笹塚図書館さんぽ 小さいからと侮るなかれ
渋谷区立図書館に行かねばならず、私にとっては都営新宿線1本で行ける笹塚図書館へ。今の場所に移転して規模が小さくなってしまったのが何だか残念で足が遠のいていたが、駅からの近さで言ったら駅そばのビルに入居している笹塚図書館が渋谷区で一番。当サイトの駅から近い東京都内の図書館リストでは徒歩0分ということにしているが、建物4階まであがる移動時間としては1分程度、エレベーターで上がる際の徒歩時間は合計しても1分未満で済むだろう。
商業施設の最上階の3階までお店を見ながらエスカレーターで上がり、ここから通用口みたいな階段で4階に行けたような…という曖昧な記憶を頼りに歩いていると、雑貨店「アートマン」の一画にエレベーター・階段があるのを発見。上がっていく階段の天井が妙に低い様子にも覚えがある。辿り着いた4階には、笹塚図書館と笹塚駅前区民施設のほか、小さな屋上庭園もある。今日は晴天で屋上庭園で過ごすにもいい気温、入ってみると3,4人が思い思いのことをして過ごしている。
笹塚図書館は、2015年4月1日に現在の場所に移転している。前の場所が今どうなっているのかを調べてみたら、地域交流センター笹塚が建っていた。今の笹塚図書館は一般書架だけで児童書がなく、別の場所に笹塚こども図書館があるのだが、そちらにもこの先移転の予定がある。思えばこのサイトは2005年から運営しているが、渋谷区立図書館は10館※1のうち8館が移転・改築で2005年当時とは違う建物になっている。街並みもすぐに変わってしまう東京、せめて文章でその日そのときの様子を書いていきたい。
笹塚図書館は一般書架だけということもあり、シンプルかつコンパクトな空間だ。入口近くにカウンター、その先に進むと書架が広がっていて、窓際に閲覧席が並んでいる。閲覧席は座席管理システムを使って利用するかたちで、火曜の昼過ぎである今は35席中14席が埋まっている。書架も2,3人が点在する程度で、じっくり本棚を見るのにちょうどいい。
先日、荒川区立図書館では個人伝記(289)という区分を使っていないことに気付いてから注目している個人伝記の棚に行ってみる。荒川区では経営者の伝記は経営学の棚、政治家の伝記は政治学の棚といったように、個人の伝記はその人の活躍したジャンルに分類していた。さて、笹塚図書館はどうしているか。
奥の壁沿いの棚に個人伝記(289)があるが、これまで見てきた分類とは少し違う。これまで見て来た図書館では、少なくとも日本人/外国人、もっと細かい場合は日本人/東洋人/西洋人と、「個人伝記」の中で更に伝記で取り上げている人の国籍で分類する方式だったのが、笹塚図書館は国籍ごちゃまぜで取り上げた人の頭文字五十音順で並んでいるのだ。本の並びを見ていくと、オードリー・タン→織田信長→大村智→ミシェル・オバマ とか、渋沢栄一→ココ・シャネル→重光武雄→昭和天皇→ココ・シャネル※2→スティーブ・ジョブズ のように、時代やジャンルに加えて国籍もバラバラな並びになっていて面白い。
そこから左に振り返った位置にある外国小説の棚へ。笹塚図書館の外国小説の棚は、西洋の小説については英米小説もドイツ小説もフランス小説も一緒にして「F3」の分類、対して東洋の小説は中国の小説が「923」、それ以外の東洋(韓国やトルコ)の小説が「929」となっている。外国小説で全部をひとまとめにするのでもなく、言語別に細かく分けるのでもなく、「一部まとめ」方式とでもいえる分類方式だ。これって素直に考えるとなかなか変わった分類だと思うのだが、私の住む江東区も外国小説の文庫本に似たような傾向がある。それぞれ個別の経緯で「一部まとめ」方式になったのか、それとも過去にどこかで誰かが「一部まとめ方式もあり」という説を唱えてそれにならったのだろうかと想像してしまう。
面白そうな小説があれば借りようかなと思いながら著者姓名五十音順に並ぶ西洋小説(F3)の棚を辿っていくと、いつのまにか「F6」の分類に突入している。小説家であり政治家でもあるジェフリー・アーチャーが偽証罪で服役したときのことを書いた『獄中記 地獄篇』や、刑務所内の図書館の司書になった著者による『刑務所図書館の人びと』があるということは、ルポルタージュの分類だろう。『ワイルド・スワン』もここにあるのが目に入り、昔読んだはずなのに「中国の社会変化に翻弄される女性の話」程度の記憶しかない自分にがっかりする。最近の読書記憶力の低さといったら、既読のミステリを読むのに、謎が明かされたところで初読のように驚けるくらい。この記憶力の低下ぶりを嘆くべきか、既読の本を初読のように楽しめて幸せだと思うべきか、悩ましいところだ。
そこから入口に近づく側の棚へ行くと日本文学の棚。小説以外の本について、文学研究(N02)、文学辞典(N03)、短歌(N11)、俳句(N13)、戯曲(N26)、シナリオ(N27)等々、3桁の日本十進分類法とは別の区分を割り振っていることに気付く。「N04」に『日本エッセイ小史』『夢、ゆきかひて』『「笑い」はどこから来るのか?』といった本があるのは「日本文学に関する評論」という分類だろうか。
そこでふと気づいたことが一つ。実は今日の用事は、渋谷区立図書館から借りている『日本エッセイ小史』をもう一度借りることだったのだが、私が借りている本は「N04」という分類ではなかった気がする。鞄から取り出してみると中央図書館の蔵書で「サカ」というラベル、つまり同じ本が中央図書館ではエッセイとして分類されているのだ。確かにこの本は、昭和から現代辺りを中心にエッセイの潮流を追いつつも、あとがきには「体系的にエッセイの歴史を追ったわけではありません」「いわば"エッセイについてのエッセイ"なのです」とあり、評論とエッセイの中間くらいの内容である。分類が館によって分かれていることがこの本の立ち位置を示しているかのようだ。
最初に書いたように規模が小さい印象の笹塚図書館、いや、印象だけでなく実際に、渋谷区立図書館の中で代々木図書館、笹塚こども図書館に次いで3番目に蔵書が少ないのだが、その少ない書架さえ細かくみれば発見がある。図書館の本棚を見る目をもっと磨いていこうと思いつつ図書館を出た。