葛飾区立上小松図書館さんぽ 1か所にまとまっているとは限らない
2025年最初の図書館利用は葛飾区立上小松図書館。一昨年10月に葛飾区で開設された新しいタイプの施設・新小岩図書サービスカウンターを利用してみたい、でもこの施設はセルフ予約受取と返却だけができる施設でここを受取館に予約しないと利用できない、そして葛飾区立図書館のカードを紛失したまま何もしていない今の私としては、まず図書館に行ってカードを作り直さないといけない。という経緯で、江東区に住む私にとって一番近い葛飾区立図書館の上小松図書館に来たのである。
新小岩駅で降りるのは、新小岩駅東北広場図書返却ポストを見に来たのが最後で、はっきりとは覚えていないが10年以上前のようである。上小松図書館の方向である北口を出るとおぼろげな記憶と比べて何だかこざっぱりした雰囲気。イトーヨーカドーがあったような…と思ったのだが、それは新小岩ではなく小岩駅の方らしい。路面が舗装されて歩きやすい広場になっている、でもランドマーク的な建物があるわけではないので駅前としては地味。新小岩駅の主役はこちらではなく南口ということなのか?
上小松図書館は新小岩駅から北へ向かって、蔵前橋通りまで出たら右方向、南東へ進んで10分程度歩いた辺り。直方体のシンプルな都営アパートの1階に、シンプルな長方形の区画を使って設置された図書館だ。設計面での面白さはないけど、新聞・雑誌や事典類などが飛び出した位置にある以外はほぼ全ての棚が同じ向きに並んで日本十進分類法の順に本が入っているので、本の場所がわかりやすい、はず。
特にこれを読みたいという目的はないのであてもなく歩き始めて、典厩五郎『探偵大杉栄の正月』が目に入り、これ面白かったなあと小説の棚へ。ふと目を閲覧机に向けると、7割ほど埋まっている。三が日が過ぎて冬休みの終わりに近付く1月4日、書架側から見ると皆がこちらに背を向けているので年齢が定かではないけど、学生より社会人の方が多そうな印象。去年までの上小松図書館は1月3日まで年始休み、4日から開館だったが、今年は1月3日から開いているのだ。そのせいか新年めいた雰囲気はなく、通常モードという感じ。
小説の棚をぶらぶら見るうちに、あれ?複数の作家によるオムニバス小説本がないと気付く。オムニバス小説は、書名をとって著者名五十音順の並びに入れたり、出版社名をとって著者名五十音順の並びに入れたり、図書館によって置き場所が分かれる本なのだが、ざっと見た限りどこにもない。
カウンターそばの検索機まで戻って、オムニバス小説本に書いていそうな作家名で検索し、分類記号から本を探してみたら、小説の棚の奥に外国文学の棚があり、その奥に全集やエッセイがあって、その奥にオムニバス小説本と、かなり離れた位置にあった。ついでに言うと、ハヤカワポケットミステリも小説の棚から離れた場所、全集の棚のそばにあったので全集的な本として扱っているということなのか、ハヤカワポケットミステリでまとめられた棚にある。上小松図書館に限らないが、何か面白い小説はないかと探すとしても、小説の棚を見てそれで全てと思うなかれ。文庫本の小説もまた別の棚にあるし、どんなジャンルでも1か所にまとまっているとは限らないのだ。
そのまま奥へ奥へと、日本十進分類をさかのぼるかたちで本棚を散歩する。673.7(たぶん、流通小売業)の棚で、著者名五十音順に並べているのに、『ニトリの働き方』『奇跡の小売り王国「北海道企業」はなぜ強いのか』が隣同士、『思想としての「無印良品」』『無印良品の教え』が隣同士で、内容で揃えたような並びに偶然なっているのが面白い。何となくその4冊には手が伸びず、そのそばにあった『<放置自転車ビジネス>開業マニュアル』が気になって手に取ってみた。ブルーオーシャンを見つけて成功した経緯が書かれた2013年発行の本、さて、それから10年以上経った今のブルーオーシャンは何だろう。
更に奥へ奥へと進んで、図書館に関する本の棚で『「読書の自由」を奪うのは誰か : 「自由宣言」と蔵書選択』が表紙を見せる向きで置いてあるのが目に留まる。こういう本を展示コーナーのような目立つところではなく、本棚の片隅、図書館に関する本を読もうとしている人が見る棚で面陳していることに図書館としての気概を感じる。
その上、総記の段に目線を向けたところで、『在野研究ビギナーズ』を発見。この本は書評を読んでいつか読もうと思っていのだった。拾い読みをして、これは図書館で借りて読んで返して終わりという本ではなく、買ってページを行ったり来たりしながらじっくり読むべき本だと思い、今日借りるのはやめておくことにする。こういうのは気を付けないと、「いつかきちんと読むつもり」という名の先延ばしになりかねないんだよな。そもそもこの本は2019年発行、書評を読んだのもきっとその頃、ということは既に5年近く先延ばしにしているわけで…。うん、今日手に取ったことをきっかけに読もうと決意して図書館を出た。