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「このタイトルがすごいっ!」

―2008年11月27日からの展示
visit:2008/11/29

東葛西図書館の2008年11月27日からの特集は「このタイトルがすごいっ!」です。この特集テーマ、本を読む人の心をくすぐりますよね。私が特集棚を見ている間にも、普段にも増して多くの方が特集棚を見に来ていました。

特集コーナー向かって右の柱には、東葛西図書館の職員さん達の挙げた本のタイトルと挙げた方の一言も展示してあります。『いつか王子駅で』って、このタイトルだけでもなかなか興味をそそられる小説ですが、このタイトルって「いつか王子様が」(Someday My Prince will Come)をもじったタイトルなんですね。知らなかった…。老婆心と言いながら説明を書いてくださった職員さん、ありがとうございます。

あと、『バカはなおせる』を挙げた職員さんと、『バカは死んでもバカなのだ』を挙げた職員さんがいるってのも面白いですね。『バカは死んでもバカなのだ』の方は赤塚不二夫の対談集で、棚にあったので読んでみました。真剣にバカをやっている赤塚不二夫はすごいですね。所ジョージとの対談では、所ジョージが赤塚不二夫でも歳を取ったら分別を持つはずだとばかりに、バカではないところを告白させようとするんだけど、赤塚不二夫は俺には分別はないと頑張っているのです(笑)。

展示本の中では、タイトルがインパクトあるだけでなく、中身もすごかったのが『蹴りたい田中』。タイトルはもちろん『蹴りたい背中』のもじりですが、中身がね、何だか訳がわかんないんですよ。本の裏表紙に書いてある内容をそのまま引用しますと、

第二次大戦下で鬱屈する少年兵たちの、複雑な心象を描破した珠玉作「蹴りたい田中」で第130回茶川賞受賞後、突如消息を絶った伝説の作家・田中啓文。以来10年、その稀有なる才能を偲んで、幼少時から出奔までの偉大なる生涯を辿る単行本未収録作8篇+αを精選、山田正紀、菅浩江、恩田陸などゆかりの作家・翻訳家・編集者らによる証言、茶川賞受賞時の貴重なインタビュウ「未到の明日に向かって」までを収録した遺稿集。

つまりは田中啓文が、茶川賞なるものを取ったけど失踪してしまった作家という設定で、遺稿集を作ったんですね。そして、そのおふざけに対する説明等を一切せず、終始一貫おふざけのみで1冊が成り立っている。これって、赤塚不二夫に通じるものがありますね。タイトルのすごい本というのは、確信的バカを呼ぶのか(笑)?

その死に方は、迷惑です』も、とても衝撃的なタイトルですが、何の本かと手にとってみたら、遺言書と生前三点契約書(財産管理等の委任契約書・任意後見契約書・尊厳死の宣言書)を書きましょうという本。第三章の「こんな人は遺言書を作らないと大変!」に挙げられているケースは、子どものいない夫婦、親と同居している子どもと別居している子どもがいる場合、配偶者に相続させたくない場合、シングルマザー・シングルファザー、身寄りがない人、お世話になった人にお礼をしたい人、離婚・再婚によって相続関係が複雑、相続人が多い、非婚・事実婚、事業を営んでいる、アパート・マンション・貸家などの賃貸物件を所有している、ペットの世話が心配、といったもので、これだけあれば多くの人がどれかにはあてはまるのではないでしょうか。私もあてはまります。

しかし、本のタイトルというのは難しいもので、タイトルで期待させておいて、中身がそれほどでもなかったりすると、タイトルが月並みな場合以上にがっかりしちゃいません?特集棚にあった『これを読んだら連絡をください』という小説、タイトルに興味をそそられて、最初の数ページで借りようかなと思ったのですが、十数ページ程度まで読み進んでみたら、そんなに面白くないように思えてしまいました(苦笑)。期待を実際以上に膨らませるほどだと、タイトルしてはむしろダメになってしまうのかもしれません。

それに、実用書なんか特にそうですが、あるタイトルでベストセラーが登場すると、それと同じタイトルのつけ方をした本が山と発行されますよね。『国家の品格』が売れた後、やたらと「○○の品格」という本が出たりとか、妙に具体的な数字をタイトルに入れてみたりとか。私なんかは、そういうタイトルを見るとかえって中身なさそうだと思ってしまう(タイトルで買わせるしか手段がないってことだと思いません?)のですが。

中身に対して過大になってもいけないし、それでいて何冊と発行される本の中で「この本は読んでみたいな」と思わせるタイトルでないと、今の出版界では売れなければすぐに絶版となってしまう。本のタイトルって難しいですよね。そんな荒波の中にあって台頭してきた今回の特集の展示本、東葛西図書館においでになる方は、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。