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品川区立ゆたか図書館

品川区立ゆたか図書館 訪問記

last visit:2017/12/08

品川区立ゆたか図書館は、戸越銀座の南、戸越公園の北にある小さな図書館。コンパクトな施設規模で資料やサービスを提供している1階と、一見質素な印象ながら可愛らしい児童エリアの2階が、利用者を迎えてくれます。

§ 図書館からの道のり

ゆたか図書館は、東急大井町線の戸越公園駅・下神明駅や、都営浅草線の戸越駅などが最寄り駅。ちょうど、この3駅を結ぶ三角形の中心辺りにあります。

下神明駅からの道のりで通る戸越公園は、池あり、滝あり、築山ありの回遊式庭園。江戸時代の細川家の下屋敷の庭園跡を利用して造った公園なのに、品川区立の公園とあって無料で入ることができ、お薦めです。私は、ゆたか図書館訪問5回目にして初めて戸越公園に入り、今までこの素敵な公園を知らずにいたことを悔やんだくらい。外で過ごせる季節に来て、ここでの読書を楽しみたいと企んでいます。

一方、戸越駅から行くと、「文庫の森」というきれいに整備された公園の脇を通ります。この公園は国文学資料館跡地だそうで、公園内に旧三井文庫が現存していることより、公募された名前のなかから「文庫の森」と名付けたのだそう。2013年2月に開園したばかりできれいですし、広場もあるので、遊び盛りのお子さん連れなら、戸越公園よりこちらがいいかもしれません。

また、都内でも有名な商店街・戸越銀座にも近いので、近所の方は買い物のついでに図書館に行くことも多いのでは。戸越銀座商店街からゆたか図書館へ行くとしたら、戸越銀座の東の方(銀六会ゾーン)にある「とごしぎんざの牛乳屋」「戸越泌尿器科内科クリニック」「島田葬儀社」がある十字路で島田葬儀社側の路地に入り、300m先の突き当り、十字路が右にずれる地点の右先がゆたか図書館です。

§ 図書館内の様子

ゆたか図書館が2階建ての建物です。入口前に柵があり、建物前の道路から入口に向かって真っすぐに入れず、一度道路に平行の通路を通ってから直角に曲がって図書館に入る仕掛けになっているのですが、おそらく子どもの道路への飛び出しを防ぐための仕掛けでしょう。上に書いたように、西と南に公園があるほか、東には保育園と児童センターがあり、子どもの利用や親子での利用も多いと思います。

図書館は2階建てで、1階が一般書架、中高生コーナー、新聞雑誌コーナー、CD・カセットなどの一般フロア、2階が児童フロアというシンプルな構成です。子どもの利用が多そうという説明から騒がしいかもしれないと想像した人もいるでしょうが、フロアが違うのでその点は心配しなくて大丈夫です。図書館規模としては「中の小」というところで、16席しかない閲覧机は、来館者の多い土日などは埋まっている可能性が高いですが、1階も2階も棚と棚の間が広く、空間の使い方がゆったりとしていて棚が見やすいです。

§ 1階の一般書架

1階の配置は、正面に文庫本やCDがあり、その奥に新聞・雑誌コーナー、その更に奥が閲覧席です。左一帯は一般書架で、そのうち手前の窓際が中高生コーナーです。右手前にはカウンターがあり、その更に右の小さな区画に、旅行ガイドや料理・手芸などの実用書が集まっています。特集展示コーナーが、1階入口入って左手前の隅と、入口入って右先の文庫棚手前の2ヶ所ありますが、どちらもこじんまりしていて気を付けないと目に留まらないかもしれません。

館内で持参PCは使えませんが、文庫本棚の右にネット閲覧PCが3台設置されていて、1人1日1時間利用できます。検索機は1階に2台、2階に1台の計3台あり、ゆたか図書館に限らず品川区立図書館全館でそうなのですが、タッチパネル入力とキー入力による検索機で、マウスはありません。見かけが普通のパソコンと一緒なので、マウスはどこ?と探してしまうかもしれませんが、メニュー選択などはタッチパネルで操作してください。

一般書架は、冊数は図書館の規模に応じて少ないですが、紫地に白字の見出しが目立っていてわかりやすいです。また、黄色地に紫色文字の棚見出しで関連ジャンルの棚の位置も注記してくれています。例えば、「291 日本の地理」の棚に「ガイドブック・地図は旅行ガイドコーナー(カウンター横)をご覧下さい」という注記見出しがあったり、「336 経営管理」の棚に「商業は670を御覧下さい」という見出しがあります。似たジャンルなのに図書館の分類だと別になってしまうものって利用者にはわかりにくいので、こうして注記してくれるのは嬉しいですね。

雑誌の並びが、ジャンル別ではなくタイトルの五十音順なので(週刊誌だけは、五十音順の並びの最後にまとめてあります)、何の雑誌が読みたいか決まっているときはいいのですが、「スポーツ雑誌が読みたい」「ファッション雑誌が読みたい」などジャンルで読みたい場合は、やや不便です。とはいえ、雑誌の種類もそれほど多くないので、全体から探すにしてもそれほど大変ではありません。また、雑誌のうち児童関連は2階にあるので、ご注意ください。

ゆたか図書館は2017(平成29)年10月にまるまる1カ月休んで改修工事をしたのですが、それと同時にPC・ネット関連本の分類が変わりました。以前は、業務用パソコンソフトは336、インターネットは547、パソコンのハード面は548、パソコン全般は007、スマートフォンは694のように、内容によって分類が分かれて、あちこちの棚に分散していたのを、入口から見て左端の壁の真ん中辺りにある分類007に集めました(但し、無線LANは547)。更に、007の中でも分類を細分化して分かりやすくしており、「007.6388 ワープロ用ソフトウェア」という数字7桁の分類を最初に見たときには、この小さな規模の図書館にこんな細かい分類?と驚いてしまいましたが、これによって本が探しやすくなりました。

視聴覚資料は、DVDなどの映像資料はなく、CDとカセットのみ。そう、気付きにくいですが、ネット閲覧PCに向かって左の柱についている棚にカセットも所蔵しています。音楽カセットもありますが、大部分は落語や朗読など、同じものがCDでも出ているとは限らない内容のカセットです。今や多くの人がカセットプレーヤーを持っていないと思いますが、館内にCD・カセット試聴機があるので、聴いてみたいカセットを見つけたらご利用ください。

漫画は、内容によって児童フロアと中高生コーナーに分かれて置いてあります。具体的には、中高生コーナーに『ヘルプマン!』『どんぐりの家』『神聖喜劇』など、児童フロアには『ONE PIECE』『名探偵コナン』『MAJOR』などが並んでいます。図書館に漫画というと眉をひそめる方もいるかもしれませんが、品川区立図書館は、ゆたか図書館に限らず、福祉問題を扱った漫画なども所蔵していて、親しみやすい表現方法でそうした問題に触れることができます。上に挙げた漫画も、『ヘルプマン!』が老人福祉を扱った漫画)、『どんぐりの家』が障害者問題を扱った漫画です。

カウンターに隠れた隅っこにある実用書コーナーには、旅行ガイドと裁縫・手芸・料理・住宅・美容に関する本が集まっています。ここには児童用サイズの机と椅子が置いてあり、「可愛い小部屋」という雰囲気で私のお気に入りです。混雑時には狭いスペースに人がたくさんいてやや不便にもなりますが、椅子と棚の位置が近いので座席についたままあれこれ本を手にとることができ、ついつい長居したくなる空間です。

ゆたか図書館では、リーディングトラッカーの館内貸出も行っています。リーディングトラッカーは、こちらのサイトに詳しい説明がありますが、読んでいる行に焦点をあてやすくする道具で、視野狭窄などの障害がある人のためのツールと思われがちですが、難しい専門書を読むときなどの集中力をサポートするツールにもなります。使い勝手を知るにも、図書館で試せるというのはいい機会。ぜひ使ってみてください。

もう一つ、館内で利用できるものとして、館内で本を持ち歩くときに利用できる袋を用意してくれています。館内で使える袋として、スーパーのようなプラスチック製のカゴを用意している図書館も多いですが、ゆたか図書館の館内用袋は、品川区内社会福祉法人で障害者の方が製作した可愛らしい布製の袋。本を選びながらあちこちの棚を見たいときなどに、ご利用ください。

§ 児童フロア

2階はフロア全体が児童エリアです。ゆたか図書館にはエレベーターがなく、ベビーカーで来た人は、階段前のベビーカー置き場にベビーカーを置いて、階段で2階に上ることになります。2階への階段の入口には、パンダ、くま、さるなどのイラストが舞っていたり、階段の踊り場にも折り紙などの飾り付けに溢れていて、可愛らしいです。

児童エリアはL字状になっており、階段をあがったところが「L」字の左下の角にあたります。階段から児童エリアに入ると、正面に児童読みものがあり、その右にちしきの本、児童読みものの奥が絵本や紙芝居で、L字の内側にカウンターがあります。一番奥には絨毯敷きの靴脱スペースがあり、カーテンで仕切って利用する授乳コーナーもあります。

児童エリアにある本で、大人の方にも見て欲しいのが、品川区の公立図書館で使っている教科書を集めたコーナー。品川区では2006(平成18)年度から全ての区立小・中学校で小中一貫教育を実施しており、そこで使っている教材が児童エリアのテーブル席のそばの棚の、漫画の左に並んでいます。学校関係者ではない人だと、自分が学校に通っているときと、自分の家族が学校に通っているとき以外は、あまり教科書をじっくり見る機会がないと思いますが、どんなことをどう教えるかはこれからの社会を作る大きな要素で、ぜひ目を通して欲しい資料です。もちろん、ゆたか図書館だけでなく、品川区立図書館全館で所蔵しています。

児童読み物やちしきの本の棚は、ぎっしり本を並べるのではなく、一番上の段に紙工作を飾っています。思わず目を留めてしまったのが、電車の車両の紙工作で、行先もカラーリングも東急線を模しており、そのうちのいくつかは、期間限定で走らせていた1000系リバイバルカラーの車両を模しています。もしお子さんが、この電車は本物と色が違うと言ったら、昔はこういう車両だったと教えてあげてください。

絵本は、日本人作家も外国人作家も一緒にして、おはなしの作者の姓名五十音順に並んでいます。昔話絵本は創作絵本とは別にまとまっていますが、その中で文章を書いた人の姓名五十音順になっているので、同じ『かぐやひめ』でも、いもとようこさんが文章を書いた絵本は昔話絵本の「イ」に、舟崎克彦さんが文章を書いた絵本は昔話絵本の「フ」に並んでいます。読みたい昔話絵本がある場合は、すぐに棚から探すのではなく、検索機で著者名を調べてから探す方が見つけやすいです。

建物としては古いゆたか図書館ですが、奥の靴脱ぎスペースは比較的最近絨毯を張り直しており、居心地のいい空間です。紙芝居は絵本エリア向かって右寄りにありますが、アンパンマンの紙芝居だけは靴脱ぎスペースにあるので、探すときにはご注意ください。

§ 古くて小さいけど、親しみやすさも感じます

ゆたか図書館は、建物も新しくはないし、規模もそれほど大きくないのですが、それがこじんまりとしたいい雰囲気に繋がっています。上にも書きましたが、棚の配置がゆったりしているので狭苦しくないし、目立ちすぎる装飾などもなく質実剛健で、落ち着きます。例外を挙げれば1階の隅にある実用書コーナーだけが狭いのですが、一般の机ではなく児童サイズの机を置いているのが「小部屋」感を感じさせてくれます。このコーナーで手芸本を見ていると、不思議と小さくて可愛らしいものを作りたくなってきます(笑)。

特に、児童フロアは、1階の階段への入口のイラストや、階段踊り場や2階に飾られた折り紙・紙工作など、派手な賑やかさではなく、プチ可愛い印象です。以前は、靴脱ぎスペース向かって右の壁に賑やかな壁画が描かれていたのですが、今は一見シンプル、よく見ると手作り工作が棚を彩っている空間です。

税金を使った施設としては、一度建てた建物を必要以上にコストをかけず長く使い続けることも大切。ゆたか図書館は、全体がそうした雰囲気に満ちています。商店街が近いので、買い物ついでに図書館利用、いや、人によっては、図書館利用ついでの買い物ということになるのかな。地域の人にとっては、ふだんの暮らしの中での図書館利用を実現している図書館です。

品川区立ゆたか図書館 特集・行事・図書館だより感想記

  「便利なまち、しながわ」
―2007年3月の展示

品川区立ゆたか図書館 データ

住所東京都品川区豊町1-17-7 →Google Mapで見る
Tel03-3785-6677
開館時間
月~土曜9:00~20:00
日曜・祝日9:00~19:00
定休日第2木曜(祝日も休館)
12月29日~1月3日
最寄駅 東急大井町線 下神明駅から徒歩11分
都営浅草線 戸越駅から徒歩11分
東急大井町線 戸越公園駅から徒歩11分
駐輪場建物正面手前側(北側)と 向かって左側(東側)に駐輪場あり
駐車場なし
所蔵資料
図書所蔵数63,466冊(2017/04/01現在、出典『平成29年度 東京都公立図書館調査』)
音声資料
CDカセットレコード
ありありなし

映像資料
DVDビデオLD
なしなしなし
※ DVD・ビデオは広報DVD・ビデオを除いた市販ビデオ・DVDの有無を表しています
設備
ブックポスト建物向かって左側(東側)の壁にブックポストあり。開館中の使用については明記なし。
自動貸出機なし
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備カセット・CD試聴機1台あり。利用は1回30分以内、1日2回まで。
映像視聴設備なし
ネット閲覧PCネット閲覧PC3台あり。利用は1人1時間まで。
持参PC利用不可
LAN接続館内用無線LAN「しながわFree Wi-Fi」の利用可能
飲食設備等蓋付き容器(ペットボトル・水筒など)の飲料に限り、館内での摂取可能。但し、飲むとき以外は鞄にしまってくださいとのこと。