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稲城市立中央図書館 ビブリオバトル(2018年1月5日)

―2018年1月5日のイベント
visit:2018/01/05
§ おせちもいいけど、ビブリオバトルもね

図書館にとっての年末年始は、休みが長いためにいつもより多く借りられるようにしてくれたり、「本の福袋」企画を行ったりと、じっくり本を読む雰囲気が強まる期間です。そんな年末年始の気分がまだ残る2018年1月5日、稲城市立中央図書館でビブリオバトルイベントが開催され、私も2018年最初のビブリオバトルを楽しもうと参加してきました。

学校は冬休みの時期ですが、曜日としては金曜日の平日。イベント開催時間が10時半から12時半だったので、10時頃に図書館に着くようにして中を少しぶらぶらしてみると、宿題や受験勉強に来ている生徒さんで席が埋まっているものの館内は静かで、皆が勉強や本の世界に入り込んでいる雰囲気。そんな書架エリアの端にあるグループ学習室が今回の会場です。

参加しておいてこんなことを言うのもナンですが、年明け気分が抜けない日の午前中にビブリオバトルイベントを開催して、果たして参加者がいるのかなと思っていました。で、会場に入ってみたら、やはりモノ好きはいるものですね(笑)、大学生さんが1人、既に来ていました。イベント開始時刻には大学生2人と私の3名が集まり、また、残念ながら当日キャンセルとなってしまいましたが、申込者はあと2名いたそう。チャレンジングな開催日時だと思っていましたが、意外と集まるものですね。

§ 1冊1冊の本についてじっくりおはなし

この2人の大学生は、それぞれ別の大学で大学図書館のサポーター活動をしているお知り合い同士で、もちろんビブリオバトルも経験済み。私も稲城市立中央図書館のビブリオバトルイベントに参加するのが2度目で、今回の参加者は全員ビブリオバトルとは何かを知っている人でした。なので、最初にさっとルール説明する程度で、すぐにバトルスタート。もし、この文章を読んでくださって、ビブリオバトルを知らない方がいらっしゃったら、ビブリオバトル公式サイトをご覧ください。

3人だけでは寂しいので、図書館の職員さんも2名加わった計5名でバトルをすることにし、皆で輪になって座ります。発表の順番はくじで1番手を決めて、2番手以降は右回りで順番にということにしたんだったかな。今、「3人だけでは寂しい」と書きましたが、ビブリオバトルの場合は人数が少ないと1人1人がたくさん話せるというメリットがあり、こちらの方が「参加した」感はたっぷり味わえます。

まずは、森見登美彦と同世代だという図書館職員さんが、『夜は短し歩けよ乙女』を紹介。わりと難しい言葉が使われていて、決して読みやすくはないけど、しょうもない会話もあり、可愛らしいラブストーリーだそう。実は私は、前に『四畳半神話大系』を読んで森見ワールドにうまく入れずに途中で読むのをやめて、その後ずっと森見作品は読んでこなかったのですが、ご自身も可愛らしい系の職員さんが、可愛らしさも妄想もその他いろいろなものが詰まっている本だと紹介しているのを聞いて、森見ワールドへのハードルが下がりました。後日、実際にこの本を読んで、確かにしょうもない、それでいて登場人物たちが可愛げのあるこの小説世界を楽しめた。この流れで、他の森見作品も読んでみようと思っています。

次は帝京大学の学生さんが、『ざんねんな偉人伝』を紹介。書名から連想される通り、偉人のイメージを覆すような実際のエピソードを紹介する本で、発表のなかでは、葛飾北斎、宮本武蔵などの意外な一面を話してくれました。書名だけを見るとイメージが崩れる話ばかりかと思いきや、逆にイメージが上がるエピソードもあるそう。

5人で輪になっていて互いの距離が近いので、発表を聞きながら表紙をじっくり見たり、開いたページを覗いたりできるのですが、この本は視覚に訴えてくる本で、そばで紹介してもらえてよかったです。例えば、表紙には見ただけで誰だかわかる偉人の似顔絵がたくさん描かれているのですが、よく見ると顔にいたずら描きが加えられているうえに、偉人のイメージとは違うセリフをつぶやく吹き出しもあって、表紙を見るだけでも楽しい。また、ところどころに豆知識がちょこっと載っていたりして、腰を据えてじっくり読む本というよりは、面白そうなところを拾い読みしやすいということもわかります。

続いては、桜美林大学の学生さんが、谷崎潤一郎の『春琴抄』を紹介。この本を友達に薦めると、「で、お前はSなの?Mなの?」と聞かれてしまうそうですが、これはそんな単純な物語ではない。一番の肝は佐助が春琴のために自ら視力を失うところで、この行動は一見マゾヒスティックな行動に見えるが、実は男性が女性を支配する究極的なやり方ではないか、という発表を聞いて、その解釈に沿ってもう一度読みたくなりました。

ちなみに、ビブリオバトルをしていると、既に読んだことがある本にはそれを理由に投票しない人がたまにいるのですが、ビブリオバトルの投票基準は「どの本が一番読みたくなったか?」であって、読んだことがあるかどうかは関係ありません。発表を聞いてもう一度読みたいと思ったら、それは「この本が読みたくなった」ということです。もし既に読んだことがあるから投票しないという人がいたら、その人はビブリオバトルに限らず、一度読んだ本はもう読む必要はないと思っている可能性があり、それは読書の仕方としてとてももったいない。本というのは何度も読むことでやっと気づくこともあるし、自分の体験や成長によっても受け取り方が変わるもの。また、このように自分にはない視点を他人からもらって読み直すのも、読み方を深める方法だと思います。

4番目は私で、NHK「クローズアップ現代」のキャスターを務めていた国谷裕子さんの著書を紹介しました。作り物ではない正確な情報を報道することの難しさを説明するのに、「例えば、このビブリオバトルの様子を写真に撮るときに、この5人が参加者の一部であるような構図を取れば、実際よりも人が来たように見せることもできてしまうけど、それは正確な情報か」と、広報用の写真の撮り方を悩ませるような話をしたりして(笑)。そんな話も出た後、イベント後に撮った写真は稲城市立図書館Twitterアカウントのこのイベント後のつぶやきにUPされているので、よかったらご覧ください。

そして、最後のバトラーとなった図書館職員さんは、書架整理の間に見つけて、しばし仕事を忘れて見入ってしまったという『世界の城塞都市』を紹介してくれました。ご自身が海外旅行をしたときに見た光景を思い出すとのお話でしたが、そうした思い出がなくても城塞都市を俯瞰した写真の美しさに見とれてしまうような本で、戦国時代がもっと続けばもっと美しいお城が増えたのではという考えを持つ著者が書いた解説部分も面白そうでした。

この本のディスカッションタイムは、日本の城塞都市にも話が及んで興味深い内容になりました。この本には日本の城塞都市は載っていない、というより、日本に残っている城塞都市はないと言っていいと思うのですが、日本にも平城京や平安京など囲まれた都市はあったわけです。たとえ、本に掲載されているような素敵な城塞都市があったとしても、東京だったら平気で街並みを壊して高層ビルを建ててしまうのではという話も出て、日本の建築文化についても考えさせられました。

1番手 『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦
2番手 『ざんねんな偉人伝』真山知幸
3番手★『春琴抄』谷崎潤一郎
4番手 『キャスターという仕事』国谷裕子
5番手 『世界の城塞都市』千田嘉博
★がチャンプ本

長くなってしまいましたが、全員が持ち寄った本を紹介した後、いっせのせで指差し投票をし、『春琴抄』がチャンプ本に選ばれました。私も『春琴抄』に投票しましたが、この本はもちろん、紹介された本は全て読んでみたくなります。こうやって本を紹介しあうイベントは、単純に知らなかった本を紹介してもらえるだけでなく、私にとっての『夜は短し歩けよ乙女』のように、自分には合わないと決めつけてしまった本について、その思い込みを壊してもらえたり、『春琴抄』のように、既に読んだことがある本について、自分とは違う読み方を教えてもらえるのが面白い。ある意味、投票してチャンプ本が決まったところでこのゲームが終わるのではなく、ここで話したことを受けてその本を読んでみるところまでビブリオバトルというゲームが続いているような気がします。

§ 本の話だけでなく、話題が広がる楽しさ

これまでの文章だと、本の話を楽しむイベントという色合いが濃い印象を受けた人もいると思いますが、ビブリオバトルは「人を通して本を知る.本を通して人を知る」をキャッチコピーにしているコミュニケーションゲーム。本をきっかけに集まったところから、話題があちこち広がっていくのが楽しいんです。

例えば、この日参加した大学生の2人が所属するそれぞれの団体は、大学図書館のサポーターという大きなくくりでは共通していますが、活動の在り方がかなり違うものだそう。2人の話を聞いていると、互いに相手の在り方を羨ましいと思いつつ、自分の持つメリットを活かして活動している様子が垣間見えるんです。

帝京大学メディアライブラリーセンター 共読サポーターズさんは、この活動に対する大学側の体制もしっかりしていて、メンバーも多い。対して、桜美林大学図書館読書運動プロジェクト実行委員会さんは、帝京大学と比べると、委員会と大学側との連携が弱くてメンバーも少ないけど、自由に、そして自主的に活動している様子。…と2つの団体へのリンクを貼って、ページが開くか確認したら、偶然にもこの記事を書いている今日(2018年2月15日)、桜美林大学図書館読書運動プロジェクト実行委員会さんが、共読サポーターズさんに帝京大学八王子キャンパスの図書館を案内してもらっているというつぶやきが載っているではないですか。横のつながりが深まっていく様子を目の当たりにした気分です。

また、このビブリオバトルの途中で地震が起きたんです。それほど強い地震ではなかったので、一応職員さんが館内を巡回して無事を確認した後にバトルを続けましたが、これをきっかけに、大震災のときにはどこにいてどんな様子だったという話題もあがりました。あのときどう感じたかという感情を、7年経った今でも皆がありありと語れること自体が、あの震災の衝撃を物語っているとあらためて感じました。

稲城市立中央図書館ビブリオバトル 2018年1月5日 参加記念品

こんな風に、本のことも、本以外のこともたくさん話して、楽しい時間でした。参加の記念に稲城市の公式イメージキャラクター「稲城なしのすけ」のグッズまでいただき(写真)、稲城熱も高まりました(笑)。なしのすけくんは以前から稲城市立中央図書館の入口付近や地域資料の棚を飾ってきましたが、2017年4月に中央図書館の最寄り駅・南多摩駅に大きな「稲城なしのすけ時計台」ができ、ますます活躍の場を広げています。南多摩駅から中央図書館へお越しの際は、図書館がある方向とは反対側の北口ロータリーも覗いてみてください。

あたらめて振り返ると、大学図書館のサポーターさん、稲城市立図書館の職員さん、私は一人で勝手にしているだけですが公立図書館を巡るサイトを運営しているので、偶然にも図書館に関わる活動をしている人が集まった回でした。次の開催はまだ決まっていないようですが、どんな人とお話しできるか次も楽しみです。ご興味ある方は、稲城市立図書館のウェブサイトツイッターアカウントFacebookページなどを見て、次回開催の際にぜひご参加ください。一緒にビブリオバトルを楽しみましょう。