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世田谷区立上北沢図書館

世田谷区立上北沢図書館 訪問記

last visit:2016/03/15

世田谷区立上北沢図書館は、上北沢駅近くにある落ち着いた雰囲気の図書館。特色コーナーとして「心の健康 体の健康」コーナーを設置しているほか、上北沢ゆかりの社会運動家・賀川豊彦氏のコーナーもあります。

§ 図書館の場所

上北沢図書館は京王線上北沢駅から3分ほどの場所にある上北沢区民センターの地下にあります。上北沢駅は各駅停車しか止まらない駅で、町の様子も落ち着いた雰囲気です。上北沢区民センター1階には喫茶店「kamikita」もあるので、図書館で本を借りて喫茶店で読書するのもいい。この「kamikita」ではジャズライブなどを定期的に開催しており、単なる「区民センター内の喫茶施設」にとどまらないカフェスポットです。

§ 図書館内の様子

区民センターは上から見てコの字型の建物で、コの字の真ん中が地下への階段になっており、そこから地下にある上北沢図書館へ直接入れるようになっています。階段の昇り降りが困難な方は、建物1階からエレベーター・階段で地下の図書館フロアへ行くこともできます。

図書館内の配置は、地下の入口から入って正面やや左にカウンターがあり、正面から右へかけて児童コーナー、カウンターから左へ曲がると一般書架です。但し、一般書架のうち、上北沢図書館の特色コーナーである「心の健康 体の健康」コーナーと、家事関連本などを集めた「暮らしのコーナー」は、地下入口入って右にあります。また、新聞は地下入口入ってすぐ左にまとまっていますが、雑誌は内容によってわけており、女性誌や暮らし関連の雑誌は「暮らしのコーナー」に、それ以外の雑誌は一般書架窓際の「コ」の字の内側に面している辺りにあります。

一般書架が2ヶ所に分かれているところなどはややわかりにくいですが、一般書架、暮らしのコーナー、雑誌コーナー、それぞれに座席があるので、本棚で読みたい本を見つけたら近くの座席を見つけて読むという動きをしやすい面もあり、のんびりと読書を楽しみたくなる図書館です。

§ 児童コーナー

児童コーナーは、カウンターに近い辺りに児童読み物があり、その奥にちしきの本、更に奥に絵本・紙芝居があるという配置になっています。この児童コーナーは、見出しが大きくて本が探しやすいです。ちしきの本のでは、「38 伝統・祭り・衣食住」の見出しに盆踊りやおたふく面のイラストを入れたり、「44 宇宙」の見出しに惑星や天体望遠鏡のイラストを入れたりしているし、絵を描いた人の頭文字(「あ」など)が書かれた絵本棚の見出しも全てにイラストが添えてあって、可愛らしいです。

絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、絵を描いた人の苗字の頭文字で分類しています。児童読み物は、内容によって「やさしいものがたり(主に小学校低学年向け)」「物語・ものがたり」「じっくり読みたい物語(主に小学校高学年から中高生向け)の3つに分けた上で、日本人作家と外国人作家を交互にして、著者姓名の五十音順に並んでいます。交互というのは、まず苗字が「あ」で始まる日本人作家の本が並び、次に苗字が「ア」で始まる外国人作家の本が並び、その次に苗字が「い」で始まる日本人作家、「イ」で始まる外国人作家の本、苗字が「う」で始まる日本人作家…といったかたちの並び順です。

紙芝居も、「赤ちゃん向け(0・1・2歳児程度」「2・3歳児程度向け」といった年齢別分類、「こわいはなし」「のりもの・こうつうあんぜん」といった内容別分類をしているほか、一般的なおはなしの紙芝居は「ものがたり(ちょっと短め)」「ものがたり(ちょっと長め)」と全体の長さでの分類もしてくれているので、お子さんの集中力によって選びやすいです。紙芝居分類のなかには、「むかしばなし(せたがや)」というものもあり、大人の私もどんな話なのか知りたいです。

上北沢図書館の児童エリアでぜひ紹介したいのが、絵本コーナーの壁に掲示されている「本を読んで旅にでよう!」という企画。これがなかなか壮大な企画で、まずは16館ある世田谷区の図書館巡りを模して16冊の本の読書記録を書ける冊子を配布しています。本を1冊読んで読書記録を書くと図書館地図の1館を塗りつぶすようになっているのですが、16冊分の読書記録はこの旅の序章にしかすぎません。

第1巻の世田谷区図書館巡りが終わると、第2巻が23区、第3巻が多摩、第4巻が東日本、第5巻が西日本、第6巻がアジア、第7巻がヨーロッパ、第8巻がアフリカと、全8巻で世界中を旅します。それが、「本を読んで旅にでよう!」の全貌です。東京の図書館巡りをしている私も驚きの、全世界を読書で制覇しようという上北沢図書館の企画。これを壮大と呼ばずして何と呼べばいいでしょう。

図書館内の「本を読んで旅にでよう!」コーナーには地図のかたちで世田谷区・23区・多摩…と各巻が示されており、参加者がどの位置まで進んでいるかを、「S・Aさん 小学3年生」などと書かれた折り紙の子どもで示しています。読書ラリーの用紙などで自分の読書履歴が確認できるだけでなく、図書館にあるマップ上で自分の分身が旅していくというのは楽しみが増しますね。上北沢図書館をご利用のお子さんは、ぜひ本の旅に参加してみてください。

§ 一般書架

一般書架は、本棚が同じ向きでずらっと並んでおり、入ってすぐの辺りに十人ほどで囲んで座るテーブル席、奥の壁沿いに机席があるという配置です。机席のうち一番奥の8席では持参パソコンの使用が可能です。空間の中央にずらっと本棚が並ぶなか、一部の蔵書だけが壁沿いにあり、壁沿いの棚をつい見逃しがち。目的もなくブラウジングを楽しむ際には、壁沿いもお見逃しなく。また、図書以外には、一般書架のうち最もカウンターに近い棚にCD・カセットが並んでいます。

ちょっと残念なのは、一般書架には棚に差すタイプの見出しが全くないこと(棚上部にジャンルが書いてあるだけなので、本の場所がぼんやりとしかわからない)。上述したように、児童コーナーは棚見出しが大きくて本が探しやすいので、一般書架もそれに負けずに見出しをつけて、利便性を上げて欲しいです。

新聞コーナーには立って新聞を広げられる書見台がありますが、スペースがやや狭いです。雑誌コーナーは、雑誌ラックの上に所狭しと区や美術館・博物館などの広報、講演会・講座のチラシなどがたくさん。チラシを立てて置けるスタンドも活用していますが、雑誌バックナンバーから目当ての号を探したいときなどに、仮置き場として雑誌ラックの上を使いたくてもそれができないところもあるくらいです(笑)。でも、こういう講演会や講座の情報が集まっていることも図書館の機能の一つ。美術館や博物館の割引チラシを配布していることもあるので、来館の際にはぜひチェックしておきたいところです。

日本の小説は著者名の姓名の五十音順で並んでおり、複数作家による作品集は「ん」に分類され、「わ」の後にまとめられています。外国の小説は、国別分類はしておらず、“外国文学”でひとまとめにして、日本の小説と同様に、著者姓名の五十音順。複数作家による作品集も、日本の小説と同様に「ン」に分類されています。

一般書架の分類でややわかりにくいのは、暮らしのコーナー側にある料理本で、「日本料理」「アジアの料理」「西洋料理」「チョコレート」「パン」「和菓子」「お弁当」「野外料理」「漬物・保存食・発酵」という項目で分類していますが、それ以外は中途半端に出版社別になっています。中途半端にというのは、サイズが違うと別の段になっていたりする。内容による分類と出版社別分類の割合は半々くらいなので、それなら内容による分類をもっと充実させてそちらのみとするなどしてくれるといいように思います。

§ 2つの特設コーナー

児童エリアそばにある「心の健康 体の健康」は、上北沢図書館の特色コーナー。世田谷区立図書館では、各館で地域にちなんだ特色コーナーをつくっていますが、上北沢図書館は東京都立松沢病院が近くにあることからこのテーマで特色コーナーを作ったのだろうと思います。

「健康」と一言でいっても、一般的な図書館の分類法だと近い内容の本も異なる分類になることがあるんです。例えば、心の健康に関する本でも、心理学の本は「哲学」に、子どもの心の本は「教育」に、社会人の仕事上のメンタルヘルスの本は「労務管理」に分類されてしまいます。この「心の健康 体の健康」コーナーでは、そうした本を一箇所に集めてわかりやすくしてくれています。心の健康に関する本を探していて、自分が探している本が「336(労務管理)」の分類に該当するとわかったら、一般書架の336の棚も見てみる、という使い方もできますね。

「心の健康 体の健康」とは別に、もう一つ上北沢図書館ならではの特設コーナーがあり、それは暮らしのコーナーの奥にある「賀川豊彦コーナー」。私はこのコーナーが設置されるまで知らなかったのですが、賀川豊彦氏は労働組合運動や協同組合運動で活躍した上北沢ゆかりの方で、上北沢区民センターの裏に賀川氏の功績をまとめた賀川豊彦記念松沢資料館があるんですね。こうして本を通じて地域を知ることができるのも、公立図書館だからこそです。

この「賀川豊彦コーナー」は、片足を「上北沢コーナー」に入れているような様子で、上北沢桜並木会議の編集による上北沢マップや、上北沢の桜並木を撮影した写真も展示されています。桜並木の写真は地域にお住まいの方が撮った写真かと思いますが、桜並木全体ではなく木の幹にズームアップしたものも多く、視点が少し変わっているのが面白い。上北沢の桜並木は、上北沢図書館から上北沢駅脇の踏切まで戻って、一つ西に折り返した通り、つまり上北沢図書館のすぐそばなので、私も桜の季節に上北沢図書館に来る機会があったら見てみたいです。

§ ゆったりとした時間が流れているような雰囲気

これは上北沢図書館がというよりは、上北沢という町全体がそういう雰囲気なのですが、落ち着いた様子がいいのです。都心からもそう遠くない駅近図書館なのにゆったり過ごせるというのは、他にあまりないと言えそう。訪問記の最初の方でも書いたように、併設の喫茶店でジャズライブ開催しているというのも気になります。開催日に来館することができたら、ライブも覗いてみたいです。

休日にのんびり過ごしたくなるような図書館で、世田谷区民はもちろん、京王線利用者にもお薦めです。上北沢の落ち着いた雰囲気をぜひ楽しんでください。

世田谷区立上北沢図書館 データ

住所東京都世田谷区上北沢3-8-9 上北沢区民センター地階 →Google Mapで見る
Tel03-3290-3411
開館時間
火~日曜9:00~19:00
祝休日、12月28日・1月4日9:00~17:00
定休日月曜(祝日は開館し、翌日を休館)
12月29日~1月3日
最寄駅 京王線 上北沢駅から徒歩3分
京王線 桜上水駅から徒歩11分
京王線 八幡山駅から徒歩14分
駐輪場建物入口手前に駐輪場あり。
駐車場一般用駐車場はなし。建物正面向かって左手前に、障害者用駐車場1台分あり。
所蔵資料
図書所蔵数79,658冊(2021/03/31現在、出典『世田谷のとしょかん 令和3年度版』※団体貸出センターの図書数は中央図書館の図書数に加算
音声資料
CDカセットレコード
ありありなし

映像資料
DVDビデオLD
なしなしなし
※ DVD・ビデオは広報DVD・ビデオを除いた市販ビデオ・DVDの有無を表しています
設備
ブックポスト道路から建物1階の上北沢区民センター入口へと続く通路向かって手前右に、銀色の箱型ブックポストあり。開館中の使用は不可。
自動貸出機自動貸出機2台あり
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PCなし
持参PC利用閲覧席の一部(8席)で持参PCの利用可能。電源あり。(2016年3月15日現在、電源は使ってはいけない旨の館内掲示がありますが、これは昔の掲示が残ってしまっているだけで、実際には電源を使っていいそうです)
LAN接続館内に「docomo wifi」「ソフトバンク wifi」「フレッツスポット」のアクセスポイントあり
飲食設備等建物1階に喫茶店「kamikita」あり。営業時間は9:00~19:00。
その他設備検索機向かって左のラックに『都議会だより 点字版』『広報東京都 点字版』『広報せたがや 点字版』あり