上小松図書館さんぽ 古い図書館から美しい本の森を眺める
新小岩図書サービスカウンターまで来たのでせっかくだからと上小松図書館へも足を伸ばす。いつもはたつみ橋交差点へ出てそのまま蔵前橋通りをまっすぐ行くルートを通るが、今日は何となく東北広場を通るルートを取ってみた。敷地内に野球場らしきものもある「私学事業団総合運動場」があり、その団体に属する人しか入れない場所かと思いきや、散歩するのに入ってもいいよ的な案内が書いてある。ついでにこの文章を書くにあたってネット検索したら、現在は葛飾区が敷地を取得して、将来的にはスポーツに留まらないスタジアム建設も考えているとの情報も見つかった。昼間に新小岩に来る機会があったら、この中にも入ってみたいな。
上小松図書館に着き、まずは最近気になって図書館さんぽをする都度確認している同じ請求記号内での本の並べ方を見る。図書館ではそれぞれの本に「527 ハ」のような請求記号を割り振ってその数字・カナ順に本を並べているわけだが、同じ請求記号の中での並び方のルールがあるのか。私は葛飾区では同じ請求記号内では著者名五十音順になっていると思い込んでいたのだが、あらためて見るとそんなことはなく順不同だった。先月池上図書館に行ったときに本のサイズ順になっていて、「著者名五十音順がスタンダートだと思っていたが~」等々図書館さんぽ記事にも書いたのだが、気になって確認しはじめて以来、むしろ著者名五十音順になっているところが見つかっていない状態なのだ。ああ、思い込みというのは恐ろしい。
そこから一般書架をぶらぶら歩く。今、『図書館を建てる、図書館で暮らす』という、ライター・キュレーターの橋本麻里さんと文筆家・ゲーム作家の山本貴光さんが自分達のための(=他人が利用するわけではない)図書館を自宅に作った、いや、住むことができる図書館を作ったというべきか、図書館でもあり住まいでもある建物を作ったという説明が一番合っているか、とにかくその経緯を書いた本を読んでいて、その中でもまさに本の分類に関する章に差し掛かっているのだ。なので、図書館の棚もそんな視点で眺めてしまう。
それで気付いたのが、336.5(ビジネス文書)の棚にRPA(人がパソコンで行っている作業を自動化すること)関連の本が並んでいること。私の中での「ビジネス文書」というジャンルのイメージは、お客様に文章を書く際のマナーとか、社内書類はこういう書式がいいなどの内容だったので、RPAの本がここに分類されるというのは意外だ。007(情報科学)に入りそうな気がするが。
他の図書館ではどうだろうとスマホを取り出し、私が住む江東区立図書館ウェブサイトで書名に「RPA」を含む本を検索してみると、江東区立図書館でもRPAの本は336.5に分類されている。そのままネットで日本十進分類法の336.5について調べてみると、もともと336が経営管理に割り振られている分類で、336.5は事務管理、文書管理、事務の機械化などを含む分類のよう。RPAは情報処理というより事務の機械化に分類される内容だと言われればまさにその通りで、そう考えるとこの分類こそ相応しい。
さらに言うと、仕事で書く文章の中でも、広報的なブログ記事といったWebライティングに関する本は816(日本語の作文)の棚にあったりして、分類は本当に難しくて、奥深くて、面白い。今は館内の検索機でも自分のスマホでもこうして検索できるので、探している本の分類がわからなければ蔵書検索を使うのが断然楽だ。キーワードとなる言葉で蔵書検索して、欲しい本に近いものがどの分類になるかを確認し、その棚に行ってキーワード検索では見つからない本にも目を通して、自分が求める本を探す。
どの分類になるのかがわからないという問題はそうやって解決できるけど、1つの分類に収まらない内容を含んだ本をどう分類するかも難しい。上に挙げた『図書館を建てる~』はまさに、タイトルを中心に考えると527(住宅建築)で、実際に多くの公共図書館でそのように分類されているし、実際にそういう内容も書いてある。
と同時に、本の分類や本との関わり方について山本さんが書いた章もとても面白くて、この部分に関しては000(総記)、010(図書館)、020(図書)辺りに分類されてもいい内容なのだ。『図書館を建てる~』にもそうした複数の分類にまたがるような本をどう分類すればいいかのアイデアが書いてあり、図書館好きとしてはとても面白い。
他にもいろいろ気になる分類を見ていたら疲れてきたので、雑誌コーナーのソファで休憩。上小松図書館にはCasa BRUTUSがあり、既にざっと読んだことがある2025年3月号 美しい本の森へを開いてしまう。表紙を飾る石川県立図書館、そういえば杉並区立中央図書館にまだ行っていないから行かねば、多摩市立中央図書館は私の一番好きな1階カウンター向かって右の棚を撮影場所に選んでくれた編集者さんにいいねを送りたい気分…などなど、図書館にいながら図書館がたくさん写っている雑誌を開いて楽しんでいるって、我ながらどれだけ図書館に浸っているんだか。
こうして雑誌、それもCasa BRUTUSのようなデザインを中心とする雑誌に載るようなおしゃれ図書館もあれば、都営住宅1階にある上小松図書館のような暮らし密着図書館もある。それはどちらがいいというものではなくて、大きくて設備が充実しているからできるサービスもあれば、そうでない分を補おうとする職員さんの工夫に溢れる図書館が居心地よかったりもする。いろいろな図書館があるからこそ図書館巡りが楽しいのだ。