図書館探検ツアー ~きて・みて・ふれて~
visit:2009/11/12
東京都立中央図書館では、2009年度の後半(9月から3月)、月1回ペースで「図書館探検ツアー ~きて・みて・ふれて~」を開催しています。私もさっそく申し込んで、11月12日の回に行ってきました。
当日は、入口を入った受付のそばに、「図書館探検ツアー」と印刷された紙を持った職員さんがいらっしゃいまして、参加者だと名乗ると、4階に集合場所があるのでそこに行ってくれとのこと。4階の階段あがって右に折れ込んだところにある第三研修室が集合場所で、定員15名の参加者が2グループに分かれています。受付で私が割り振られたA班は、上の階から下の階へと回るルート。A班は、ご家族で参加した組の中にお父さんと息子さんがいる以外は、全て女性という編成です。B班の方は、もう少し男性比が高かったですね。
ツアーに回る前に、キャンセルが出た分の欠員募集を館内放送で行い、5名募集で2名参加されたんだったかな。そう、このツアー、既に最終回分まで満員になっていますが、このように当日キャンセル分の欠員募集を行うんです。なので、参加したいけど既に満員だった、、、という方も、当日とりあえず来てみたら、キャンセル分の募集で参加できるかもしれませんよ。
A班の最初の探検先は特別文庫室。古地図や錦絵、漢籍、写本、等々の古い資料を所蔵してある部屋で、普段は閉架から資料を請求して閲覧する部屋ですが、ツアーでは閉架書庫手前の事務室の様子を見せていただきました。ここの書庫は、土足禁止・スリッパ履き替え必須の、厳重に管理された書庫なので、ツアーでも外から覗くだけ。
その替わりに、事務室のテーブルに資料のいくつかを広げて、職員さんが説明してくださいました。現在放送の大河ドラマ「天地人」に関連する資料や、地名をなぞなぞにして表示してある地図、昔の料理本など。その見せていただいた料理本は、料理本といってももちろん和綴じの資料で、挿絵などもなく文章のみ。日本で始めてカレーの作り方の記述がある資料で、材料として蛙が入っているのです!
こういう閉架の施設は、これというみたい資料が定まっていないとなかなか使いにくいように思ってしまうのですが、「天地人に関係するものがみたい」「坂本竜馬に関係する面白い資料を探している」等の漠然とした要望にも応じてくれるはず。こちらが自分でハードルを作ってしまわずに、もっと気軽に使えるようになりたいと思います。とりあえず、地名をなぞなぞにして表示している地図を、いつかもっとじっくり見てみたいなあ。
5階の特別文庫室から、4階の企画展示室・グループ閲覧室にちょっと寄った後に、3階の視覚障害者サービス室へ。視覚障害者用の資料としては、点字資料もありますが、特にご高齢になってから視力を失った方などは、それから新しく点字を覚えるのも大変ということで、音声資料がよく活用されているのだそうです。
私、朗読CD等とデイジー資料(デジタル録音図書)の違いがよくわかっていなかったのですが、デイジー資料は部分部分の構成が細かいというか、例えば朗読CDだったら、CDでいう1曲にあたる区切りが比較的大きいところ、デイジー資料はもっと細かくて、ピンポイントで読みたい場所に飛べるように作られているのですね。読む場所を指定するのに、章番号で指定するだけでなく、ページ数でも指定できたり。
また、点字資料ももちろんあります。今年は点字考案者ルイ・ブライユ生誕200年の年であると同時に、日本点字翻案者の石川倉次の生誕150年の年でもあるそうですよ。参考に、ということで、点字一覧シートをいただいたのですが、私、長年の謎が解けました。街で点字を見るにつけ、2の6乗、つまり64パターンしかない記号でどうやって、かな・数字・アルファベット全てを表示するんだろうと思っていたのですが、アルファベットや数字をあらわす際には、「次の文字はアルファベットだ」「次の文字は数字だ」という記号を入れるんですね。「あ」「a」「1」をあらわす記号は一緒で、「次の文字はアルファベットだ」+「あ」=「a」と読む感じで。点字をご存知の方には「何を今更」でしょうが、私にとっては新しい知識。
座っての説明の後、対面朗読室や資料のための録音をする部屋を見学したのですが、辞書・辞典類があちこちに置いてありました。ちゃんとした録音資料を作るには、正しい読み方・イントネーションはもちろん、意味もある程度わかっていないといけないですもんね。よく考えれば当たり前なのですが、ただ音声にすればいいというものではない難しさが伝わってきました。
3階の視覚障害者サービス室のあと、2階の社会・自然科学系資料・閲覧室はさっと見て、1階へ。1階はビジネス情報コーナー、法律情報コーナー、健康・医療情報コーナー、新聞閲覧コーナー、都市・東京情報コーナーと、実に様々なコーナーがあります。
私はこれまで、都立中央図書館に来ても、1階のビジネス情報コーナーと5階のカフェテリアのみしか利用したことがなかったので、存在を知ってた1階の他のコーナーを見て、やはり都立中央だけあってすごいなあとあらためて実感しました。
例えば、健康・医療情報コーナーの中でも一番奥の棚にあたる闘病記コーナー。ここはとにかく分類が細かく、例えば癌の闘病記でも「○○癌」「○○癌」といった具合いに、本当に細かく分かれているのです。人の身体は全く同じではないので、同じ病気だからって同じようになるとは限らないけど、やはり自分や周囲の人がかかった病に近い人の闘病記を読みたいというニーズはありますよね。
都市・東京情報コーナーも、初めて足を踏み入れたのですが、東京のタウン誌や書籍はもちろん、世界の他の都市に関する資料もあるんですね。だから、単に東京の情報が得られるだけでなく、「東京が他の都市に比べてどんな都市か」ということを考察できるコーナーになっている。私、このコーナーに一年間くらい幽閉されても構わない、いや、一年じゃ足りないかも(笑)。
1階や地下書庫で、溢れんばかりの資料や巻物などのちょっと変わった形の資料などを見つつ、たどり着いたのが地下1階の資料保全室。古い資料の修復を行う部屋で、修復すべき資料や修復に使うさまざまな紙に囲まれている部屋です。実際に和本を修復しているところを見学させていただきました。
和本の傷みはほとんど虫食いによるもので、紙そのものでいえば、酸性紙の方が和紙よりよほど弱いんですね。修復の対象になっていた資料も、虫食い部分以外は本当にきれいでしたもん。修復方法としては、裏から和紙をあてて貼るのですが、小麦のでんぷん100%の糊を使っていて、水に濡らせば修復で貼った紙がまた剥がれるのだとか。
実はこれが大事で、後々に更に修復する必要がでたときに、簡単に剥がせるようにそうしているのだそうです。実際、現在修復しているものの中に、それ以前にしてある修復がひどくて、更に修復しようとする際に手の施しように困るものがあるのだとか。「未来永劫に修復せずに済むもの」を作るのは不可能で、だから「この先修復する際に、容易に修復できるもの」にしよう、という発想なんですね。
また、修復のための和紙も、きれいに切るのではなく、手でちぎって、わざと切り口に繊維が出るようにする。それによって、修復したところと修復していないところの差がはっきりしすぎない、いわば緩衝地のような状態になるようにしているのだそうです。
話を聞いて、実際の作業を見た後には、おみやげにしおり作り。この資料保全室であまっている紙に穴をあけて、紐をつけるという簡単なもの。そう、この部屋、端切れになってしまった紙が、そりゃもうたくさんあるんです。見ていてすごくもったいなく、職員さんももったいないと思っているからこそ、おみやげに使うようにしてくれているのですが、何かこれ、もっとうまく再利用できそうな気がします。都内の保育園・幼稚園等に、工作材料として欲しいところを募集してみてもいいのでは。
その後は、また地下の書庫をいろいろ見つつ、最初の第三研修室に戻って、ツアー終了。その後、アンケートを書いたり、クイズを出して正解者の中なら一人に景品が出たり、ご挨拶をしたりして、解散です。集合から解散まで2時間のツアーでした。
いろいろ見学しての印象は、実物としての「本」というか、本をはじめとする資料というのは、書かれている内容だけでなく、紙の質や綴じ方なども含めて資料なんだなあということ。思えば、百年以上前の絶対触れあうことができないはずの人が、書いたり読んだりしたものが実物として存在している、今私がそれを見ているように昔の誰かもそれを見ていた、って想像するとすごいことだと思うんですよね。
とりあえず、既に定員に達しているこの図書館探検ツアーですが、先に書いたように、当日キャンセル空き分を募集したりもするし、これからもこうしたツアーを企画しているのだそうです。ちょっとでも興味のある方は、ぜひ参加してみてください!