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「ビューティフル装丁」

―2008年8月15日からの展示
visit:2008/08/26

江戸川区立東葛西図書館2階カウンター脇の特集コーナー、2008年8月15日からの特集は「ビューティフル装丁」です。"装丁"はカバーデザインに留まらず、見返しや本文の紙、栞をどんなものにするかなども含まれますよね。図書館で明治や大正に出された本の復刻本を置いてあるところも多いですが、復刻本の装丁は素敵なものが多くて、私は大好きです。

特集コーナーで手に取ったのは、特集テーマずばりの『ブックカバー・コレクション』。凝った表紙の本がたっぷり取り上げられています。こうも並ぶと、逆にシンプルな本の方が目に入ってきます(笑)。また、本棚では表紙は面陳されていない限り見えないところであるということを考えると、本棚で目立つのは表紙が凝っている本より、背に工夫を凝らしている本ですよね。例えば『だれが「本」を殺すのか』という本の背は、白地に黒文字でタイトルが書いてあるだけなのですが、"本"と"殺す"の文字だけ大きく、残りは小さい文字にしているので、本棚に並んだ本の中ですごく目立ちます。

ブックカバー・コレクション』では、帯をうまく利用した本も気になりました。最近の帯って、高さが本体の半分以上もあったり、つけた状態と外した状態とそれぞれ楽しめるようなデザインになっていたり、工夫を凝らしているものも多いですよね。図書館での帯の扱いも、帯を外して新刊紹介に使う図書館もあれば、帯ごと保護フィルムでくるんでしまう図書館もあるし、本の見返しに貼る図書館もある。後者の2つはそれぞれ、表紙が全て見えない、見返しに帯を切り貼りするのは見た目があまりきれいでない、といった欠点もありますが、図書館の書架で帯の文章が読めると本選びの際にとても参考になるんですよね。

特集コーナーにあった別の本『FILING―混沌のマネージメント』は、紙商社の竹尾とデザイナーの織咲誠・原研哉による本で、美しいファイリング製品やファイリング実例をいろいろ紹介しています。紙袋をファイル代わりに使う人をヒントに作った「ショッピングバッグ型ファイル」なんてものがあったりして、装丁とはちょっとずれた内容かもしれませんが、見ていて楽しい本です。

そういった装丁に関する本だけでなく、凝った装丁の本ももちろんたくさん並んでいます。『極上掌篇小説』と『弓削是雄全集 鬼』という本が並べて置いてあったのですが、『極上掌篇小説』が真っ赤な表紙に天・地・小口も赤、『弓削是雄全集 鬼』が真っ赤な表紙に黄色い天・地・小口と、両者とも迫力ある装丁。迫力というより、もう何か怖い感じさえしますね(笑)。正座して読まなきゃいけないような威圧感です。

美しい暦のことば』は全体的にいろいろな色にあふれた本なのですが、よく見ると本文は全ページフルカラーではなく、全ページ二色刷りなんですね。本の印刷は、大きな紙にページ割付して印刷し、それを裁断して本にしていくわけですが、その大きい紙ごとに使う2色のインクを変えているのですね。なので出来上がった本は、ある章は茶色とパステルピンクで印刷され、別の章では茶色とパステルグリーンで印刷され、、、といった具合になり、全体的にはたくさんの色に溢れた本になっているのです。コストをかけずにカラフルに見せる技ですね。

東葛西図書館の職員さんがこれぞと選んだ装丁の本については、特集コーナー右に「こんな理由で、特集本を選んでみました」と題して、手書きの紹介文がたくさん貼ってあります。『いい加減にしろよ(笑)』の説明には、「表紙をよ~く見て下さい。曲がっています!曲がっているのです!」とあり、実物を見ると表紙に大きく書かれたタイトル文字が確かに微妙に右肩下がりです。この本、いちいち注意するのも嫌になるような困った人・モノのことを書いた本のようなので、そのがっくりする感じをこの右肩下がりが示しているってことかな。

いつか僕もアリの巣に』の説明には「表紙も、裏も、開いても、閉じても、あり…あり…あり…」とあり、実物はというと表紙にも見返しにもアリの姿があちらこちらに描いてあるんです。しかも、図書館の本だと保護フィルムがかかっていてわかりにくいけど、表紙の印刷部はエンボス加工をしているみたいで、ちょっと立体的なのですよ、アリが。本を持っているだけで、アリが腕に登ってきそうです(笑)。

あと『東京日記 卵一個ぶんのお祝い。』の説明「絵の印刷されている色が、ページによって違います。奥付の「著者検印?」も見て!」もとても気になったのですが、この本は残念ながら貸出中。他の図書館で探してみようと思います。

装丁を中心に本を見ると、既に読んだ本も違った面が見えてきますね。買った場合も、表紙がいい本は棚に差すのではなく、表紙を見せて置きたくなっちゃいますし、やっぱり本は中身だけでなく装丁も大事!たまには、装丁の好みだけで本を選んでみたりすると、未知の作家に出会えたりするかもしれませんね。