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上十条図書館さんぽ つれない泉麻人を読む

visit:2024/10/25

今日は北区の上十条図書館へ。2024年11月24日を最後に上十条図書館が閉館してしまうので、最後の姿を記憶に残して置こうと思って。最寄り駅の十条駅を降りると、目の前にどーんとタワーマンションがそびえ立ち、十条がこんなことになっている!という衝撃を受ける。そう、このタワマンに繋がる複合施設の中に北区立図書館の窓口業務施設が新設される予定で、その引き換えのようなかたちで上十条図書館がなくなってしまうのである。

上十条図書館へ行くには、駅前ロータリーに沿ってタワマン・複合施設を回り込むのだが、複合施設の裏手に出たところでふと見上げると、「J&L」のロゴが既に入っている。これが窓口業務施設が入る公益施設の名前である。図書館愛好家としては上十条図書館がこの新しい建物に移ればよかったのにと思ってしまうが、窓口業務だけで貸し出せる本はおかない、貸し出せないけど閲覧できる本を1万冊置く、3Dプリンターや音楽・動画編集ができる設備を置くという計画になっており、新しいタイプの公共施設として期待したいところ。

さて、これからの施設をあとにして、現役として開いている上十条図書館へ。といっても、行くのは10年ぶりなもので記憶だけで辿り着くことはできず、自分が書いた訪問記の道のりの記述を参考にする。材木屋さんの隣の駐車場の先で左へ曲がるとあるが、この駐車場も建設中のマンションになっている。最近はもう、隙あらばマンションが建つと言っても過言ではないくらいだな。私が住む江東区も同様です。

上十条図書館はそれだけで単体の建物ではなく、ふれあい館という公民館的施設と一緒になった上十条区民センターの中にあるというかたちである。区民センターの駐輪場にある年季の入ったプレートに「上十条2・3・4丁目 十条仲原1丁目 板橋区 からくる人は、自転車置場がセマイため、歩いてくるようにおねがいします。」とあるのを発見。近い人は自転車ではなく歩いてきて欲しいという主旨で、そうかここはもう少し行けば板橋区なのかと気付かされる。地図を見ると、確かに南側に200mも行けば板橋区。800m歩けば東板橋図書館とのハシゴができる。

このプレート自体はおそらく開館当初の賑わっていた時期に作られたのだろう、少なくとも今日はこのお願いが何のためにあるのかピンとこないほどにしか自転車がない。1985年、昭和でいえば60年に開館した施設の賑わっていた昔の面影を見た気分になり、何だか切なくなってしまった。

階段を上がって3階の上十条図書館へ。年月を感じる設備が現役で使われているなかにいるせいか、雑誌コーナーで「暮らしの手帖」が目に留まる。もちろんこの図書館でChatGPTに関する本を読む人だっているだろうだが、図書館巡りとしてよそからきた私がこの図書館の雰囲気のなかで読みたくなるものとしてはそちらの気分。書店でつけてくれるブックカバーの特集記事などあり、面白く読む。

そこからの連想からか文房具の本が読みたくなり一般書架へ。図書館で文房具の本がある棚は58:製造工業、上十条図書館では一般書架入って左側の一画にある。『愛しき駄文具』は、優れた文具=仕事がはかどる文具、駄目文具=仕事そっちのけで遊んでしまう文具とし、その愛しき駄目文具を紹介するもので、ページをめくりながらニヤニヤしてしまう。『ニッポン全国文房具店ガイド』『ときめく文房具図鑑』などで、愛用していたダイゴー・タータンノートが製造中止となってしまった後これぞというノートが見つからずに困っている私に可能性を感じさせるノートを発見し、スマホにメモする。

文房具の本と同じ段に棚から飛び出すかたちで入っていた『テツヤ85歳、孫の服を着てみたら思ったよりイケてた。』が目に入り、確かにイケてると思いながら一気読み。この本は一般的な判型ではなく横長の本で、こうした本は収納には困るけど、そうやって棚から飛び出してしまうことによって存在に気付けるという面もある。

そこから後ろに振り返った棚で泉麻人『東京いつもの喫茶店』に北区マークが貼られているのが目に入る。北区立図書館では、北区が登場する蔵書に北区マーク(北区ウェブサイトの左上にあるマーク)が貼っていて、どこに北区が登場するのかと本を読むのは北区立図書館での読書の楽しみの一つ。目次を見ると登場するのは北区立中央図書館にあったアトリエ・ド・リーブではないか。更にその項を読むに、中央図書館に行く前に北区立文化センターにも寄っている。文化センターといえば今の中央図書館ができる前まで文化センター図書館があったところで、喫茶店をめぐる散歩でありながら図書館散歩にもなっている。期待をこめてその先を読み進めていくと…

何と、泉さん、アトリエ・ド・リーブでお茶をしておきながら、中央図書館の中には足を踏み入れてないようである。いや、書かなかっただけで入った可能性もあるが、文章の中では「入った喫茶店がある場所」程度の扱い。そのときに入らなかっただけで入ったことはあるんだろうけど、つれない仕打ち…。

そのつれなさを補えるかどうかわからないけど、閉まる前にもう一度、今度は上十条図書館・中央図書館の図書館巡りをしようかと思う。道のりにして上十条図書館から中央図書館までは道のりで1.3km程度、ちょうどいいウォーキングになるだろう。