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文京区立水道端図書館

文京区立水道端図書館 訪問記

last visit:2014/08/09

文京区立水道端図書館は、江戸川橋駅から神田川を越えた北東にある図書館。お寺が多く、落ち着いた町にあるせいか、館内もひっそりとした印象。児童コーナーでは外国語絵本の多さ、一般書架ではハヤカワ文庫が全点揃っているのが特徴です。

§ 図書館の場所

水道端図書館は江戸川橋駅から歩いて10分もかかりません。江戸川橋の4番出口を出て右に進み、最初の信号で左折して古川橋を渡って神田川を越えます。少し先にある「小日向神社入口」交差点で右折し、道なりに250mほど歩くと、道の右側に水道端図書館が現れます。

水道端図書館のある通りはお寺が多く、しっとりと落ち着いた雰囲気。水道端図書館の中にある説明によると、ちょうどこの辺りを神田上水が通っていたそうですよ。それを知ってからこの通りを歩くと、お寺が並ぶ合間を縫って上水が流れる中を江戸時代の人たちが行き交う様子を想像してしまいます。

§ 図書館内の様子

水道端図書館は4階建ての建物です。普段利用者の入れるのは3階までで、読書会などがあるときには4階の会議室を使うようです。1階が児童コーナー、新聞・雑誌コーナー、地域資料、生活関連本。2階が一般書架で、3階が閲覧室。閉架の本をお願いしたら、職員さんが地下に取りに行くとおっしゃっていたので、地下が閉架になっているようです。

文京区では真砂中央図書館に次いで、2番目に所蔵数が多い図書館だけあって、2階の一般書架などはぎっしり本が並んでいます。2階に集中させた分、3階はフロア全体が閲覧室ですし、1階児童エリアの靴脱ぎスペースも広い。本が並ぶ場所と読む場所とがわりとはっきり分かれているタイプの図書館と いえます。

§ 1階の様子

1階はフロア全体の8割近くが児童コーナーで、奥の一角に新聞・雑誌コーナー、地域資料、生活関連本が集まっています。建物全体の中での比率を考えても、平均的な図書館より児童コーナーの面積比率が高いと思います。

建物正面にあたる窓には、絵本「かいじゅうたちのいるところ」のイラストが大きく飾られています。絵本の挿絵を大きく展示しているのは、図書館の児童コーナーのお楽しみの一つですが、かいじゅうたちに囲まれている水道端図書館の児童コーナーは一味違った雰囲気でいいですね。この窓に面して広い読み聞かせコーナーがあるので、かいじゅうたちに囲まれて絵本読みを楽しめます。

絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、出版社の五十音順に並んでいます。同じ出版社の中での並び順は特にないようですね。児童向け読みものは、日本人作家の作品も外国人作家のものも一緒にして、タイトルの五十音順に並んでいます。

読み聞かせコーナー脇のラックには、布絵本もたくさんあります。ここに置いてある布絵本は閲覧用で、貸出用はカウンターにあります。どんな貸出用布絵本を見たいときには、閲覧用布絵本のラックにあるファイルをどうぞ。布絵本各ページの写真が撮影されているので、それをもとに借りたい布絵本を選ぶことができます。借りる布絵本が決まったら、その番号のカードをカウンターに持っていく仕組みですね。2012年9月10日現在No.57まである布絵本の所蔵数は、たぶん文京区立図書館で一番多いのではないかと思います(ちなみに、23区内で一番布絵本を所蔵しているのは、たぶん練馬区立関町図書館)。布絵本って、取り外しできる部品を作ることで数の概念を学ぶことができたり、面白い仕掛けがあったりと、知育要素のある楽しい絵本ですよね。

児童コーナー内は、ざっくりと言って、手前が小さい子向けの絵本、奥が大きい子向けの児童書になっているのですが、奥の棚の側面にも物語を描いたタペストリーが飾られていて、全体的に布の手触りに溢れる児童コーナーです。タペストリーには特に説明はありませんが、ブレーメンの音楽隊や虎の屏風を前にした一休さんなど、誰もが知る物語が描かれています。お子さんは、ぜひ物語当てクイズとしてチャレンジしてみてください!

ここまで書いた内容でも十分個性的な児童コーナーですが、水道端図書館の児童コーナーでも一番特徴的なのは、外国語絵本の多さでしょうか。ちょうどカウンターの対面にあたる棚に、ずらっと外国語絵本が並んでいます。大部分は英語ですが、その他にもフランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ロシア語などなど、文京区立図書館公式ホームページ内の水道端図書館のページによると40種類近くの言語の絵本を所蔵しているのだそうです。

この外国語絵本の棚は並べ方も珍しく、言語別に分類しているのですが、一番数の多い英語の絵本は、タイトルを邦題に訳し、邦題の五十音順に並べているのです。邦題が本の背に貼ってわかるようになっているので、日本語訳された絵本と一緒に借りて読み比べたくなりますね。

文京区立図書館では児童読み物の棚をタイトル五十音順に並べていて、これは比較的珍しい並び順(児童読み物は著者名で並べることが多い)なのですが、この並びかたならではの本との出会いもあるんです。実際の水道端図書館の児童読み物の棚をみると、「あ」「い」「う」…という分類に応じた機能的な見出しに加えて、「さ」の中の小見出しとして「さようなら」があったり、「ふ」の中の小見出しとして「ふしぎな」があるんですね。いろんな人が書いた「ふしぎな」で始まる本が集まっている、ってちょっと読みたくなりません?

普段、著者名の五十音順の棚で児童読みものを利用している方も、並びが違う棚を見ると、いつもは見逃している本に気付けるかも。文京区立図書館には利用登録に在住地等の制限がないので、ぜひ他自治体の皆さんも足を伸ばしてみてください。

1階の奥へと進んでいくと、一番奥に新聞・雑誌コーナーがあり、周囲の壁沿いの棚に地域資料、家事関連本、女性・家族関係の本が並んでいます。児童コーナーに接している棚には、児童文学研究に関する本や絵本のガイドブックなども置いています。小さい空間に利用率の高い資料が集まっているわりには、座席数がテーブル席が6席、椅子が8席と少ないので、休日などは満席率が高いです。

訪問記冒頭に挙げた、神田上水に関する説明もこの地域資料コーナーにあります(カウンターの脇)。一緒に書かれている神田川の夜桜も、私も一度見に行ったことがありますが、いい雰囲気ですよね。目黒川の夜桜などはお花見の人が多すぎてとても静かに見られたものではありませんが(笑)、神田川の夜桜はしっとり落ち着いた雰囲気で見られますし。この地域の一番の財産は、この落ち着いた雰囲気なのかもしれません。

§ 2階の様子

2階にあがると、階段近くの掲示板に新刊の帯がたくさん貼ってあります。帯を新刊紹介に利用しているのですね。図書のほかにCDも2階にあるのですが、CD棚近くの柱にCDジャケットのタイトル部分をずらっと貼って、これも新しく入ったCDの紹介として利用しています。

階段・エレベーターから書架エリアへ入ると、すぐ右にカウンターがあり、カウンターを囲むように「コ」の字に書架が並んでいます。カウンターの真正面あたりはCDコーナーで、試聴機も1台あります。カウンターより右に回りこんだところには、検索機に並んでネット閲覧PCも2台あります。

カウンターから見て左に回り込んだところにある辞典類のコーナーは、隠し部屋のように小さな空間。この手前に国語学者の「大野晋文庫」があるのは、生前大野氏がこの水道端図書館に通っていたことから、亡くなったあとに蔵書を譲っていただいたのだそうです。棚を見ると、大野氏の著作に加えて、百科事典や翻訳図書目録などが並んでいます。やはり学者となると、1冊何万もする翻訳図書目録なんかもご自分でお持ちなんですね。長く水道端図書館をご利用の方は、知らぬ間に大野氏と会ったことがあるかもしれませんよ。

2階書架の側面には朝日・読売・日経・毎日・産経・東京各紙の書評欄のコピーが貼ってあります。単に書評欄を切り抜くだけでなく、記事上にある全ての書籍に関して、文京区立図書館での問合せ番号や、所蔵館の頭文字がメモしてあるので、それを手掛かりに棚を見たり検索・予約できます。最新の書評を書架に貼っているほか、バックナンバーをファイリングしたものが2階の検索機の下にあるので、ちょっと前に読んだ書評があとになって気になっているという方は、そちらも活用してください。

日本人の書いた読みものは、小説も随筆も一緒にして、著者姓名の五十音順に並んでいます。但し、アンソロジーなど複数の著者による小説・随筆集は「合集」として、小説・随筆の並びの前にまとめて置いてあります。外国人の書いた小説は、「中国文学」「英米文学」「ドイツ文学」等の国・地域別に分類された上で、著者姓名の五十音順に並んでいます。複数の著者のによる小説・随筆集は、日本の読み物と同様に、国・地域ごとに先頭に並べています。

読み物の棚やCD棚の周りには、図書館職員さんからのお薦め本・CDが貼ってあります。水道端図書館は、2階フロアに書棚がぎっしり並んでいる感じで、棚側面に設置されている特集コーナーもやや見にくいところがあるのですが、通りがかりにでもこれらお薦め本・CDや特集コーナーをちらっと覗いてみてくださいね。

右に回り込んだ突き当りには、中高生コーナーや外国語図書のコーナーがあります。中高生コーナーは漫画も並んでいますが、賑やかな表示などもあまりなく渋い雰囲気なのは、やはり館内全体の落ち着いた雰囲気に合わせてでしょうか。外国語図書はほとんどが英語で、左隣に語学の本、右隣に語学カセット・CD付きの本が並んでいるため、この付近全体で英語勉強コーナーといった雰囲気です。いつも翻訳で楽しんでいる小説などを原書で読んでみるというのもいいかも。

§ 3階の閲覧室

3階はフロア全体が閲覧室です。大部分が2人ずつ向かい合って座るタイプの4人掛けの机で、壁際に1人で使うタイプの机が11席あります。1人タイプの机のうち、4席はパソコン優先席です。4人掛けタイプの机も、1人分のスペースは広めだし、机同士の間隔も空いています。歩いていると床がふかふかで気持ちいい。床を張り替えたばかりなのかな。ゆったりと閲覧できる、いい空間です。

§ ハヤカワ文庫、勢揃い!

もったいぶって最後にもってきましたが(笑)、水道端図書館の最大の特徴は2階にあるハヤカワ文庫。SF、NV、FT、NF、HM、JA各シリーズが第一巻から揃っているのだそうです。冊数が多いので、通常の文庫本とは別にハヤカワ文庫用の棚があります。ハヤカワ文庫の本を探しているとわかっているときは、最初からハヤカワ文庫の棚に行けばいいですが、「読みたい本があるけれど、どの出版社から出ているかわからない」というときは、闇雲に文庫本の棚を探してみるのではなく、まず検索機でハヤカワ文庫かどうか調べてから本棚に行くようにしてください。

ハヤカワ文庫コーナー内は、並び順も文庫コーナーでの標準の著者名五十音ではなく、ハヤカワ文庫の番号順になっています。番号がわからない場合は、館内の検索機で著者名やタイトルで検索すると、ハヤカワ文庫の番号を使った請求番号が出てきます。同じ本でも、水道端図書館以外の文京区立図書館では著者名を使った請求番号なのですが、水道端図書館所蔵のハヤカワ文庫はハヤカワ文庫での通し番号を使っているのです。

ハヤカワ文庫番号順に慣れているSF好きの方やミステリ好きの方には、便利な並び順ですね。それに、本棚って同じ本が入っていても、並び方が違っていると普段は見逃している本に出会えたりしますよね。著者名順に慣れている人も、このハヤカワ文庫の棚を見ると、いつもとは違う本に出会えるかもしれませんよ。

この落ち着いた、江戸時代からの町並みさえ感じられる図書館に、未来を描いたSFがたくさん並んでいるなんて、場所の妙といった具合で面白い!もちろん、過去へトリップするSFもありますし、想像の世界の中ならどこへでも行けますよね。でも実は図書館こそが、過去の古い資料もあれば、ネット閲覧PCで最新の情報を得ることもできる、時空を超えた施設といえるのではないでしょうか。図書館に集まっている情報を使って、過去・未来、世界中へと想像の旅をしましょう!

文京区立水道端図書館 特集・行事・図書館だより感想記

  ビブリオバトル ~芥川龍之介~
―2013年7月27日のイベント
水道端図書館にとっては初めての開催となる芥川龍之介をテーマにしたビブリオバトルに発表者として参加してきました。

文京区立水道端図書館 データ

住所東京都文京区水道2-16-14 →Google Mapで見る
Tel03-3945-1621
開館時間
月~土曜9:00~21:00
日曜・祝日、12月29日9:00~19:00
定休日第3月曜(祝日の場合は開館し、翌日を休館)
12月30日~1月4日
最寄駅 東京メトロ有楽町線 江戸川橋駅から徒歩8分
東京メトロ東西線 神楽坂駅から徒歩15分
東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅から徒歩18分
駐輪場建物向かって右に駐輪場あり
駐車場なし
所蔵資料
図書所蔵数164,456冊(2017/04/01現在、出典『平成29年度 東京都公立図書館調査』)
音声資料
CDカセットレコード
ありありなし

映像資料
DVDビデオLD
なしなしなし
※ DVD・ビデオは広報DVD・ビデオを除いた市販ビデオ・DVDの有無を表しています
設備
ブックポスト建物入口右の壁にブックポストあり
自動貸出機なし
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備CD試聴機1台あり。利用は1人30分まで。
映像視聴設備なし
ネット閲覧PC2階カウンター向かって左に回り込んだ奥にネット閲覧PC2台あり。利用は1回1時間、次に待っている人がいなければ30分のみ延長可能。
持参PC利用閲覧室内のパソコン優先席(4席)にて持参PCの利用可能。電源あり。
LAN接続
  • 文京区公衆無線LAN「Bunkyo_Library_Free_Wi-Fi」の利用可能。利用は1回2時間、開館時間内は何回でも利用可能。利用の際は、メールまたはSNSアカウント(Google、Facebook、LINEのいずれか)での認証が必要。利用方法の詳細はこちらをどうぞ。
  • 館内に「docomo wifi」「ソフトバンクwifi」「au wifi」のアクセスポイントあり
飲食設備等着席時の蓋付き容器(ペットボトル・水筒など)からの飲料摂取はOK。飲むとき以外は、机の上に置かず、鞄の中へしまってください。