渋谷区立図書館 リフレッシュ氷川図書サービススポット
渋谷区立図書館 リフレッシュ氷川図書サービススポット 訪問記
渋谷区の施設で図書館の本を受取
渋谷区には2026年9月9日現在、図書館ではなく区の施設で図書館の本を受け取れる場所が1つだけあります。そのリフレッシュ氷川図書サービススポットを受取館にした予約本が届いたという連絡を受け、受け取りに行ってきました。
場所は渋谷の明治通り沿い、恵比寿方向へ行く途中にあるライフ渋谷東店の隣と言えば場所の見当がつく人も多いでしょう。そのライフ渋谷東店にとって渋谷側で隣接する建物がリフレッシュ氷川です。リフレッシュ氷川自体は地下1階から4階まである建物で、図書サービススポットは1階入口入ってすぐ左。入口から歩いて5歩くらいのところにリフレッシュ氷川の窓口があるのですが、その手前、入口から歩いて2歩のところに図書サービススポットがあるという位置関係です。きちんと設置された図書サービススポットというよりは、長テーブル、貸出用端末、検索機、低い可動棚2つという窓口業務を行うのに必要最低限のものだけを寄せ集めて業務を行っているような、仮設感漂うサービススポットです。
職員さんに図書館カードを提示すると、棚の中から私の予約本を取り出して貸出手続きをしてくれ、本を受け取って私の用事は終了。図書館の窓口機能だけを切り出した施設なので本棚はありません。渋谷区立図書館で本を予約するときに受取館をリフレッシュ氷川に指定すればこうして予約本を借りられるし、渋谷区立図書館の検索機が1台あるのでそれを使って検索・予約することもできます。施設手前の障害者駐車場の脇にブックポストがあり、建物が閉まっていても本を返せます。
なぜここに図書サービススポットが?
東京23区のうちいくつかでは、本棚が並ぶ図書館より設置コストが低い窓口業務だけの施設を増やすことで図書館サービスを充実させています。でも、渋谷区は今のところそのような方向には進んでいません。その渋谷区が渋谷の片隅でポツンと設置している図書サービススポットは何モノか。そこには渋谷図書館の終わりと始まりの物語…と言っては盛り過ぎかもしれませんが、ちょっとした経緯があります。
かつてはこの付近の図書館として、実践女子学園に隣接する場所に赤レンガの渋谷図書館がありました。坂の地形に沿うように建てられたユニークな造りの建物だったのですが、その造りが禍いとなったのか、空調設備故障が発生したときに修理が不可能と判断されて、2021年8月15日を最後に書架エリアへの立ち入りが禁止となりました。その後、渋谷図書館のカウンターだけを開けた渋谷図書館サービススポットと名前を変えて業務を遂行していましたが、それも2022年3月31日をもってついに閉鎖することになってしまいます。2022年4月26日からは渋谷図書館があった場所から國學院大學の敷地を越えた東にある白根記念渋谷区郷土博物館・文学館の一画に移転して白根図書サービススポットがスタート。しかし、白根記念渋谷区郷土博物館・文学館も2026年3月から総合改修工事に入ったため、図書サービススポットもまたもや閉鎖されてしまいます。では別の場所、ということで2026年4月2日から開設されたのがこのリフレッシュ氷川図書サービススポット。つまり、設備故障をきっかけに流浪の日々を送っている図書サービススポットなのです。
ただ、この流浪の旅にも終わる見込みがついています。現在、國學院大學敷地の南にある広尾中学校の老朽化工事に際して、図書館と中学校の複合施設を2028年度に開設する計画が進んでいます。この新図書館が開設されたらリフレッシュ氷川図書サービススポットがなくなるという情報を見たわけではありませんが、渋谷図書館からの経緯や、リフレッシュ氷川図書サービススポットの仮設感漂う佇まいを考えれば、新図書館ができるまでの繋ぎの施設と推測してほぼ間違いないでしょう。
この地域の人にとっては新しい図書館ができるまでもう少しの辛抱です。でも、それまで図書館を全く利用しないで新しい図書館を待つのではなく、ぜひこの図書サービススポットを通じて渋谷区立図書館を利用して欲しいです。
施設を通じて見える渋谷区のユニークな施策
このリフレッシュ氷川、私は図書サービススポットが設置されるまで施設の存在さえ知らなかったのですが、集会室や料理室、工作室、茶室などがある区民施設とのこと。渋谷区ウェブサイト内のリフレッシュ氷川の案内ページには「渋谷清掃工場の還元施設(区民利用施設)」とあるので、明治通りを挟んだ向こうの南側にある渋谷清掃工場、はっきり言ってしまうと住民には嫌がられる施設を受け入れてくれた地域住民へのお礼として建てられた施設のようです。
更に案内ページの使用申込を読むと、一般の団体は使用日の1か月前から使用申込ができるのに対し、渋谷清掃工場周辺地域の町会・自治会は3ヶ月前から使用申込ができるといったように、施設利用に対して清掃工場近くに住む人を優遇している。パッと思いつく限り、有明清掃工場そばの有明スポーツセンターや、杉並清掃工場そばの高井戸地域区民センター、どちらも図書館関連施設が入っているので私にとっては馴染みがあるのですが、どちらもそのようなことはしません。ChatGPTに東京都内の清掃工場についてその地域に絞って還元施設の利用を優遇する例があるかを聞いてみても、渋谷区のような例はないと言う。もっと調べれば他にも見つかるかもしれませんが、ユニークな施策とは言えそうです。
考えてみれば、住民が嫌がる施設を区内のどこかに作らなければいけない状況のもとで、その施設を受け入れてくれた地域の住民に少しだけ他の区民より優遇するというのは、論理的にもおかしくない。自治体の施策の一つとしてこんなやり方もあるのかと勉強になりました。図書館巡りをするなかで、こういう自治体独自の施策を知ったりするのも面白いです。
その優遇を使いこなす人が多いのか、私が行ったとき(火曜の午後)には人生の先輩方の利用者で賑わっていました。1階に喫茶店があるのですが、常連っぽい人たちの溜まり場的雰囲気で、隣のライフに比べて堅苦しい様子の建物外観からは想像がつかないくらい。図書サービススポットの職員さんも話しかけやすい場所にいるせいか、人生の先輩の施設利用者さんと一緒に雨模様を見るべく入口に引っぱりだされていたりして、博物館の静けさの中にあった白根図書サービススポットとの差異に思わず笑みがこぼれてしまったのでした。