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松江図書館さんぽ 銀座に住むのはまだ早いので江戸川区

visit:2026/01/03

2026年最初の図書館は江戸川区の松江図書館へ。年末年始開館状況一覧をもう少し見やすいスタイルにしようと思って作ったサンプルページをiOS・Safariの実機で確認したく、松江図書館はネット閲覧サービスをiPadで提供していた記憶があったので、それを使って確認しようと来たのだ。

今日は1月3日、今日開いている東京都内の図書館は江戸川区のほとんどの館、葛飾区の地区図書館ではない図書館、中央区の全館である。去年の1月4日に葛飾区立上小松図書館に行ったときも新年めいた雰囲気を特に感じなかったが、今日の松江図書館もそんな雰囲気だ。中身がわからない袋詰めの状態で本を貸し出す「本の福袋」のようなお正月らしい企画はしているのだが、来ている人のほとんどは勉強しに来た中高生で、それほど多くない閲覧席は利用率8割程度、新聞・雑誌を読むような人はいなくて、書架で本を探すような人は私がいた2時間のなかで1,2人といった具合である。

カウンターでiPadでのネット閲覧がしたい旨を伝えて手続きをし、渡されたタブレットを使おうとしたらiPadではない。思い返すと、事前に電話で確認したときも、カウンターで申し込んだときも、私の「iPadで~」に対して微妙な反応だったのだ。千代田区の日比谷図書文化館もiPadでのネット閲覧サービスを2019年度で終了しており、都内にはもうiPadを使ったネット閲覧サービスを行っている図書館はないのかもしれない。

せっかくなので、そのタブレットで使われている見たことのないブラウザでこのサイトが思い通りに表示されているかを確認してみる。トップページも問題なし、江戸川区のページも問題なし、では松江図書館のページはと開いてみたら何とブロックされて開けない。江戸川区では松江と清新町のページが図書館のネット閲覧サービスで閲覧してもいいページだと思われていないようだ。今日の目的のために家を出る直前に作ったサンプルページも同様に見られないことから察するに、NGページとして登録されているというよりはOKページに登録されていないがためのブロックという気がする。どちらの図書館ページも不健全なことが書いてあるわけではないので、それが浸透することを願うばかりだ。

さて、松江図書館では江戸川区が登場する本の背に江戸川区の紋章のラベルが貼ってある。同じような工夫は北区立図書館や荒川区立尾久図書館でもやっており、私はこの工夫が好きだ。その本は全国で売られ買われているだろうが、このラベルが付くことによってその図書館オリジナルのご当地蔵書になったような感覚になる。

更にそうした本を一カ所に集めてコーナーを作らずに、他の本と一緒に内容で分類しているのもいい。図書館はややもするとやたらとコーナーを作って特色を出したがるが、そうやって他の本と切り離してしまうことでそのコーナーのテーマに興味のない人からはかえって本を遠ざけてしまうことにもなる。一方、上に挙げた図書館ではラベルを貼ったうえで、小説なら小説の棚、社会科学なら社会科学の棚とジャンルに応じた棚に入れているので、そのジャンルの本を探している人にも目に入る、ご当地本を知りたい人にもそうだとわかるかたちになっている。

というわけで今日も江戸川区本を探そうと、まずは小説の棚を歩いてみる。東野圭吾『真夏の方程式』に江戸川区ラベルが貼ってあり、映画で見た限りでは東京から離れた海辺の町で事件が起きる内容だったような…と立ち読みしてみると、事件の発端となる昔々の出来事があり、関係者がその当時住んでいたアパートが江戸川区とある。東野圭吾では『容疑者Xの献身』も江戸川区ラベルが貼ってあった記憶があるが、今は借りられているようでここにはない。

その他には、永井するみ『ダブル』、西村賢太『二度はゆけぬ町の地図』、樋口有介『猿の悲しみ』、山口恵以子『あしたの朝子』なども江戸川区ラベル付きだ。松江図書館では西村賢太の棚見出しがあってほっとしてしまう。というのも、江戸川区のいくつかの図書館、具体的にはこの松江図書館もそうだし中央図書館もそうなのだが、小説本の並べ方として「著者名頭文字ごとに、著者名で見出しをつけている著者の本を著者名五十音順に並べた後に、その他の著者の本を著者名五十音順に並べる」という方法を採用している。見出しがあるということは著名であったり利用が多かったりすることを意味していると思うが、見出しをつけるほどの作家とそうでない作家を差別、は言い過ぎなので区別としておこう、とにかく見出しの有無によって場所が変わる並べ方をしているのだ。

西村賢太は江戸川区出身の芥川賞作家である。しかし私が直近で江戸川区中央図書館に行った2025年5月時点では西村賢太は棚見出しがなく「その他の作家」扱いだった。悲哀を感じつつ棚を後にした経緯があったので、松江図書館で西村賢太の見出しがあることが嬉しくなってしまったのだ。

引き続き著者名五十音順の先頭へ向かって棚を見ていくと、集中して江戸川区ラベル本が並んでいる箇所があり、近付いてみると小野寺史宜の著作だ。江東区砂町に住んでいる私としては小野寺史宜といえば真っ先に思い浮かぶのが砂町銀座を舞台にした『ひと』だがそれも含めて他に『まち』『うたう』『ライフ』『日比野豆腐店』『タクジョ』『町なか番外地』と計7冊に江戸川区ラベルがついている。『ひと』はいつか読もうと思っているまま未読なのだが、この辺りを中心舞台として小説を書く人だったのか。

その後小説以外の棚も見て回ると、日記・紀行(915)の棚で江戸川区本が2冊並んでいるのに出くわす。1冊は大森望『狂乱西葛西日記20世紀remix』で大森氏が西葛西の住民なのは周知の事実。もう1冊はタイトルが『銀座に住むのはまだ早い』とあり、著者名が江戸川区ラベルと分類ラベルで隠れてしまっていて、書名の真下にラベルがあるのが「銀座に住むのはまだ早いので江戸川区に住んでいる」と言っているようで面白い。誰が書いているのだろうと取ってみるとこちらも小野寺史宜の著書だ。サイト・ SUUMOタウンの企画で23区それぞれで家賃5万円で住めそうな町を巡る連載をしたのをまとめた本だそうだが、連載が始まった2020年11月時点で千葉県在住とのこと。千葉からの入口として馴染みがあっての小説内江戸川区出現率の高さということか。

『銀座に住む~』では江戸川区の家賃5万円で住めそうな町として小岩を巡っている。住まい探しという姿勢で町を歩くなかで小岩図書館の場所もしっかり確認しているのを読み、親近感が湧いてしまう。そして、東小岩には『今夜』の誰々が住んでいる、北小岩には『今夜』の誰々が住んでいると、自作の登場人物を思うくだりが面白い。町の様子を作品に取り込んで執筆している作家には、こんな街歩きの視点があるのか。

すっかり気に入って今日はこれを借りて帰ることにする。江戸川区の章に限らず住まい探しの体で地域の図書館を見て回っているようなのでそこも楽しみだ。