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「昭和の時代とベストセラー」

―2008年10月27日から11月9日までの展示
visit:2008/11/06

毎年、読書週間の時期には、多くの図書館が特集コーナーを設置して本をお薦めしてくれます。柿木図書館では、2008年の読書週間に合わせて、「昭和の時代とベストセラー」という特集をしています。2階の階段を上がった正面にあたる場所に長机を置いての展示です。

長机に置いた本は特集期間中は閲覧のみ、左に置いてある可動棚にある本は貸出可能とのこと。長机の展示を見ると、まず左側には東京の昔の写真集があります。こういう写真集はよくありますが、『昭和30年代の中野・杉並』『吉祥寺 消えた街角』といった、東京の中でもこの辺に絞った写真集もあるんですね。

昭和30年代の中野・杉並』は、中野美観商店街(現中野ブロードウェイ)、高円寺駅南本通り、阿佐谷パールセンターなど、今はアーケード商店街であるところにまだアーケードがない頃の写真がいいです。私は、地元の砂町銀座で慣れているせいもあるでしょうが、アーケードなし商店街の方が開放的で好きなんです。雨が降って荷物が多いときには、アーケードありの方が確かに便利ですけどね。それにしても、こうして写真に収められている商店街が、形を変えたとはいえ平成の今も残っているのが素晴らしい。中央線沿線がいかに商店街の多い場所かということを物語っている気がします。

吉祥寺 消えた街角』にも、まだアーケードのない頃のサンロードの写真があります。サンロードのアーケードって、リニューアルして開閉可能なアーケードになるみたいですね。商店街も時代につれ進化していくようです。また、この本には吉祥寺駅や線路の写真も多く、キャプションによると中央線が高架になる前の踏切りはかなりの「開かずの踏切」だったとのこと。高架になる以前の吉祥寺駅の構内路線図を見ると、貨物ホームへの線路も含めて横に7本も並んでいて、確かにこれでは踏切が開かなくなるだろうと納得してしまいました。

ベストセラーの展示本は、『蟹工船』『放浪記』『春琴抄』『斜陽』の復刻本。タイムトリップを味わいたいなら、単に昔の小説を読むだけでなく、旧仮名遣いで書かれた復刻版を読むと、タイムトリップ気分が高まりますね。その右には、もう少し最近の昭和ベストセラーである、『窓ぎわのトットちゃん』『日本沈没』『限りなく透明に近いブルー』など。カッパブックス『日本沈没』の著者近影の小松左京の若いこと!『ノルウェイの森』も昭和のベストセラーなんですね。自分の中でそんなに昔ではないと思っていることが、昔っぽく扱われているのを見ると、私も歳を取ったんだなあと実感してしまいます(笑)。

「昭和」って60年以上も続いた年号ですし、出版された小説だけ見ても様々なものがありますね。今ちょっとしたブームになっているという『蟹工船』なんか見ると、昭和から平成に入って全ての面で発展しているとは限らず、昔に戻った部分もあるのかもしれません。でも、資料をもとに昔から学ぶことで、似た状況を昔より上手に乗り越えていくことはできると思うんですよね。新しい情報を得るだけでなく、古きから学ぶためにも、図書館を上手に利用したいものです。