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閉館前の中野区立東中野図書館

中野区立東中野図書館は2021年10月31日を最後に閉館しました。その後、本町図書館と東中野図書館を統合した中野東図書館が2022年2月1日に開館しました。

以下は、閉館前の中野区立東中野図書館の訪問記です。

閉館前の中野区立東中野図書館 訪問記

last visit:2006/04/30
§ 図書館の場所

東中野図書館は東中野駅の近くにあります。道がくねっている住宅地という立地で、「駅近図書館」というよりは「住まいに近い図書館」という雰囲気。東中野は、北側線路沿いや東口から延びる道にはお店が並んでいますが、そこから一歩路地へ入っただけで静かな住宅地があるんですね。私は、趣味の集まりが東中野であるのでときどき来るのですが、便利さと静けさが共存していて暮らしやすそうと思いながら歩いています。

§ 図書館内の様子

東中野図書館は東中野保育園との併設で、1階が保育園、2,3階が図書館になっています。忙しい親御さんには、保育園と併設している図書館は利用しやすくていいですね。

保育園があるからか、図書館へ向かう1階の廊下も絵が壁に貼ってあります。といっても、コピーを切り貼りした絵なんですが。せっかくだから園児たちの絵などを飾ったりすればもっとにぎやかになるんじゃないかな。

2階が児童コーナー、AV資料、雑誌、小説、家事関連本。その他の一般図書は3階に置いてあります。

階段で2階に上がってすぐ左には除籍蔵書のリサイクル本コーナーもありますね。毎月初めの開館日に補充するとのことで、月末に行ったときには1冊もありませんでした。お目当ての方は、月初めにチェックした方がいいですね。

階段からみて左にはCDとカセットがあります。試聴機もありますね。

そのさらに奥が児童コーナーです。児童コーナーの入口というか、AV資料コーナーの横に可愛い絵が飾ってあり、これは韓国の絵本作家イ・オクベ氏が寄贈した絵だそうです。ちゃんと「東中野図書館」という宛名が書いてあります。

絵本は、靴脱ぎスペースを囲む棚に、日本人作家の作品と外国人作家の作品を分けたうえで、絵を描いた人の姓名五十音順に並んでいます。ただ、クリスマスの絵本と汽車の絵本だけは、作家順とは別に抜き出してまとめてあります。1階に保育園があることもあってか靴脱ぎスペースも広く、自由に絵本を広げて読むことができます。

児童読み物も、日本人作家の作品と外国人作家の作品を分けたうえで、著者姓名五十音順に並んでいます。児童用の丸い大きなテーブルのそばの窓際にある棚は、よくみると側面がカンガルーになっていたりして、見えないところも可愛らしい(隣の棚などに隠れてカンガルーがあまり見えないんです 笑)。漫画は児童エリアにも中高生コーナーにもあり、こうした場合は内容によって置く場所をわけていることが多いのですが、東中野図書館の児童エリアの漫画は、手塚治虫全集や『徳川家』など大人でも読み応えある漫画が並んでいます。

日本の小説とエッセイは一緒になって、著者姓名の五十音順に並んでいます。著者名でまとまっていても、小説は「913.6」、エッセイは「914.6」と分類ラベルが違うので、今は小説ではなくエッセイが読みたいという場合は、ラベルを手掛かりに選ぶことができます。また、アンソロジーなど複数の著者による小説・随筆集は、五十音の並びの最後にまとめて置いてあります。外国の小説は、「中国文学」「英米文学」「ドイツ文学」等の国・地域別に分けたうえで、著者姓名の五十音順に並んでいます。

§ 3階の様子

3階には、書架エリア内に机席があるほか、別室になっている閲覧席、パソコン専用席があり、調べものなどをじっくりするのに適しています。パソコン専用席には普段は椅子を置いておらず、カウンターに利用を申し込むと椅子を準備してもらえるという仕組みです。

中野区立図書館では全館でテーマを決めた個性づくりコーナーを設置しており、東中野図書館では「法務情報コーナー」という名前のもとに、3階書架の手前側で毎回展示をしています。法務に関する展示というのは固定で、あるときは「暮らしと法律」、あるときは「裁判員制度」といったように、期間ごとに中身を入れかれているので、東中野図書館に来るたびにこのコーナーを利用していたらかなりの法律通になるかも。

書架入口入った正面側で現在の企画展示を行っているほか、棚の裏に過去の展示本がまとめられているのですが、裏の過去展示本はやや本を探しづらくしている気もします。というのも、時系列に過去の展示ごとにまとめているので、例えば労働法務に関する本は、「第7回 働く人々の法律」「第15回 これは、パワハラですか」と2ヶ所に分かれている。更に一般書架にも労働法務の本があるので、同じテーマの本が書架内に点在してしまっています。2つの分類をまたぐような本が2ヶ所に分かれてしまうのは仕方がない面もありますが、同じジャンルの本をわざわざ点在させるくらいなら、過去の展示本リストを公開して本自体は通常分類に応じて配架するほうがいいように思います。

その左奥に絵本コーナーで、そこから右奥の中高生コーナー・一般書架に向かってはっきりとした境がなく段々と大人向けの棚に連続している感じがします。こういうのいいですね。眺めやすい。

私はこのサイトを初めてから児童コーナーや中高生コーナーに足を踏み入れるようになったのですが、回数をこなしても何だか『私が入っていいのかな』という気持ちがどこかにある。でも、大人になってから見る児童書は、子供時代に読んでも気づかないような工夫に気がついたりして、なかなか面白いのですよ。で、大人の皆さんにもたまには児童コーナーを眺めることをお薦めしたいのですが、児童コーナーとそうでないコーナーが明確に分かれているより、こういった図書館の方が入りやすいですね。

小説の棚は全集も単行本もまとめて並べてあります。全集を別棚にまとめている図書館もあって、そういう場合辞書などの参考図書の近くに置かれていることが多いのですが、そう並べられると「小説」というより「資料」って感じで気軽に手に取りづらいんですよね。その点、単行本と一緒の並びで置くのは、手に取りやすくていいです。

3階の階段を上がった正面にはレファレンスコーナーがあります。レファレンスコーナーは、区立図書館だとまだまだあまり利用されてないことが多いですね。かくいう私も数回しか利用したことありません。せっかくのサービスですから、利用者の側がもっと使いこなしていかないといけませんね。

レファレンスカウンターの右に続く書架の一画にはパソコン利用席もありますね。椅子は普段は置いておらず、利用したいときにカウンターに申し出ると椅子を出してくれるそうです。3階には別室で閲覧室があるので、パソコン利用でなく机を利用した場合は閲覧席を利用することになりますね。

書架は全体的にシリーズものが多い印象を受けました。特に、教育や民俗学の棚などが。シリーズものは、それを揃えるだけでそのジャンル全体をある程度網羅できるという利点もありますが、棚の満たし方としては手抜きという気もしないでもない。でも、もちろんシリーズもの以外にも図書はあるので、利用するのに困るほどではありませんが。

住宅地の中という場所や保育園との併設という状態からしても、近くにお住まいの方のための図書館ですね。東中野図書館は民間の方が作った友の会などもあるようで、地元の方々に愛されているという気がします。幸せな図書館ですね。