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新宿区立戸山図書館

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新宿区立戸山図書館 訪問記

last visit:2013/11/12

新宿区立戸山図書館は、都営戸山ハイツの中にある図書館。新宿区立図書館での視覚障害者向けサービスの拠点であり、マルチメディアデイジー資料や大活字本を取り揃えています。「闘病記コーナー」「介護コーナー」「障がい者サービスコーナー」などテーマに沿った本を集めたコーナーも特徴です。

§ 図書館の場所

戸山図書館の最寄り駅は、都営大江戸線の若松河田駅。副都心線の東新宿駅からも徒歩十数分で来られますが、東新宿駅の最寄図書館という点では、戸山図書館よりも大久保図書館の方が近いです。

若松河田駅からいく場合は、河田口を出て、出口の前に伸びている道へ進みます。200m行くとロータリー状の曲がり角に突き当たるのでそこで左折。国立国際医療研究センターの先に戸山ハイツ団地の敷地があるので、「総務省統計局角」交差点で右折して団地内に入ります。すぐ右の11号棟の1,2階に公共施設が入っていて、その2階が戸山図書館。居住者用の入口を通り過ぎた先に公共施設用の入口があるかたちになっています。

東新宿駅から行く場合は、B1出口へ向かうエスカレーターに乗り、B1出口には行かずにエスカレーターを上がった向きの突き当りにあるエレベーターで地上に出ます。エレベーターを出たところが「大久保二丁目」交差点なので、その交差点を右へ進み、550m進んだ「総務省統計局角」交差点で左折、そのすぐ右の建物が戸山図書館の入っている建物です。

この辺り、戸山ハイツという団地と戸山公園、隣は国立国際医療センターと広い敷地の施設が固まっているので、元は公けの広大な敷地の施設だったのではないかと図書館の資料をあたってみたら、陸軍戸山学校の敷地だったんですね。更にさかのぼると、尾張徳川家の下屋敷「戸山山荘」だった場所とのことです。

そのお屋敷だった頃に造られた築山、箱根山が戸山公園内に今も残っているので行ってみましたが、あまりに木が生い茂っていて眺望もへったくれもありません(笑)。夏に行ったときに生い茂る葉っぱしか見えなかったので、冬にも行ってみたのですが、枝がかなり広がっているので冬でも枝の隙間から景色がまあまあ見えるという感じ。眺望を楽しむよりも、木々の生命力を感じる築山となっています。

§ 図書館内の様子

公共施設用入口を入って階段を上がり、突き当りを右に行くと図書館エリアの入口があります。建物内には階段しかありませんが、建物入口向かって左から建物外壁に沿うかたちで2階へのスロープがあるので、ベビーカーや車椅子のかたはそちらをどうぞ。建物内の階段から図書館エリアに入った場合は、右が児童エリア、左が一般書架となっており、外のスロープから入った場合は左右が逆になります。一般書架エリアに入ると左にカウンターがあり、右にCD・カセットコーナー、正面に新聞・雑誌コーナーがあります。新聞・雑誌コーナーの左から更に奥へと進むと一般書架があります。

図書館内の構造がシンプルな四角形状ではなく、一般書架辺りが壁や空調設備のせいでちょっとした迷路のように入り組んでいますが、配架図をみれば何がどこにあるかわかるし、これで行き止まりかと思いきやまだ先があるという構造が面白いです。また、階段をあがって図書館エリア内に行くまでの通路の壁を使って展示をしていて、ここも職員さんが工夫を凝らしているので、図書館に行くついでにこちらもぜひご覧ください。2013年2月に行ったときには、副都心線と東横線の直通を来月に控えて沿線を紹介する展示をしていて、職員さんがお店へインタビューした記事などもあり、図書館に入る前に展示記事を読みふけってしまいました。

§ 児童エリア

児童エリアは一般書架とは別になった広い区画で、窓際には絨毯敷きの読み聞かせコーナーもあり、天気のいい日に読み聞かせするのも気持ちよさそう。児童エリアを入った正面の壁上には、段ボールを貼りつけてつくった手作り配架図や谷川俊太郎さんの詩「ほん」が手書きされたものが貼ってあったり、入口入ってすぐ右には布製のカレンダーがあったり、手作り感あふれる楽しい空間です。布製カレンダーは日付部分が取り外せるようになっていてその月に合わせたカレンダーを作れるタイプのもので、日付部分が袋になっていて、図書館の休館日には眠っているウサギのぬいぐるみが入っているんです。可愛いものに囲まれて大人の私もワクワクしてしまうくらいです。

楽しいといえば、戸山図書館は図書館が閉まっているときに本を返却できるブックポストが建物入口左に3つ並んでいるのですが、その3つが黄色&青の縞々、白と赤の縞々、緑とピンクの縞々と、何ともポップな配色なんです。図書館のブックポストは地味な色のものがほとんどで、こんな楽しいカラーリングのブックポストは初めてみました!私は開館中に図書館に行くことが多くて、ブックポストを使うことはあまりないのですが、戸山図書館のブックポストは思わず入れたくなってしまいます(笑)。

絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、タイトルの頭文字で分類されています。窓際の読み聞かせコーナーには布絵本もたくさんあり、借りることもできます。児童読み物は、日本人作家のおはなしと外国人作家のおはなしを別にして、それぞれ著者姓名の五十音順に並んでいます。戸山図書館は新宿区立図書館の視覚障害者向けサービスの拠点ということで、児童エリア内にも手話や点字に関する本を集めたコーナーがあります。絵本読みから調べものまで幅広く活用できる図書館です。

§ 一般書架

一般書架エリアは、新聞・雑誌コーナーから一般書架エリアへ向かう通路左に文庫が並んでいて、その通路突き当たり付近が中高生コーナーや大活字本、そこで右折すると右に辞典類のコーナーがあり、左右へデコボコと一般書架が伸びています。本や視聴覚資料以外にも、CD・カセットコーナーと新聞・雑誌コーナーの間にはネット閲覧PCやマルチメディアデイジー再生機が設置されています。

カウンター周りにあるものでお薦めしたいのが、戸山図書館が作成した「戸山レファレンスブック」。調べものに役立つ資料やサイトをリストアップしたもので、2010年12月現在、「人物1」「人物2」「地名」「地図」「歴史」「世界遺産」「肖像画」「マスコミ」「新聞雑誌」「医療情報」「戸山に関する人物・歴史」の11種類を配布しています。地名をあてずっぽうの読み方でひいて、正しい読み方がわかる『ウソ読みで引ける難読地名』という資料があるんだ!など、眺めるだけでも発見がいろいろあります。

一般書架の棚を回ると、「366 労働問題」の棚に新宿区の仕事や就職の支援サービスのパンフレットが置いてあったり、「320 法律」の棚に行政書士会のチラシが置いてあったりと、その棚の情報を求めている人に役立つチラシも置いてあります。何かの本を読みたいときというのは、それについて困っている可能性もあるわけで、問題解決を支援してくれるサービスの紹介もしてくれているというのは嬉しいです。

日本の小説は、著者名の五十音順。複数の作家による作品集の場合、奥付に著者として複数の作家名が並んでいる書籍は、その書かれた作家達の一番先頭の著者名をとって、五十音順の並びに入れられ、奥付に編者が明記してある書籍は、本のタイトルで五十音順の並びに入れられています。外国の小説は、英米文学・ドイツ文学・フランス文学…と国・地域別に分類された上で、日本の小説と同様に並んでいます。

料理の本も分類が細かくて探しやすい。「毎日のレシピ」「パン」「健康レシピ」「日本料理」「お弁当」「漬物・保存食」「欧風料理」「エスニック料理」「中国料理」「お菓子」「飲みもの」「料理に関する読みもの」と細分化されているので、目当ての項目だけでなく、おいしそうなお菓子の本などにもついつい手が伸びてしまいます。欲をいえば、著者名の五十音順になっている内科の棚も、病名などで分類してくれると言うことなしです。戸山図書館さん、余裕のあるときにでも分類よろしくお願いします。

§ 新宿区立図書館の視覚障害者サービスの拠点です

戸山図書館は、新宿区立図書館の視覚障害者サービスの拠点であり、対面朗読サービスや録音図書の製作・貸出、マルチメディアデイジーの貸出なども行っています。マルチメディアデイジーというものは耳慣れない言葉かもしれませんが、音声だけでなく、パソコンを通じて音声とテキストや画像が同時にパソコンで表示される形式の資料で、視覚障害者のほかに学習障害、知的障害、精神障害の方にとっても有効であることが国際的に広く認められているものなんです。…と知ったかぶって書きましたが、私自身も「マルチメディアデイジー」なるものを知ったのは戸山図書館の説明からなんです。

マルチメディアデイジーはカウンター対面の、CD・カセットコーナーと検索機の間の棚に並んでいるのですが、こうした資料を単に所蔵しているだけでなく棚で見せているのも、こうした資料の存在を知るきっかけになっていいと思います。視覚障害者向けの資料を対面朗読室の中などに保管して視覚障害者の利用者をそちらへご案内するのでも事足りるかもしれませんが、図書館という「読む文字もの」が中心の施設にこうした資料があったり対面朗読サービスがあることを知らない人も少なからずいて、こうやって人がよく通る場所に置けば何だろうと思って手に取ってみる人もいると思います。

視覚障害は、生まれたときから視力を失っている方もいれば、事故や病気によって人生の途中で視力を失った方もいる。そうした状況のときに「そういえば図書館で視覚障害者向けサービスをやっていたな」という情報がないのとあるのとでは、その後の暮らしも変わってくるでしょう。開架でこういう資料の存在を見せてくれるというのは、図書館サービスの広報という意味でとてもいいと思います。ちなみに、貸出用のマルチメディアデイジーの所蔵は戸山図書館が担当していますが、ネット閲覧PCでのマルチメディアデイジーの閲覧は新宿区立図書館全館で行っています。

パソコンは苦手だし、小さい文字は見づらくなってきたけど大きい文字ならまだ読めるという方には、大活字本や拡大読書機もあります。新宿区立図書館年報である『しんじゅくの図書館 2012』によると、新宿区立図書館で所蔵する大活字本2190冊のうち、半数以上の1506冊を戸山図書館が所蔵しているとのこと。大活字本って私も一度借りて読んだことがありますが(タイトルだけみて予約したら大活字本だった)、視力が弱い人には楽に読めて予想以上にいいですよ。ただ、1ページの文字数が少ない分ページをめくる回数が多くなって、やや面倒な点もありますが。私もそうですが、仕事でパソコンに向かいっぱなしで目が疲れている人も多いと思うので、自分には関係ない本だと思わずに試してみてもいいと思います。

また、CD・カセットのケースには、タイトルとアーティスト名を点字表記したものが貼られています。ケースに点字表記があれば、視覚障害者の方が何を借りるか決めるときに読めるほか、借りているときにCD・カセットをケースに戻すときにも正しいケースに戻せますよね。もちろん、透明な点字なので、それによってジャケットの文字や画像が隠れてしまっていることはありません。棚に並んでいるものが視覚障害者にとってもそうでない人にとっても使いやすいものとなっている、これこそがバリアフリーなんだと思います。

一般書架でも障害や病気に関する資料をまとめていて、一般書架中央の空調機向かって左に「闘病記コーナー」「介護コーナー」「障がい者サービスコーナー」があります。本にクマさんマークの赤丸シールを貼っている「闘病記コーナー」は、いろんな病気の闘病記が並んでおり、心に迫るこれらの本はちょっと手に取ってみるつもりが知らず知らず読みふけってしまいます。

クマさんマークの緑丸シールの「介護コーナー」には、介護に役立つ実用書はもちろん、成年後見制度の本や、介護支援サービスを受けるための手続きに関する本など、介護をすることになったときに今すぐ役立つ本が揃っています。介護体験を綴った著名人の手記などもありますが、全体としては実践に役立つ本というラインナップ。介護って保険が使えたとしてもお金が結構かかることを考えると、図書館でこうした資料が充実していて借りられるというのは本当に助かります。

一方、「障がい者サービスコーナー」は、「障がいをひとつの個性として生きていく人たちの本を集めました」という説明にもある通り、障がい者サービスに関する本があるというよりは、障がい者の方々が書いた本を集めたコーナーです。有名な著者を挙げると、乙武洋匡さんの本や筆談ホステスとして有名な斉藤里恵さんの本、ダウン症の女流書家で大河ドラマ「平清盛」の題字を書いた金澤翔子さんの作品集など。自閉症の子どもを持った家庭を描いた『光とともに…』という漫画などもあります。

障害者や病気・介護のほかに、もう一つ、戸山図書館で紹介したいことがありまして、それは一般書架入口付近にある異臭を発する方へのメッセージ。誰でも利用できる図書館はホームレスの方が来ることも多く、異臭への苦情や異臭を発する方への対応は多くの図書館の課題ですが、戸山図書館の入口には異臭を落として来館してくださいというメッセージとともに、シャワーサービスも提供しているホームレスの相談所の情報を記載しているんです。

これ、異臭を発する方は来ないでくださいという対応をする図書館も多いのですが、図書館はすべての人に知る自由を保障する施設であり、仕事がなくて生活に困っている方がその生活を乗り越えるための情報を得られる施設でもあることを考えると、「ダメなことをする人は来るな」ではなく「ダメなことをやめて来てください」というのが本来の公共図書館のあり方だと思います。断り書きでそれを訴え、さらにそれを実行するための情報も記載しているというのは、素晴らしいと思います。

児童エリアのところで書いたように館内を楽しい工夫で盛り上げてくれると同時に、こうした重いテーマにもきちんと取り組んでいるって、理想的ではあるけどなかなか実現できるものではない。それを都営団地の中にある地域図書館が行っているとは恐るべし。でもこうした図書館ならばこそ、悩み事があってその情報を得るために行ったら元気までもらったり、読書を楽しみに行ったら深い考察にまで思いが至ったり、図書館からいろんなものを得られると思うんです。いい図書館って読みたい本がどんどん見つかって、予定した以上に借りてしまうんですよね。戸山図書館もそんな図書館なので、ぜひ書棚をいろいろ回ってください。

新宿区立戸山図書館 データ

住所東京都新宿区戸山2-11-101 2階 →Google Mapで見る
Tel03-3207-1191
開館時間
児童コーナー以外火曜~金曜9:00~19:00
土・日曜、祝日9:00~18:00
児童コーナー9:00~18:00
定休日月曜・第3木曜(祝休日と重なる場合は開館し、翌日を休館)
12月29日~1月4日
最寄駅
東京メトロ副都心線 東新宿駅から徒歩9分
都営大江戸線 若松河田駅から徒歩12分
都営大江戸線 東新宿駅から徒歩14分
東京メトロ副都心線 西早稲田駅から徒歩15分
駐輪場建物入口手前左に駐輪場あり
駐車場なし
所蔵資料
図書所蔵数93,661冊
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』
CD所蔵数8,176点
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』
カセット所蔵数1,043点
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』
レコード所蔵数なし
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』
DVD所蔵数なし
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』、団体用貸出DVDは中央図書館の所蔵数に加算
ビデオ所蔵数なし
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』
設備
ブックポスト建物入口左にブックポストあり
自動貸出機ICタグ自動貸出機1台あり
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PCネット閲覧PC1台あり。利用は1回30分。
持参PC利用不可
LAN接続館内用無線LANの利用可能
飲食設備等建物1階に飲物自販機2台あり
その他設備建物の公共施設用入口向かって右に喫煙所あり