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砧図書館さんぽ 成城・砧文化あれこれ

visit:2026/03/04

新しく設置された世田谷区立図書館の砧総合支所ブックポストに本を返しに行く。江東区からわざわざそこまで行くならついでに砧図書館にも行くつもりで、そうなるとどう考えても砧図書館で返せばいいのだが、一応ポストに本を入れてみないと気が付かない何かがあるかもしれないし…と思いつつ、そうやってポストだけの施設も回ってきてそんなことがあった試しは今まで一度もない。

砧総合支所の最寄り駅は成城学園前駅、思えば駅ビルの成城コルティはこれまで横目に通り過ぎていたのでこの機会に入ってみることにする。2階の三省堂に入ると入口近くに「成城特集」とあり、『成城映画散歩』や成城に住んでいた大江健三郎の本が並んでいる。常設ではないようだが、入口近くのいい場所に売れ筋の本だけでなく地域ゆかりの本を並べるのはいいと気に入った。

ここに来るまで電車で読んでいた『地図と拳 上』がそろそろ読み終わるので、『地図と拳 下』を購入。三省堂書店のセルフレジを使うのは初めてだ。セルフレジが初めて云々の前に、私の普段の生活圏内には三省堂がなく、三省堂書店での買い物がかなり久しぶり。そういえば神保町店の改築はどうなったのかとネットで調べたら、2026年3月19日にリニューアルオープンするそう。リニューアルの混雑が落ち着いた頃に行ってみよう。

砧総合支所に行くと、入口に2つある自動ドアに挟まれた空間に図書館のブックポストがある。それだけでなく、ペットボトル回収ボックス、小型家電回収ボックス、インクカートリッジ回収箱…と「回収スポット」と言わんばかりの空間にこの時代の公共施設らしさを感じてしまう。ここから数分歩けば砧図書館、これだけ近くに図書館があるとブックポストのありがたみが薄れてしまう気もするが、より駅に近い場所で返せるのはこの辺の人にとっては嬉しいか。

砧図書館に着いて書架をぶらぶら歩き、雑誌コーナーの中のテーマ展示「遺言書」に目が留まる。2段の棚からなるコーナーの上段に『きちんとした、もめない遺言書の書き方、のこし方』『すぐに役立つ財産管理〈信託・成年後見・遺言〉の法律知識と活用法』等々の実用的な本、下段に『遺言 野村克也が最期の1年に語ったこと』、『談志の遺言 人生の本質に迫る名言』、『師父の遺言』(松井今朝子の自伝)、『読めない遺言書』(遺言書が出てくるミステリ小説)等が並ぶなか、『元彼の遺言状』が上段にあり、いやいやこれは実用的ではないと笑ってしまった。

私は図書館で明らかに間違っている棚に本が置いてあるのを見つけると正しい場所に戻すが、面白い間違いだとそのままにすることがある。これも笑ってしまったからそのままにするか。いや、パッと見て「実用書が上段、読み物が下段」と思ったが、「法律的に認められる遺言書に関する本が上段、<後世に遺したい言葉>のような広い意味の遺言が下段」であれば『元カレの遺言書』が上段というのは正しくて、『読めない遺言書』が下段にあるのが間違いということになる。などと、テーマ展示の前で一人「これは上段、これは下段、ではこれはどっち?」のグループ分けクイズをしてしまった。

テーマ展示から離れて雑誌コーナーを一通り眺め、散歩の達人 2026年3月号 草加・越谷・春日部を手に取る。先日綾瀬で開催された足立区立図書館主催のトークイベント「本とつながる、人とつながる」に行ったのだが、登壇者の1人が草加市で私設共同図書館「さいかちどブンコ」を運営している松村美乃里氏で、その記憶から「草加」というワードに手が伸びたのだ。誌面には草加に「革のまち」という側面があることや美味しそうなパン屋の情報が並び、今まで法事で1度行ったことがあるだけの草加市のイメージが膨らむ。

気分を変えて、同じ1階のウルトラマンコーナーへ。私は今回成城学園駅から来たが、砧図書館は成城学園駅と祖師ヶ谷大蔵駅の中間にあり、祖師ヶ谷はかつて円谷プロダクション本社があったことからウルトラマンを使ったまちおこしが行われている。例えば、砧図書館から祖師ヶ谷大蔵駅に向かって商店街に入ると、頭上をゾフィーがこちら側に向かって飛んでいるのだ。そんな土地柄なので図書館でもウルトラマンにちなんだ資料を集めたコーナーを作っている。

1階カウンター向かって右、CD棚の裏の空間にいくと、壁に折り紙・切り紙で作ったウルトラマンや怪獣が飾られており、その下の棚にずばりウルトラマンの本やもう少し広げて特撮に関する本なども並んでいる。子供向けの「怪獣大全集」的な本もあれば、モノ・マガジンのウルトラマン関連特集(棚にあるだけでも9冊)まであり、特撮モノが決して子ども向けに限ったものではないということがこの棚のラインナップを見てもわかる。

内容的にも、ビジュアルにフォーカスを当てた写真集、『ウルトラマンを創った男 金城哲夫の生涯』のように制作側の人に焦点をあてた本、『切りグラフふせんで作るウルトラマン&ウルトラ怪獣』のような工作本、幼い子向けの絵本、サントラCDなど、バラエティに富んでいる。個人的には小学校低学年の頃に私の記憶では平日毎朝再放送していたウルトラセブンが一番馴染みがあるが、ネット検索してみると今も新しいシリーズが出ているよう。今やいろいろなデジタルメディアが存在する時代、新しいシリーズについて出版物というかたちで発売されるものがどれくらいあるのだろうかとも考えてしまう。

ウルトラマンコーナー向かって右には、清川泰次氏の大きな絵画や新聞紙面に描かれた絵の切り抜きがある。ウルトラマンコーナーもどうしてここにウルトラマンコーナーがあるのかの説明なく設置されているが、清川泰次氏の作品も知らなければ装飾として掲げているだけかと思ってしまうくらい、本当に何の説明もない。実は清川氏の生前のアトリエ兼自宅が砧図書館から見て小田急線の線路を越えた南にある、つまりこちらもウルトラマンコーナーと同様に地域ゆかりの装飾なのだ。ちなみに以前、ここに飾られた新聞切り抜きは何なのだろうと新聞縮刷版で確認してみたら、1996年6月から8月に讀賣新聞の日曜版で連載されていた阿刀田高氏のエッセイの挿画を切り抜いたものだった。

この文章の冒頭に書いた三省堂書店の成城特集も含めて、いろいろな文化的側面を持つ地域だということをあらためて感じる。私は図書館巡りをしている分、図書館への道のりから外れるところのことは知らずにいることが多いのだが、この辺はもっと寄り道するのがよさそうだ。

地域ゆかりの空間にいる間に気が付けば閉館時刻の19時まで残り30分程度、せっかくなので閉まるまでいようと2階の一般書架を歩く。文学の棚で『人生散歩術』が目に留まったのは、先程読んだ散歩の達人からの連想というよりは「こんなガンバラナイ生き方もある」という副題に惹かれたから。いろいろな作家の生き方を岡崎武志が綴った本で、目次の佐野洋子の章にある「谷川俊太郎の痕跡を消す」という言葉に興味を惹かれてページを手繰る。離婚後の持ち物などから思い出があるものを捨てるといったことかと想像していたら、離婚前に書いた文章から谷川俊太郎に関する記述を消していたとのことで、そこまでするのかと驚く。

読んでいるうちに閉館音楽が始まり、読むペースを上げて佐野洋子の章を読了。前回の最後にバタバタして、ジムノペディ第1番から始まる閉館音楽の次に続く曲を聴き逃していたが、5分前アナウンスの後に流れたのは「主よ、人の望みの喜びよ」だった。荘厳な気分になって図書館を出た。

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