江東図書館さんぽ 深川だけではない
企画展示「江東区立図書館の歴史」へ見ようと、江東図書館へ。少し前にこうとう電子図書館で1950年から1955年の深川図書館の広報誌が読めることに気付き、興味深く読んだばかりなので、この展示も何か面白い発見があるかなと。
この深川図書館No.1~37はログイン不要で誰でも読める電子書籍だ。実物は紙も古くなっているだろうから、むしろ電子書籍の方が資料を傷つけないようにとびくびくすることなく気軽に読める。昔の図書館報は、統計情報もあれば、館長の構想、こどもの感想文などもあり、今の図書館報より雑多な感じが面白い。図書館報に何を載せるかということが今とは違うし、住民にとって図書館がどういう存在かというのも今と全く同じではない、そこに触れるのが楽しいのだ。
江東区では現時点でこの種の電子資料はこれだけだが、文京区立図書館の文の京デジタル文庫は昔の図書館報がたくさんあり、「文の京」たる矜持がここにありという感じだ。千代田Web図書館はログインなしで読める最近の広報誌や年報が充実していて、それはそれでとてもいい取り組みではあるが、願わくば昔の資料も加えて欲しい。今思いついたが、そうやって図書館自身の発行物を電子図書館で公開している例をリスト化して東京図書館制覇!に掲載するのもいいか。
そんなことを考えながら江東図書館3階の展示コーナーへ行くと、広い空間の壁に貼られているのは毎年発行している事業報告を拡大印刷したもの、ガラスケースには昔の「江東立図書館報」の合本が数冊、端っこの机に図書館に関する本などの関連本と、わりと簡素なうえに私にとっては既知のものばかりで拍子抜けしてしまった。「江東立図書館報」もガラスケースに展示されてしまうと今開かれているページしか読めず、やはりこちらも電子書籍化して欲しいという要望が強まる。
そんななか、関連本展示の中にあった『東京の図書館で働いて』が目に留まり、そうそうこの本に綴られているような話を展示に活用してくれたらもっと面白い内容になったのではと思う。この本は江東区立図書館を中心にいくつかの図書館で働いたことがある人による体験記+図書館への思い等々が書かれていて、特にこの江東図書館が東京都立から江東区立に移管されたときの話がとても面白いのだ。都立から区立に移管するという大事なのにその間の休みは何と1週間だけ、その当時は都立図書館が貸出をしていたのだが、移管するからといって貸出を休止することもなく、休館前に都立図書館から本を借りた人は休館後に区立図書館に返したというのが、今の感覚では無茶苦茶すぎて面白い。
江東区の図書館では「東京市立深川図書館」にまでさかのぼれる深川図書館が圧倒的に歴史があり、建物も趣があるので、図書館の歴史といった話になるとどうも深川図書館中心になりがちだが、江東図書館も東京都から移管された頃のことなどを調べれば面白い話がありそうだ。私もそういう話が書かれていそうな本を見逃さないようにアンテナを立てておこう。
企画展示コーナーを出て2階へと降りる階段へ向かう途中、古い卒業写真が展示されているのが目に入る。企画展示コーナーの隣は学童集団疎開の常設資料室で、通路に展示されているこの卒業写真は東京大空襲があった当日に撮影したもので、写っている子どもたちは卒業式のために疎開先から東京に戻ってきたのだそう。そしてそのままその日を東京で過ごして東京大空襲にあった。これまで私は空襲について学校行事日程的な点から考えたことがなかったが、3月の空襲というのはそういうことになるんだということに気付かされて胸が痛む。
2階の一般書架をぶらぶらするが、心苦しくなる写真を見たせいか、展示が拍子抜けだったせいか、はたまたただの夏バテか、本棚に並ぶ文字の圧に押されて疲れてしまう。まあ、こういう日もある。そうはいっても1冊は借りて、帰途に就いた。