夏休み福袋(2018年)

―2018年7月24日から8月31日まで(福袋の中身案募集は8月19日まで)の企画
visit:2018/08/06
§ 恒例の福袋企画に、今回は新しい試み

稲城市立中央図書館の福袋企画を見に行ってきました。図書館で行う「本の福袋」は、本を袋に入れるなどして中身がわからない状態にし、中身を示すテーマやメッセージだけを頼りに選んで借りる企画。あちこちの図書館で行われる人気企画で、読書週間や年末年始に実施されることが多いです。稲城市立中央図書館でも、春休み、夏休み、新春(年明け)と年3回行っています。

更に今回は、いつもの福袋企画に加えて、新しい試みをしています。これまでは図書館職員さんが中に入れる本を選んで福袋を作ってきましたが、今回はその福袋作りに利用者も参加できるのです。福袋を借りたことがある人は、「このテーマならこの本もありだな」「こんなテーマがあったらいいのに」と思ったこともあるのでは。そんな思いつきを実現できるというわけです。

§ 幼児向けから大人向けまで幅広い福袋

自分で福袋の中身を考える前に、まずはどんな福袋が用意されているか見てみましょう。福袋はカウンターの対面、自動貸出機向かって左の展示コーナーに置いてあります。今年の夏の福袋は、日傘を差しているシロクマくんのデザイン。シロクマくんの胸のあたりに、その福袋のテーマと、対象年齢、冊数が書いてあります。

よく見ると、テーマなどが印刷されているものと手書きのものがあり、手書きのものは一日図書館員の子どもが作った福袋だそう。私が福袋を見に行ったのが8月6日で、その少し前の8月1日から3日に、稲城市在住の小学3年生から6年生までの面々が一日図書館員体験をしていたんです。その体験の中に福袋作りがあって、職員さんが作った福袋も子どもたちが作った福袋も一緒に並んでいます。

私が行った日に並んでいた福袋はこんなラインナップ。誰かが借りて展示コーナーに出ている分が減ったら、ストックの福袋を出して補充していくので、今はまた違うラインナップになっていると思います。

職員さんの作った福袋
ゾウだぞう!幼児向け3冊
「にくたらしい。 けど かわいい低学年向け3冊
夏といえば、甲子園大人向け3冊
調味料あれこれ大人向け3冊
一日図書館員さんがつくった福袋
面白い虫たち
コメント:ここの虫たち見たことある?
すべての人向け3冊
すごい!楽しく分かる社会のひみつ
コメント:くわしく分かりやすく学べます
高学年向け3冊
おもしろそうな本高学年向け3冊
トウモロコシのふしぎ高学年向け2冊
でんき高学年向け3冊

最後の「でんき」は「電気」なのか「伝記」なのか。高学年なら「電気」も「伝記」も習い済みの漢字なので、あえてのひらがなでわからないようにしている可能性もあります。どれも中身はわかりませんが、子どもが作った福袋の中身は物語以外の本が多そうで、それもいい。図書館にはいろいろな本があるにも関わらず、図書館の児童サービスは物語(文学)に偏りすぎているのではないかと、私は常々思っているのですが、当の子どものほうから物語以外の本も読んでいることを示されたように感じました。

また、大人が作った福袋と子どもが作った福袋を比べると、子どもはテーマのつけ方が直球で、こういうテーマの方が子どもの興味を引くのかなと感じました。実際、大人が子ども向けに作った福袋と、子どもが同世代向けに作った福袋が並んだとき、どちらが人気があるのか、棚の陰からこっそり観察してみたいです(笑)。

私が稲城市立図書館に利用登録ができるなら、どれか借りてみて、中身はこうでしたとお披露目したいところですが、残念ながら今は図書館カードが作れる条件にはあてはまりません(昔は多摩市在住で借りられたのですが)。稲城市立図書館のカードが作れるのは、稲城市に在住・在勤・在学の人に加えて、八王子市・府中市・調布市・町田市・日野市・多摩市・川崎市の在住者です。稲城市立中央図書館は、年末の多摩地域で唯一12月29日まで開いているなど、この企画以外にもいいところがある図書館なので、この機会にぜひご利用ください。

§ 利用者も福袋を作ることができます

では、今回初の試みである、福袋作りに話を移しましょう。利用者が福袋の中身を作る企画は他の図書館でもときどき実施されていますが、私が都内で実施された企画に参加した限りでは、事前に利用者からの中身の案を募集し、福袋の貸出を始めるときに利用者が作った分も職員さんが作った分も一緒に出すやり方でした(例えば、江戸川区立松江図書館の「秋の夜長のやみ鍋Book 食材募集のお願い」や、豊島区目白図書館の「本の宝袋 大募集」など)。

福袋の貸出と同時に中身案の募集をするやり方は初めて見ましたが、他の福袋の例が目の前にあるので、「こういうのがあったらいいかも」というアイデアが浮かびやすい。思えば、福袋企画は1週間から10日程度で終わることが多いところ、稲城市立中央図書館の夏休み福袋は、7月下旬から8月末までと実施期間が長い。貸出と中身案募集を同時に行っても、福袋を作る時間が充分あることを活かした方法だと思います。

先ほどから「福袋を作る」と書いていますが、利用者が実際に袋に詰める作業をするわけではなく、「この本を入れて、こういうテーマで福袋を作る」という案を用紙に記入して、職員さんに渡せばOK。図書館の福袋企画なので、中に入れる本は当然、稲城市立図書館にある本から選ぶことになります。記入用紙は、借りられる福袋が並んでいるテーブルに置いてあります。

§ 私も福袋の中身を考えてみました

私も記入用紙を手に書架を見て回り、お薦めの本がないか探してみました。当たり前ですが、どんなにお薦めでも、予約待ち人数が多い人気本は、福袋には使えない。お薦めで、かつ、現在借りられる状態の本をうまく組み合わせたいなと、考えを巡らせます。

すると、小説の棚で目に入った作家さんと、この図書館に来るまでの光景との連想で、ある本を思いつきました。この日、私は、稲城市立iプラザ図書館に行った後に中央図書館に来たので、向陽台団地を経由するバスを使いました。私が稲城市立中央図書館に来るときは、稲城駅から歩くことが多く、その道のりだと戸建ての住宅が目立つのですが、この日のルートは、中央図書館が向陽台の団地に住む人にとっての最寄り図書館であることを実感するルートでした。

私の目に止まった作家さんは団地が舞台となるミステリを書いていて、私も読んで面白かったので、その本をお薦めすることに。「団地が舞台の小説」でもう1冊思いつき、よしこれで福袋が完成!と思いきや、中央図書館の書架を見る限り、どちらの本も見当たりません。

検索機で調べてみると、2冊のうち1冊は中央図書館の書庫にありましたが、もう1冊は稲城市の第一・第三・第四・iプラザ図書館にはあるものの、中央図書館にはありません。記入用紙を配布しているところには「図書館で読んだお薦めの本を教えてください」とありましたのですが、稲城市立図書館twitter公式アカウントこちらのつぶやきでは、「中央図書館で利用された資料でおすすめ本がありましたら」と書いてあり、他の稲城市立図書館にある本はダメな可能性もある。迷った挙げ句、「この本は中央図書館にはありませんが、第一図書館などには所蔵しているので、もしよかったら」という断り書きも書いて提出することにしました。

これだけだと、もし中央図書館の所蔵本しか福袋にできない場合は不採用になってしまうので、引き続き、書架をぶらぶら歩きます。図書館で事件が起こる小説を見つけ、その本自体は私にはあまり面白くない本だったけど、『蔵書まるごと消失事件』と『廃墟建築士』(に収録された「図書館」)は、ともに図書館が舞台の面白い小説だと思いつきました。再び検索機に行って調べてみると、どちらも中央図書館の所蔵があるものの、『廃墟建築士』が貸出中。他の稲城市立図書館には在庫中のものがあるのですが、それでは「中央図書館の蔵書しか福袋にできない場合のための、もう一案」にならないし、中央図書館所蔵の本が夏休み中に返却される保証もないので、この福袋は断念。「〜が舞台の」ばかりというのもワンパターンなので、全然違うパターンの福袋を作るべく、また書架をさまよいます。

団地が舞台の小説が両方とも長編なので、もっと気軽に読めるお薦め本があればと思いながら書棚を見ていたら、短編連作の薄い本で、でも読み応えあったものを見つけました。稲城市立図書館ではその本を一般の小説に分類していましたが、図書館によっては中高生向けに入れるところもあるような内容なので、「子どもにも大人にも」みたいなテーマで福袋を作れるかなと思いましたが、組み合わせる本が思い浮かばない。内容的に、自然の厳しさと、だからこその温かい心の大切さを教えられる連作集なので、「厳しさと温かさと」というキーワードで他の本と組み合わせられるかなと考えたところ、いい本を思いつきました。調べてみると、三度目の正直で中央図書館の所蔵があり、無事に"中央図書館の所蔵本による福袋"が完成。書名とテーマを用紙に書いて、職員さんに渡しました。

後日、稲城市立図書館twitter公式アカウントが発信したこちらのつぶやきによると、中央図書館に所蔵がない本が入っている方も含めて、福袋を作っていただいたよう。ありがとうございます。ただ、私の作った「厳しさと温かさと」の中身は2冊だったので、職員さんが別の本を加えて3冊にしたのか、そうでなかったら、中身が2冊なのに間違えて3冊と書いてしまったのか。借りる人が自動貸出機で福袋を借りる場合、袋に書かれた冊数を頼りに操作するので、もし間違いだったら戸惑ってしまうのではと少し心配。でも、この記事を書いている時点で、私が福袋に入れた全ての本が貸出中になっているので、無事誰かに借りてもらえたのかな。

§ 借りて楽しむもよし、作って楽しむもよし

こんなかたちで、未知の本と出会える福袋企画と、誰かにお薦め本を伝えられる福袋作り企画を同時に開催しているので、ぜひ多くの人に楽しんで欲しいです。福袋の貸出は2018年8月31日まで、福袋作りはそれより期間が短くて、8月19日まで募集しています。

ちなみに、お薦めの本はあるけど、複数冊セットにしてテーマをつけることが上手くいかない場合は、稲城市立中央図書館が常に行っている「みんなでおすすめ!」という企画があります。こちらは、図書館にあるお薦め本に栞を挟む企画で、実際に中央図書館の書棚を眺めると、ところどころに栞が挟まっている本があります。側面に栞が入っている袋を付けた棚がいくつかあるので、そこから栞を自由に取って、お薦め本に挟めばOK。栞は、黄・青・緑・橙の4種類があり、順に「楽しい!笑える!」「泣ける!感動!」「へぇ〜知らなかった!」「とにかくおすすめ!」の意味を示す栞になっているので、どうお薦めなのかによって色を選んでください。

図書館には本がたくさんありますが、多いからこそどの本を読むか迷うこともある。また、こんなに本があるのに、振り返ると限られたジャンルしか読んでいない人も多いでしょう。福袋やお薦め本に挟まれた栞は、自分で探すだけでは出会えなかった本に出会える企画です。薦めて、薦められて、の循環が生まれる企画を、ぜひ楽しんでください。