葛飾区立図書館 新小岩図書サービスカウンター
葛飾区立図書館 新小岩図書サービスカウンター 訪問記
新小岩図書サービスカウンターは、図書館カウンターと利用者が自分で予約資料を探して貸出手続きをする予約資料コーナーだけがある施設です。新小岩の駅ビルで予約資料を受け取ることができます。
新小岩の駅ビルで予約資料を受け取れます
新小岩の駅ビル「シャポー新小岩」は2023年10月1日にオープンしたまだまだ新しいショッピングモール。失礼ながら、テナントとしてクイーンズ伊勢丹や成城石井が入っているのを見たときは、新小岩って駅ビルに入るスーパーマーケットとしてこの2店が選ばれるような高級な街だったっけという驚きを感じずにはいられませんでしたが、隣の隣に西友があるのでそれとは違う感じのスーパーを入れたということか。そんな余談はともかく、この駅ビルの6階に葛飾区の行政サービス施設「えきにこわ」があり、その一画に新小岩図書サービスカウンターが入っています。
この「えきにこわ」、「こいわ」じゃなくて「にこわ」、何だか間違えて覚えてしまいそうな名前ですが、新小岩駅北口側にある葛飾区新小岩地域活動センターの愛称が「にこわ新小岩」なのだそう。で、その新小岩地域活動センターの別館も6階に入っているので、「駅ビルにあるにこわ新小岩の別館」→「えきにこわ」ということなのでしょう。広報かつしか 2021年9月25日号(PDFファイル)に掲載された愛称決定の記事によると、「にこにこ」と「輪」を合わせて「にこわ新小岩」で、笑顔の輪が広がるようにという思いを込めた愛称とのことです。意味がわかれば正確に名前を覚えられそう。
6階にあるのは図書サービスカウンターのほかに区民事務所と地域活動センター別館。エレベーターを降りると左に区民事務所、右に地域活動センターの多目的広場・ワーク&スタディブースと大きく分かれていて、最初に来たときは図書サービスカウンターはどこ?と立ち止まってしまいました。区民事務所の奥から左へ伸びる通路の先の区画が新小岩図書サービスカウンターです。
カウンターがあり職員さんもいるものの、ここに届いた予約資料を探して貸出手続きをするのは利用者自身。葛飾区では中央図書館を皮切りに利用者が自分で予約受取手続きをする予約資料コーナーが各館に導入されつつありますが、あれを図書館ではない場所に持ってきたかたちです。
カウンターの脇にある端末で図書館カードをスキャンすると、予約資料コーナーのどの棚に自分の予約資料があるのかが「D-3」のようなかたちで印刷されます。アルファベットが列、数字が段を示しており、「D-3」だったら「D列の上から3段目」に予約資料があるということになる。そうやって予約本を探して、自動貸出機で利用者自身が貸出手続きをすれば予約受取完了です。
返却するときは、カウンター向かって左端に自動返却ポストがあり、入れると同時に返却処理されます。返却ポストは予約資料コーナーの入口脇にもあり、こちらはフロアには入れるけどカウンターが閉まっている際に使えます。また、検索機もあり、予約もここでできます。
このように書籍を予約・予約受取・返却するだけなら職員さんを介さずに利用者自身が行う施設ですが、職員さんも常駐していて利用登録や更新もここでできます。また、ブックポストには返却できないCD・DVDなどもカウンターに返却できます。
多文化に関する本も
図書サービスカウンターは予約資料だけで蔵書はないのですが、同じフロアの多目的広場に円柱型の棚板が回転するタイプの本棚が1つあるのを発見。貸出はせずにその場で読む本として、大人向けの本では『もしも…あなたが外国人に「日本語を教える」としたら』『日本の異国 : 在日外国人の知られざる日常』など、児童向けでは「子どもに語る○○の昔話」シリーズ(○○に、モンゴル、アジア、北欧、イギリス、ロシア、トルコ、アイルランドといった国・地域が入る本が多数)、各国の子どもの暮らし・様子を写真で紹介する「世界のともだち」シリーズなどが並んでいます。
こうした多文化に関する本が置いてあるということは、新小岩は葛飾区の中でも外国人が多い地域なのでしょうか。確かに、この文章を書いている時点で新小岩図書サービスカウンターには二度行きましたが、二度とも区民事務所に手続きにきたと思われる外国人の姿を見かけました。でも、今はもう東京23区内なら多少のムラこそあれど外国人が一定数いるのが当たり前になっていますね。
窓口業務施設のこれからはいかに
図書サービスカウンターの話に戻しましょう。このような「図書館ではないところで予約受取ができる施設」は東京都内に多数ありますが、新小岩図書サービスカウンターは他の窓口業務施設とは違う点があります。それは職員さんが常駐していながら、セルフで予約受取をする点です。
図書館ではない場所で予約資料を受け取れるサービスを行っている自治体は多いですが、この文章を書いている2025年2月14日時点の東京23区内の新小岩図書サービスカウンター以外のそうした施設は、「職員常駐で貸出手続きも職員が行う」か「職員不在で貸出手続き不要」のどちらかです。もっと詳しく言うと、「職員不在で貸出手続き不要」は世田谷区の図書館ブックボックス下北沢しかなく、それ以外は全て「職員常駐で貸出手続きも職員が行う」施設です。
窓口業務だけの施設の主な業務は、概ね、予約資料の貸出、返却、予約受付、利用登録(更新)です。利用登録・更新は一度すればしばらくする必要ないため頻度が低い、予約受付はウェブサイトでもできる、返却も施設が開いている時間は職員が対応するとしても閉館時にポストへの返却も可能、となると窓口業務に常駐する職員の仕事の中心は予約資料の貸出と言えます。
そのメインの業務を新小岩図書サービスカウンターではセルフで利用者が行う、ということは、ここにいる職員は勤務時間の多くを特にすべきことがないまま過ごすことになる。では、ここを職員不在にできるかというと、他の人の予約本を無断で持ち出される可能性があるのでそうもいかない。予約資料コーナーの仕組みとしては図書館にある予約資料コーナーと同じ、つまり、RFIDゲートで無断持ち出しを検知して警告音を鳴らすだけなので、音を鳴らして出てきた人を止める職員が必要です。
予約受取をセルフ化すれば職員の作業量は減る、でも職員不在にはできない、不在にできないのだったら利用者ができることを職員がするようにして仕事を作る? 考えていると、この人手不足の時代にしなくてもいいことをしているようで、もやもやしてしまいます。これが図書館であれば窓口業務以外にも仕事がたくさんあるので、窓口業務に割く時間が減った分そちらに注力できますが、窓口業務だけの施設ではそうした仕事もありません。
セルフ予約受取システムが登場したときから「窓口業務だけの施設にもセルフ予約受取を導入することができる。でも、盗難対策等を考えると職員不在にはできない」という状態は発生していました。それに対して、他の窓口業務施設は(あえてそうしたつもりがなくても)従来通りの「セルフ化せずに常駐職員さんの仕事を増やす」やり方を採用してきた。対して、新小岩図書サービスカウンターでは「常駐職員さんが手持ち無沙汰な時間が多くてもいいからセルフ化を導入する」やり方を採用した。後者のやり方を採用した施設が登場したことで、この問題が顕在化したと言えそうです。
そのもやもやを解消できるのが、職員不在のセルフ予約受取の仕組み。上で挙げた図書館ブックボックス下北沢に加えて、大田区立池上図書館の予約本自動受取機も図書館閉館時に予約受取できる設備です。
図書館ブックボックス下北沢は、集合住宅の宅配ボックスやヤマト運輸のPUDUステーションの図書館バージョンと思うとわかりやすいかもしれません。図書館ブックボックス下北沢を予約受取館にした予約資料が届くとその本はブックボックスに入れられ、利用者には予約資料が届いた旨の連絡が来ます。利用者はブックボックスに行って操作パネルを操作し、自分の予約本が入っているボックスを開けて本を受け取ります。自分以外のボックスを開けることはできないので間違いや盗難の心配はなし、設置されている小田急線下北沢駅構内(改札外)に入れる時間帯ならいつでも受け取れます。
池上図書館の予約本自動受取機も利用者がタッチパネルで操作する点は同じですが、こちらは取り出し口が1つだけ。機械の中でその人の予約受取本をピックアップして取出口から出してくれます。こちらも他の利用者の予約本を持ち出す心配は不要、図書館が入っている駅ビル・エトモ池上に入れる時間帯なら図書館が閉まっていても受け取れます。
利用者にとっては、職員不在の仕組みを導入することで早朝・深夜の予約受取ができるのも大きなメリットです。2025年2月14日時点で、池上図書館の予約本自動受取機は7時から22時まで利用可能。図書館ブックボックス下北沢は、小田急線下北沢駅の上り始発が5:00、下り終電が0:54なので、5時前から25時過ぎくらいまででしょうか。図書館が開いている時間に行くのが難しいという人でもこれなら使えるという利用時間を実現しています。
両者の大きな違いであり、図書館ブックボックス下北沢の弱点ともいえるのは貸出期間で、図書館ブックボックス下北沢では資料がブックポストに入れられたときから貸出期間が始まります。ブックポストが図書館システムに繋がっておらず、利用者が取り出した日が貸出開始日とはならないため、取り置き状態になってから取りに行くまで日数があるとその分借りていられる日数が減ることになります。
対して、池上図書館の予約本自動受取機は取り出した日が貸出開始日、通常の予約受取と同じ感覚で借りられます。その分、図書館システムへの接続や、内部で本のピックアップができる仕組みができるくらいのエリアを確保する必要がありますし、具体的な金額は知りませんが費用も高額でしょう。
職員不在の予約受取に関してはまだ事例が少なく、コスト面や利便性の点で今後もっといい仕組みが登場するかもしれません。こうした仕組みの導入が進めば、現在の窓口業務施設の多数派である「職員常駐で貸出手続きも職員が行う」やり方はなくなる日が来るのかも?図書館サービスを充実させるためにも、利用者ができることはセルフ化を進めて、職員さんのマンパワーは司書だからこそできる専門的で高度な仕事により力を注いで欲しいと思います。これからの窓口業務施設がどうなるか、期待を込めて見て行こうと思います。
葛飾区立図書館 新小岩図書サービスカウンター データ
住所 | 東京都葛飾区新小岩1-45-1 JR新小岩南口ビル6階 えきにこわ内 →Google Mapで見る | ||||
Tel | 03-3607-9201(中央図書館) | ||||
開館時間 |
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定休日 | 第4木曜(祝休日の場合、翌日を休館) JR新小岩南口ビルの休館日 12月29日~1月3日 | ||||
最寄駅 |
JR中央線総武線各駅・総武線快速 新小岩駅から徒歩0分
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駐輪場 | シャポー新小岩の有料駐車場あり。料金やショップでの買物による割引はシャポー新小岩ウェブサイトの施設情報・アクセスページ内の「車でお越しの方」をご参照ください。 2025/02/10にシャポー新小岩ウェブサイトにて確認
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駐車場 |
2025/02/10に葛飾区ウェブサイト・シャポー新小岩ウェブサイトにて確認
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設備 | |||||
ブックポスト | 予約資料コーナー入口向かって左の壁面にブックポストあり。えきにこわが開いている時間帯(8:30~21:00)に利用可能。 2025/02/04に現地訪問にて確認
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自動貸出機 | 予約資料コーナー内に自動貸出機1台あり 2025/02/04に現地訪問にて確認
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自動返却機 | カウンター向かって左端に自動返却機あり 2025/02/04に現地訪問にて確認
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セルフ予約受取 | カウンター向かって右に予約資料コーナーあり 2025/02/04に現地訪問にて確認
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図書の除菌 | なし 2025/02/04に現地訪問にて確認
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飲食設備等 | 新小岩図書サービスカウンターが入居している駅ビル・新小岩シャポーの1階にスターバックスコーヒーあり 2025/02/04に現地訪問にて確認
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