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東葛西PRESS 夏の想い出はきっと蚊帳の外号「<ひよこだより>とコラボ いつも何度でも、の本&荒井良二さんワークショップ顛末記」

―図書館だより 2009年6月号
visit:2009/06/19

2009年6月10日発行の東葛西PRESSは、「夏の想い出はきっと蚊帳の外号」。仲間外れの思い出ではなく、文字通り蚊帳の外の、アウトドアの思い出でも欲しいものですね。あ、でも、蚊帳の中ならぬ、ベッドの中での甘い思い出ならいいか(笑)。そんな今号の特集テーマは「<ひよこだより>とコラボ いつも何度でも、の本&荒井良二さんワークショップ顛末記」です。

「ひよこだより」というのは、東葛西図書館発行の児童向け図書館だより。この「ひよこだより」、児童向けにも関わらずかなり活字密度高いという、稀有な児童向け図書館だよりなんです。中のコラムも大人が読んでも面白いものがあったりして、私も東葛西図書館に行った際にはいただいています。

§ いつも何度でも、の本

そんな「ひよこだより」のコラムに素晴らしい文章があり、おそらく東葛西PRESSのご担当者さんが「これが児童の保護者の目にしか触れないのはもったいない!」と思って、今号で取り上げたのではないかと思うのですが、私自身もこれが東葛西図書館利用者さんの目にしか触れないのはもったいない!と思うので、転載の許可をいただいてきました。そのコラム全文、ぜひ読んでください。

【おとうさん、おかあさんへ ~なんどでもおなじ本を~】

いつも、ひがしかさい図書館をご利用いただきありがとうございます。
とりわけ、ちいさなお子さまといっしょに、たくさん本を借りていかれる姿をみますと、ほほえましくうれしく感じること、しばしばです。
そうしていて、すこし気になるのは、お子さまがおなじ本をまた選ぼうとするのをとめて、別のものにしなさい、ということで、ちょっとひと悶着、というのをみかけることです。
よりいろいろな本を、読んでもらいたい、という気持ちは、とてもよくわかります。
ちがうものに、とうながしてみて、それでべつの本をえらばれるようであれば、それはそれで、また新しいものにであいたいということでしょう。
けれどおなじものを選ぶ、ということは、とても気にいって、自分にとって必要だから選んでいるのだと思うのです。その本のなかで味わえる世界を何回でも味わいたいのでは・・・?
あるとき、よかれと思って、おとうさま、おかあさまが、べつの本にさしかえて借りていかれたのを、ちいさなお子さまが「あれ(がいい)、あれ」と、とても悲しそうに泣きながらでていかれるのを、胸の痛む思いで見送ったことがあります。
どうぞ、なんどでもおなじ本を借りていかれてください。
そうしていると、あるところで満足して別の本にも、手をのばしていくことと思います。あまりにたびたび、同じ本を選ぶのであれば、いつでも読めるように同じものを、おうちでご用意されるとよいかもしれませんね。

どうですか。私、このコラム読んで、自分の読書態度、いや読書に限らずいろんなことを見直してしまいました。自分の向上につながると信じて、自分自身にとって未知のものばかりを求めることに熱心になりすぎて、好きなものをじっくり味わう楽しみを失ってはいないかと。泣くほど何度も読みたい本があるなんて、羨ましいくらい。子どもがそんな素敵な本に出会えた幸せは、大人が守ってあげないといけないですね。

では、大人は?ということで、続く記事では東葛西図書館の職員さんに、ご自分の「いつも何度でもの本」を挙げてもらった結果をまとめてありますが、当たり前ながら回答は様々。「ちびくろサンボ」「やさしいライオン」といった絵本から、「人間失格」「われはロボット」「銀河鉄道の夜」「Dの複合」などの文学作品、はたまた占い本や料理本を挙げた方もいらっしゃいます。

挙げた理由も、「心が洗われる」「ホッとする」のように明確なものもあれば、「つい」「たまたま」というものもあり、後者は無意識のうちにその本の世界観などを求めているのかもしれませんね。アンケート回答を踏まえての職員さんの会談記事では、自分が間違った方向に行きそうなときの軌道修正とか、不幸な気分になったときにより不幸な本を読んで「この人より自分はまし」と思う、などのパターンも話題にのぼっています。

思えば私も、会社勤めをしていた頃は、高村薫の『照柿』を繰り返し読んでました。高村さんの小説って物欲を捨て去りたくなるものだから、読み終わると高村さんのその小説自体も処分してしまうんです、私。だから、この『照柿』なんて、買う→読む→売る→また読みたくなる→買う→読む→売る、、、の繰り返し(笑)。私、高村さんの印税には、かなり貢献しているなあ。この小説は、主人公の刑事・合田雄一郎が、警察社会にどうにか順応して過ごしていたところから、それに耐え切れなくなったのか、これまでの道を逸脱していく話なんです。会社勤めしていた頃に何度も読んでいたこの本、自分で会社を始めてからは確か一度も読んでいないんですよね。真っ当な勤め人生活に背中を向けたくなったときに、この小説読んで疑似体験していたんだろうなあ。今は現実が真っ当でなくなったので(?笑)、必要なくなったのかも。

さて、あなたの「いつでも何度でも、の本」はなんですか。

§ 荒井良二さんワークショップ顛末記

もう一つの特集企画は、ひよこだより2009年2月号号外の絵本作家・荒井良二さんインタビューの裏話。2008年11月16日に東葛西図書館で荒井さんのワークショップが行われたのですが、その際に職員さんが荒井さんにインタビューしたものをひよこだより号外として発行したんですね。それを今回、東葛西PRESSが荒井さんのインタビュアーにインタビュー。

記事によると、荒井さんのワークショップ開催のきっかけは、職員さんが来館者さんから他の場所での荒井さんのワークショップのことを知り、保護者としてご自分のお子さんと一緒に参加したことなのだそうです。参加した子ども達が皆楽しそうで、こんなイベントを東葛西図書館でも開けたらいいなと。それを実現させちゃうんですから、すごいですよね。当日は夢のような一日で、インタビュアーさん曰く、「イベント後に出た荒井さんの本に、東葛西に関する記載があるのを見て、「夢じゃなかったんだ」と(笑)。」とのこと。保護者として参加したワークショップと同じように、東葛西図書館でのワークショップも子ども達が楽しそうでよかった、とおっしゃる成果を収められたのは、荒井さんのみならず東葛西図書館職員さんのご尽力あってこそでしょう。

インタビューの内容は、ワークショップから「ひよこだより号外」へ。この号外は、いつもの「ひよこだより」と違って漢字にふりがなが振られておらず、児童向けというよりはむしろ大人向け。そこには、荒井さんのことを大人も含めた多くの方に知って欲しいという思いが込められているのだそうです。それに加えて、資料や設備や企画が充実していても、それだけでは「いい図書館」にはならず、図書館は人で動いているということを感じていただきたいという下心もあったとのこと(笑)。

このインタビュアーさんの最後の言葉、「なんでもとことんやらなきゃ東葛西じゃない!」っていいなあ。東葛西図書館の2009年7月の講座、「楽しくマクロビオティック!~クッキング編~」なんて、図書館を飛び出して、お隣の東葛西小学校家庭科室での講座なんです。これぞ東葛西図書館(笑)!

そんな思いも込めて、インタビュアーさんへのインタビューの次ページには、私も文章を寄稿させていただきました。「ひよこだより号外」の紹介記事はいつかサイト内に書くということをブログで宣言していたものの、いつまでも書けずにいたところ、東葛西PRESSのご担当者さんに寄稿のお話をいただいて、尻を叩かれた感もありますが(笑)。でもホント、そう宣言していたくらい、ご紹介したい号外なんです。とりあえず原稿を今号の東葛西PRESSに載せていただいたので、サイト内への掲載は今号が最新号でなくなってから掲載する予定です。

§ その他の記事も読みどころ満載

そんな特集記事に負けず劣らず、その他の記事も読み応えたっぷり。29歳男子が雑誌を紹介するコーナーでは、「Tarzan」と「日経ヘルス」を取り上げていて、コーナー担当のカッキーは「Tarzan」でカッコイイ腹筋になって、新たな出会いを狙っているそうです(笑)。私、カッキーとは一度だけちらっとご挨拶させていただいたことがあるのですが、私の印象では伊坂幸太郎っぽい方なんですよね、カッキーって。伊坂幸太郎の作品、ではなく、伊坂幸太郎自身。伊坂さんと割れた筋肉って、どうも結びつかないんですけど…(笑)。カッキーさん、割れた腹筋で、私をぎゃふんと言わせてください(笑)。

「ひがじろうのジジ放談スペシャル」はシンクロニシティの話。偶然の一致を単なる偶然とみなすか、「何かある」と思うかは人それぞれだと思いますが、この筆者の「図書館の持つエネルギー」論には、スピリチュアルなものを比較的信じない方の私にもうなずけるものが。図書館の所蔵物って、確かに一つ一つが関係者の情熱の元に作られたものだもんなあ。この情熱を合わせたら、ロケットの1つや2つ飛ばせそうだし(笑)。

「ヨギーニ者Xの献身的語句悪非童日記」は、一人の職員さんの6日間分の日記。図書館休館日の日記が特に興味深い。休館日を利用しての配置替えとか、イベントのための打ち合わせとか、ヨギーニ者Xさん曰く「高校の文化祭の前日」のような雰囲気って、実際に見たことないけど何か目に浮かぶなあ。図書館利用者としては、休館日後の変更点探しなんて面白かもしれません(笑)。

そして最終ページには、これぞ力作、東葛西PRESS特製クロスワードパズルです。しかも、「ほぼ芥川賞・直木賞の小説」というテーマにのっとったクロスワードで、これって作るのかなり大変だったのでは。濁音・半濁音は無視してねというお断り付きですが、東葛西PRESS読者さん、それくらいはどうかご容赦を(笑)。ちなみに私、何も見ずに埋められたのが、34マス中28マス。両賞受賞作はかなり把握しているという方なら、全マス埋められるかも。

私のように自力で全て解けない人のために、、、というわけではないと思いますが、東葛西図書館2階の中央の階段の北(公園に面している側)にあるミニ特集コーナーでは、2009年6月12日から「芥川賞・直木賞受賞作・ノミネート作品」を展示しています。クロスワードのヒントをもらうだけでなく、解いているうちに読みたくなった本も借りることができるかもしれないので、ぜひミニ特集コーナーもご覧くださいね。