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板橋区立中央図書館さんぽ 顔となるイベントスペース

visit:2025/10/13

まだ行ったことがない図書館に行こうという気分になって、板橋区立中央図書館へ。板橋区立中央図書館という図書館は1970年から存在し私も行ったことがあるが、2021年に板橋区平和公園に移転した後の建物にはまだ行ったことがなかったのだ。

新しい板橋区立中央図書館の最寄り駅は東武東上線の上板橋駅だが、改修工事で休館中の氷川図書館の臨時窓口の様子も見たかったので、都営三田線の板橋区役所駅で降りて氷川図書館臨時窓口経由で中央図書館へと歩いていくことにする。Google Mapが示す道のりに従うと住宅地の細かい路地をあっちへ曲がりこっちへ曲がりというルートになって面白い。まだそれほど歩いた感覚がないうちに高架を走る東武東上線が見えてきて、路線としては全く重なることがない都営三田線と東武東上線の近さに驚く。

石神井川を渡り、環七を渡り、その先の踏切に既視感があると思ったら目の前の駅はときわ台、せっかくなので移転前の建物がどうなっているかを見に行くことにする。移転前の図書館はときわ台駅から5分ほどの場所なのだ。

行ってみると建物としてはまだ残っている、でも建物に付けられた「板橋区立中央図書館」の文字は外されていて、移転前の図書館だと知らなければ謎の建物と思うだろう。そして、これまで辿り着いたらすぐに中に入っていたのであまり意識しなかったが、旧中央図書館も常盤台公園という公園に接しているのだった。新しい図書館は「公園と図書館」というスタイルを踏襲しつつ、図書館も公園もスケールアップするかたちの整備だったわけか。

旧中央図書館から一度ときわ台駅前ロータリーまで戻り、東武東上線と並行するときわ通りをしばらく行けば新しい中央図書館だ。着いたのが18時前で、先日の多摩市立中央図書館に続いて公園の中にある図書館に来ながら公園の様子も含めて見るには暗すぎる時刻に来てしまった。明るい景色での姿は次の機会に。

建物裏側にあたる東側から図書館にはいると、左側に懐かしいグッズをあれこれ展示しているのが真っ先に目に入る。ここはイベントを開催したり展示をするホールで、この日は「平成レトロ図書館」という展示、カセットやMDなどの古いメディアやポケベル、馬鹿でかい初期の携帯電話、織田裕二がドコモのCMをしていた頃のパネル、浜崎あゆみがツーカーのCMをしていた頃のパネルなどなど、よくぞこれらを集めたものだというあれこれがずらりと並んでいる。一番奥には当時の小渕恵三官房長官が「平成」という元号を発表する写真をもとに作った顔はめパネルがあり、私がいる間に何人も、おそらく平成生まれの年代のグループが顔はめ写真を撮って遊んでいく。一方、私と近い世代の人たちはどちらかというと懐かしいグッズの方に興味を持って見ている様子。展示の見方に年代が現れるのが面白い。

こうしたイベントスペースが図書館入口そばにあることについて、先日沖縄県立図書館のYouTubeチャンネルで公開されている2023年11月の岡本真氏のセミナー動画を見ていて、冒頭で岡本氏が沖縄県立図書館入口そばにイベントスペースがあるのを高評価していたのが言葉で聞いている限りあまりピンとこなかったのだが、実際にそうなっている板橋区立中央図書館に来てみて言わんとするところがわかった。

あらためて考えると、図書館の主たる仕事は本を提供することだという思いの反映なのか、図書館でイベントを行うスペースは最上階だったり地下だったり、使えるフロアのなかで隅にあたる場所にあることが多い。もちろん、イベントの内容によっては音が出る場合もあるから書架や閲覧室とは離したいという理屈はわかる。ただ、そのためにイベントがあると知っている人しか来ない場所となり、頑張ってイベント告知をせねばならぬ面があるだろう。

それがこうして入口そばにあるとあらためて宣伝するまでもなく図書館に来た人全ての目に入る。今回のようにそれぞれの世代で楽しめる企画なら猶更多くの人が寄っていくだろう。都内では江戸川区立篠崎図書館にもフロア入口を入った正面に企画展示ギャラリーがあり、私自身篠崎図書館に行くとかなりの確率で企画展示ギャラリーにも寄っている。

イベントスペースが入口そばにあることで図書館にアクティブな印象がつくというのも大きな効果だろう。図書館は静かで真面目な場所、いつ来ても変わらずただ本が並んでいるだけの場所と思っている人も世の中多いだろうが、日々発行される本・雑誌を収集して新しい情報を集めているし、最近では課題解決や地域コミュニティ形成の役割も求められるようなアクティブな施設なのだ。ここに来れば何かやっているというスペースが入口にあることで、図書館が活動的な印象になるように思う。

その意味では「イベントで使っていないときには自習室・フリースペースとして開放」みたいな逃げをしてはいけないスペースとも言えるか。してはいけないは言い過ぎだが、そうしてしまうと「ときどき面白いこともするけど普段はそうではない」ということも来館者全員に伝わってしまう、よくも悪くも新しい中央図書館の顔として見られてしまう場所。ちなみに2階には1階のホールとは別に「イベントで使っていないときには自習室として開放」としている多目的ルームがあるので、イベントの種類によって1階のホールと2階の多目的ルームを使い分けているのかもしれない。私が住む江東区から比較的遠い区ということもありこれまでイベントなどをそれほどこまめにチェックしてはいなかったのだが、どんなイベントをしているのかもっと注意して見てみよう。

ホールの話で文面を費やしてしまったが、1階にはカフェ・ド・クリエや児童エリアもある。中央図書館の移転に伴って、旧中央図書館とは別の場所にあったいたばしボローニャ絵本館も一緒に移ってきており、ここがいたばしボローニャ絵本館だと区切られた部屋があるのではなく、図書館の児童エリアとひと繋がりになっているかたちだ。

2階に上がると、一般書架のうちスポーツ、芸能、家事、技術、地理・旅行ガイド、商業、自然科学、社会などの本があるほか、新聞・雑誌コーナー、ティーンズコーナー、CD・DVDがある。視聴ブースも4つあり、全て埋まっている。公園が見える窓に向かって1人用のソファが並んでいて、やはりこの図書館を堪能するには日が落ちる前に来るのがよさそうだ。

2階は白を基調とした内装だったが、3階に上がると茶を基調とした内装で、思えば先日行った多摩市立中央図書館も同様に白い明るいフロアと落ち着いた色のフロアに分かれていた。これが最近の図書館の流行りなのだろうか。3階にあるのは文学、哲学、芸術、郷土資料、行政資料、事典類、文庫・新書、民俗学者・櫻井徳太郎氏のコーナー。フロアの雰囲気が異なるとあのジャンルはあの辺だと本棚の場所を思い出すときの手掛かりになっていいし、席を変えて気分を変えたりもできそう。但し新しくて人気のある図書館ゆえ、気分を変えるつもりが空席がなくて座席難民になるかもしれないくらいに座席は埋まっている。座席予約システムで確保できる席もあるので、それもうまく活用するのがいいだろう。

ぼんやりとした記憶では旧中央図書館は開架にかなり古い本も散見していた印象だが、新しい図書館の棚にはそういった印象を受けない。利用者は立ち入れない書庫も新しい図書館に移って収蔵数が上がったのだろう。見えない部分も含めていろいろなところがバージョンアップしたことを感じる。

棚をあちこち見るうちに気付けば閉館まであと15分、流れてきた閉館音楽が多摩市立中央図書館と同じG線上のアリアで、閉館音楽まで同じなのかと思ったら途中でショパンの別れの曲に切り替わり、こちらは曲ミックスタイプなのかと聴きながらまだ粘る。G線上のアリアと別れの曲が交互に流れた後にパッヘルベルのカノンへ変わり、それがすっと消えたのが20時。閉館しましたといった放送はなくただ音楽が途切れるだけで、このあたりの流儀も図書館によって違うのが面白い。見回りを兼ねて図書館員が閉館ですと言ってまわるなか図書館を出る。