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「八潮パークタウンのあゆみ」

―2007年3月の展示
visit:2007/03/24

品川区立図書館では、ときどき図書館フェアを行っていて、ある大きなテーマに関して各館で個別の特集を組んでいます。2007年春の図書館フェアでは「品川区政60周年」を行っていて、そのうち八潮図書館のテーマは「八潮パークタウンのあゆみ」。図書館を入って左の壁に昔の八潮団地、今はなき大井オートレース場、大井埠頭の航空写真などが展示してあります。3月15日に写真の入れ替えをしたそうなので、その前に見に来た人もまた見に来てくださいね!

昔の写真と一緒に手書きの学級新聞風のものがあり、何かと思ったらこれが品川区政ニュース(現広報しながわ)の第1号です。1947年10月30日発行とありますね。この頃は区報に活字を組んでもらうのなんて贅沢って感じだったのでしょうか。

入口右の特集コーナーには、品川区についての本はもちろん「八潮パークタウン 20年のあゆみ」「八潮ヤンチャーズ 10年のあゆみ」といった本も展示してあります。「八潮パークタウン~」の発行が2003年8月なので、八潮パークタウンは今年で24年ということになりますね。

この本の中で中学生が八潮パークタウンのいいところとして「緑が多い」というのを挙げていたのですが、今日も来る途中に菜の花がたくさん咲いているところがあってきれいでした。それと今日見つけたのですが、八潮図書館の向かいにある八潮地域センターの脇から八潮中央通りに降りる道がちょっとした日本庭園風になっているのですね。そこもちゃんと通ってきました(笑)。

「八潮ヤンチャーズ~」の方は少年軟式野球チームです。この本は2002年1月発行なのですが、この中に「今年の夏の甲子園をわかせ東京に優勝旗をもたらした日大三高の石井君もヤンチャーズの選手としてグラウンドで活躍した」とありました。家に帰って2001年夏の日大三高のナインを調べたら6番レフトだった人のようですね。

§ 八潮のあゆみがわかる冊子を配布

また、この展示にあたって冊子を2つ作って配布しており、これが八潮地域を知るのにとてもいい冊子なんです。この展示の後に、図書館資料として所蔵(『八潮パークタウンのあゆみ』品川区立八潮図書館編)しているので、今でも見ることができます。

2つあるうちの1つ目の冊子が、<「広報しながわ」に見る八潮パークタウン>。これまでの広報しながわの記事から、八潮の歴史がわかる記事をスクラップしたものです。まず最初の記事が、品川区と大田区が都の調停を受け入れたことで、この埋め立て地の帰属の境界線が決定したという内容。なるほど、埋め立てが終わった時点ではその土地がどの自治体に属するかは決まってなく、ここのように複数の自治体に接するかたちになると、境界線をどこにするかを決めないといけないわけですね。

その後に、地名が「八潮」決まったという記事があることで、そうか、帰属が決まった後は地域に名前をつけるという手順になるのかと気づかされます。地名は公募しており、応募が多かった順に、1位「緑」、2位「あけぼの」、3位「かもめ」、4位「朝日」、下位の方には「なぎさ」や「青空」という名前も挙がっています。ただ、4票以上応募があった名前の中には「八潮」は入っておらず、確かにこうして並べてみると、公募で票数が多い名前はありがちな名前でもある。結果的に決まった「八潮」は、いい名前だと思います。

その後、入居者募集の記事が登場し、1983(昭和58)年3月から入居開始、翌年7月に八潮図書館がオープンと、町が町としてかたち作られていくのが感じられます。1986(昭和61)年に三原山が噴火した際、多くの避難者を八潮地域で受け入れたという記事もあって、これも入居者が入ってくる途中の時期だったからこそできたことなのかなと想像します。

2つ目の冊子は、人口動態から見た八潮パークタウン。世帯や人口に関する統計資料を掲載しています。埋め立て地に団地を作ったという経緯を考えれば予測がつきますが、街ができて数年で一気に人口は増加、そこからはほぼ平らな線を描くグラフになっていますが、細かく見ると平らな線は微妙に右肩下がりになっています。また、人口数と世帯数を比較すると、1世帯の人数が減っているのも感じます。

年齢と人口のグラフも典型的なニュータウンのもので、家庭を築いて新しく家を買いたい・借りたい人が入居してきたわけだから、以前の入居時に30代、40代だった人が圧倒的に多い。その山が経った年数分ずれて、今は50代、60代が人口の山になっています。経済成長期に開発された全国各地のニュータウンで起きている地域の高齢化が八潮地域でも起きていることがわかります。

私は、品川区立図書館全館で開催している春の図書館フェア「品川区政60周年」の展示を全館見に行ったのですが、八潮図書館の展示が一番その地域の歴史がわかる内容で、とてもよかったです。古今東西の情報をその地域の人に提供することも図書館の役割だけど、その地域の情報を収集・提供することも図書館の役割の一つ。というより、その地域の情報を他の図書館が集めてくれるわけがなく、地域の情報の収集はその図書館でしか担えない大切な役割で、八潮図書館がしっかりその務めを果たしていることを感じました。

展示はもう終わってしまいましたが、上に書いたように、作成された冊子はいつでも読めます。新しく八潮に住む人にもぜひ手に取って欲しいです。