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有明こども図書館さんぽ 寒い部屋で極地旅行の本を読む

visit:2025/12/16

工事の都合で家にいられず仕事もできず、有明こども図書館の学習ブースで読書に集中しようかと自転車で向かう。途中ふと思いついて、今まで一度も行ったことがない豊洲市場でお昼を食べてみようかと寄ったがどこも値段が高く、その値段に見合う料理が本当に出るのか疑う気持ちが沸き起こってなかなか店が決まらない。結局選んだ天ぷらそばは、昨晩自分で茹でた株式会社ばくばくの黒蕎麦の方が美味しかったと思うも、天ぷらは美味しかったのでよしとする。

江東区は砂町に住む私が有明や台場に行く場合、公共交通機関だとすんなり行ける感じのルートがなく、シェアサイクルを使って電動自転車で行くか、電動ではない自分の自転車で行くかの2択である。そのルートは9割方豊洲市場を通るルート、残り1割は豊洲市場より手前で左折して有明アリーナ前を通るルートでこちらも木遣り橋からの眺めがよくて好きなのだが、無意識に選んでしまうのが豊洲市場を通るルートだ。だから何度も通っているのにこれまでずっと寄ることもなかったのは、どうせ観光客向けの割高な施設だろうと思っていたから。そんなところ、今日は朝御飯もカフェで済ませたのだが、そのとき隣にいた仕事仲間らしき集団が「高市発言からの日中関係悪化で、これまで中国人観光客が多かったところが空いているらしい」と話していたのが耳に入った、それが頭に残っていて豊洲市場が見えてきたときについ寄ってしまったのである。

今になって思うと、元々どの地域という偏りなく外国人観光客がいる観光スポットなので特に今空いているということもなく、中国語を話している人もいたが中国人の住民も多い地域だということを考えると観光客なのか住民なのかわからず、朝聞きかじった「これまで中国人観光客が多かったところが空いているらしい」を検証するには豊洲市場は適していない。いや別に検証するために行ったわけではないが、自分から行こうとは思わないところにこんなきっかけで行ってみるのもいいだろう。

さて、豊洲市場を出て有明こども図書館へ。有明こども図書館の学習ブースは全体の半分が隣席との仕切りが大きいタイプで、とても集中できるのだ。東京臨海エリアには更に多様なタイプの学習席を設置している晴海図書館があるが、人気があり座席の競争率も高い。それと比べて、規模が小さく、名前もこども向け施設っぽい、晴海フラッグの住宅の多さに比べると有明こども図書館付近は物流施設・商業施設・スポーツ施設が多くて住民は比較的少ないなどの理由で有明こども図書館の方が利用者が少なく、席を取りやすいのだ。

と思って学習ブースに入ろうとすると、11月から3月までは最大2時間ごとの受付制にするという看板が立っている。後で有明こども図書館のX(旧twitter)をさかのぼってみたところ、今年の夏休みから受付制を始めたようだ。そうかここも知られてしまったかという残念な気持ちが半分、ここの競争率の高さが常態化して拡張してくれないかという期待が半分、というのはここは360度望める展望台のうちレストランだったところを図書館に改修した施設、いっそ展望台部分も含めて「臨海地域の景色が望める図書館」にし、資料もこども向けに限定せず一般向けにも広げ、学習ブースも増やして…という妄想が私の頭の中にあるのだ。受付制の説明を前に、妄想が膨らんでしまう。

受付をすると、空調が止まっていて寒いので膝掛けを使うかと聞かれる。有明こども図書館は有明スポーツセンターの中にあるのだが、このスポーツセンターは隣の有明清掃工場の熱源を使って空調を動かしており、清掃工場が稼働停止すると空調が止まってしまう、今日もその状態だというのだ。そういえば前にもそんな注意書きを見たことがある、つまりこの図書館はときどきそういう状態になるのである。来る前に有明こども図書館のX(旧twitter)を確認しておけばよかったと思うが時すでに遅し、せっかく来たので利用することにする。

席に着いて、マフラーは外すもコードは脱がない方がいい気がして、しばらくはその状態で本を読む。そのうち寒くなってきて、マフラーを巻く。ちょうど、という言葉が合っているのかわからないが、このとき読んだのが太陽が昇らない冬に北の極地を旅する『極夜行』で、この本で描かれた世界に比べたら断然温かい、でも普段暖房の恩恵を当たり前のように受けている身には寒いこの場所でこの本を読んでいる状況をどう考えたらいいのかわからなくなる。地域の天候をよく知る人に今は止めた方がいいと言われながらも出発した著者がそれまでの冒険歴による自信過剰で自然を軽視しているように思いつつ、自分もせっかく来たのだからと暖房が効かない場所で読書している。

そうしていると学習ブースを使っている人の1人が寝ていびきをかきだして、うるさいと思う気持ち、この寒い空間で寝たら風邪引くよという思い、職員に言って起こしてもらった方がいい気がするが動くのが面倒臭いという気持ちが混ざったまま結局何もせずに読書を続けているうちに私の座席利用時間が終了。その頃にはいびきも終わっていた。

せっかく来て座席だけの利用ももったいないので雑誌を物色。整理整頓の特集が目に留まって『天然生活』2026年1月号を開くが、いざページをめくるとその特集よりも鍋料理・スープ料理の写真に目を奪われる。今日の晩御飯は鍋にしよう、今冷蔵庫にあるもので鍋ができるはず。

次に展示コーナーにあった『タワマン理事長』を手に取る。寒い部屋で極地旅行の本を読んだ後の、タワマンの多い地域でタワマン本読書だと思いながら、トラブルが次々と発生する体験記を興味深く読む。このときには気付かなかったが、児童向け中心のこの図書館であんな本を所蔵しているのかと不思議に思い、家に着いてから検索してみたら、有明こども図書館での所蔵はなく、東陽江東深川豊洲砂町東雲で所蔵となっている。有明こどもは豊洲の分館扱いなので、おそらく豊洲の所蔵を持ってきたのだろう。そういうかたちで大人向けの本を展示することがあるのか、そのつもりで展示コーナーをもっとよく見ることにしよう。

図書館を出るとすっかり陽も落ちて寒く、家に着けば鍋で温まれると自分を鼓舞して、自転車を漕いだ。