この中に『12人の浮かれる男』が入っているはずだよ」と表示してくるので、職員さんが間違いなくその本を取り出して、ICタグ読取パッドにかざします。それによって、自動書庫システムの方でも『12人の浮かれる男』が書庫から取りだされたという処理をして、その後利用者の手に渡されます。

私が読み終わって返した後も、元々『12人の浮かれる男』が入っていたボックスに戻す必要はないんですね。大きささえ合っていれば、そのときたまたま手元に来ているボックスに入れてしまってOK。戻す際にも、ICタグ読取バッドにかざしてから入れると、自動書庫システムのほうが、『12人の浮かれる男』はこのボックスに戻したということを覚えてくれます。また、次の誰かが『12人の浮かれる男』を読みたい場合は、このボックスを持ってくれば見つかる、というわけです。

システムを説明するとこんな感じなのですが、自動書庫の様子を実際に見ると、暗い中をボックスを出し入れするクレーンが、すごい速さで動いているのです。シャーっと横移動して、ボックスを出したり入れたりして、またシャーっと横移動して、ボックスを出したり入れたりして…としているのですが、横移動が結構速い。見学する場所が、ちょうど横移動が迫ってくる真正面だったので余計早く感じたのかもしれないけど、時速15kmくらいはありそう。人や自転車の速さではなく、自動車の速さという感じです。黙々と素早い仕事をする、デキるヤツですよ(笑)。

この後は、1階にあがって、返却ポストに行って、返却ポストに本が入れられるところを裏側から見たりした後、控え室に戻って終了。当初50分の予定でしたが、戻ってみたら1時間ちょっとくらい経っていました。私としては、予定時間をもう少し長くしてもいいので、もう少し長く自動書庫の動く様子を見ていたかった(笑)。ただ、お子さん2人は中盤で飽きていたし、1時間前後くらいがちょうどいいのかもしれません。

この自動書庫見学ツアー、府中市立中央図書館利用者なら、ぜひ参加してみてください。自動書庫を見られるだけでなく、返却本・特集本の棚がICタグ読取するなんて話も、私は参加するまで知りませんでしたし、利用する上で知っておくと便利なことも知ることができます。少人数なので、質問もしやすいですし。黙々と仕事をこなす自動書庫の格好いい姿に惚れ惚れしましょう(笑)!