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多摩市立中央図書館さんぽ 超能力ではない

visit:2025/10/19

この日も実家のデジタル周りを改善するのに多摩センターへ。実家に行く前の明るい時間に多摩市立中央図書館に寄って公園の中にある図書館の様子を見ようと思ったらあいにくの雨、今日は図書館にさっと寄るだけにしよう。駅を出てパルテノン大通りを進むと両脇にテントが並び何やらイベントをしている。ネットで調べてみると、TAMATAMA Festivalという地域密着型文化祭イベントだそう。グッズを売っているブースもあれば、小さなライブショーをしているところもあり、確かにテーマ性のあるイベントというよりは学校の文化祭のように皆がそれぞれ好きなことをしているという雰囲気だ。

無印で買いたいものがあったのでココリア多摩に寄り、ついでに丸善に行ってコスメ商品までもを売っていることを初めて知り驚いた。う~ん、丸善でコスメ商品を買いたい人がいるのだろうか、図書カードでコスメが買えると言われても…と、丸善好きの私としては丸善が変な方向に行かないことを願いながら建物を出る。

そこからだとパルテノン多摩側から行くよりレンガ坂橋側から行く方が近いのでそのように行ってみて気が付いた。多摩市立中央図書館は地下2階地上2階の建物だが、レンガ坂橋の上から下を見下ろしたり、その下を通る車道から見上げると地上2階部分も一部姿を見せているために地上4階の建物に見えるのだ。立川駅周辺などもそうだが、多摩センターも駅の改札口から空中通路が周辺の建物に伸びていて路面に降りることなく行き来できるようになっている。その路面を1階とみなすのか、空中通路の方を1階とみなすかでどこが何階になるのかが違って見えるというわけだ。

1階入口から図書館に入るとまず目に入るのが「ステッププラザ」で、1,2階を結ぶエスカレーターの横に大きな段差の階段があり、ベンチのように座れるようになっている。エスカレーターとステッププラザの間に普通の段差の階段があり、スタジアムで自分の席があるところまで縦移動してから横移動するときのような移動で各段の席に行けるのだ。各段はただの平らな造りなので、椅子のように下へ足を下ろす姿勢の人もいるし、体育座りのような姿勢の人もいる、思い思いのかたちで本を読んだりして過ごせる空間。

これまで2階の公園側からしか入ったことがなかったので、1階から入るとまずこうして皆がくつろいでいる姿が目に入るということに今更ながら気が付いた。この図書館を整備するにあたっての基本構想を読むと従来の図書館の役割に加えてあらゆる年代にとっての広場・居場所になるという役割も果たすということが書いてあるが、入口入った目の前にこうした空間があることがそういう図書館なんだという大きなメッセージになっている。

さて、今日は読もうとしてる雑誌がある。先日、大久保図書館の毎年恒例ビブリオバトル・インターナショナル・オオクボを今年もやるのかなと新宿区立図書館ウェブサイトを見て、今年から「ビブリオトーク・インターナショナル・オオクボ」と装いを変えて行うことを知った。その流れで大久保図書館の館長は今も米田さんなのか、米田さんは外国人が多い地域で外国人にも利用される図書館を目指す様子をNHKにも取り上げられたことがあるのだが今も変わらないのだろうかとネット検索してみて、中央公論2024年6月号にインタビュー記事が掲載されていることを知り、これは読まねばと思ったのだ。

区市町村立図書館では月刊雑誌は1年程度しか所蔵しないことが多い。それ以上前の雑誌を読みたいときに便利なのが東京都立図書館ウェブサイト内にある区市町村立図書館新聞雑誌総合目録で、どこの図書館がどの雑誌をどれくらいの保存期間所蔵しているかがわかる。私の住む江東区では江東図書館で30年保存しているが現時点で読みたい号が貸出中、お隣江戸川区では中央図書館で永年保存…と私にとって行きやすいところを調べるうちに実家の用事で来る多摩市なら8館中6館で2年分を保存期間していることがわかった。

多摩市立中央図書館は雑誌の配置がユニークで、一般書架のうち2階に暮らしや娯楽に関する本、1階に専門書を中心とした本と分かれているのに合わせて、雑誌もジャンルによって1,2階に分けて置いている。更に2階の雑誌は雑誌コーナーにまとめて並んでいる一方、1階に置かれる雑誌はそのジャンルの本棚の先頭に置かれていて、専門的な分野において雑誌の最新号で読める新しい情報から何らかの枠でまとめられて書籍というかたちになった情報までが一カ所で読めるのだ。(当サイト内多摩市立中央図書館ページのリスト3番目を参照)。

中央公論のような総合誌は2階の雑誌コーナーだ。私が参加したビブリオバトル・インターナショナル・オオクボは日本人も外国人も日本語で本を紹介するビブリオバトルで、私は覚えている限りでも4回は参加しており、日本語学校の学生や外国人との交流に関心のある日本人が集まって和気あいあいとする様子を楽しんだのを思い出す。その際にも図書館員が周辺の日本語学校に足を運んでイベントチラシを配ったと聞いたし、大久保図書館は日本人の住民にも外国人の住民にも図書館サービスを提供するということを本当に頑張っていて、こうしてメディアにも取り上げられるのだ。

記事にあった話では、大久保図書館に来ていたネパール人の利用者が一時帰国したときに現地で話題の本を買って大久保図書館に寄贈したというエピソードに、「大久保図書館が図書館サービスを提供する」という枠を越えて「大久保図書館がハブとなって地域の外国人を繋いでいる」という印象を受ける。日本という異国に来て慣れない生活を送るなか母国語の本が1冊図書館にあるのを見ただけでも嬉しいという外国人の話には、本の第一の目的は読まれることだろうけど、ただそこにあるというだけで誰かを支えられるほどの力も持っているのかと思う。

記事を読み終わったところでそろそろ実家に向かわなければいけない時間となり、図書館を出る。パルテノン大通りを歩く途中で着信を受けるが傘を差しながら鞄からスマホを取り出そうとするうちに切れてしまい、履歴を見ると大久保図書館からである。折り返してみると米田さんが電話をくれたようで、超能力で私が米田さんの記事を読んだことを察知した…わけではもちろんなく、10月26日のビブリオトーク・インターナショナル・オオクボに発表者参加申込をしていたことへの抽選結果の連絡である。

少し話したところ、外国人にとって5分間日本語で話すというのはハードルが高いということで今回からビブリオトークにしたとのこと。確かに5分間話すことがルールであるビブリオバトルに固執することより日本人と外国人が一緒に本の話をできる場を作る方が大切だと思うし、これまでも外国人の発表者を集めるのに苦労していた様子を聞いていたのでこれで発表する人が少しでも増えたら参加者の1人である私も嬉しい。当日を楽しみにしていますと告げて電話を切った。