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移転前の旧・中央区立京橋図書館

旧・京橋図書館は2022年8月31日をもって閉館しました。その後、現在の京橋図書館(本の森ちゅうおう)が2022年12月4日に開館しました。

以下は、移転前の旧・中央区立京橋図書館の訪問記です。

移転前の旧・中央区立京橋図書館 訪問記

last visit:2014/03/04
§ 図書館の場所

京橋図書館は、中央区役所の地下1,2階にあります。徒歩10分以内で行ける駅を挙げると、新富町・築地・東銀座の3駅。15分以内まで広げると、銀座一丁目・宝町・京橋・八丁堀・銀座・築地市場と、合わせて9駅もあります。路線としても、有楽町線・日比谷線・銀座線・丸ノ内線・都営浅草線・京葉線・大江戸線から行けるという、都内でもアクセスのいい図書館の一つです。

中央区役所の地下1,2階にあると書きましたが、区役所から直接京橋図書館へ行くことはできず、北側に区役所の入口、南側に図書館の入口と、入口が別になっています。建物の脇から図書館入口に直行してしまうとわかりにくいのですが、敷地の南の角から見ると大きな柱による門があり、門を入ると地下広場、その先に図書館入口があるというデザインになっており、建物のこちら側の壁には途中階にある庭園からツタがおりています。今の感覚で見るとやや古めかしい気もする建物なのですが、この建物へ移設オープンした1970(昭和45)年当時にはさぞかし荘厳な様子だったろうと想像してしまいます。

§ 図書館内の様子

建物の地下1,2階が図書館なのですが、図書館入口が地下1階なので、体感としては地上階と地下階がある図書館のような気がしてしまいます。地下1階にカウンター、一般書架、児童コーナーがあり、地下2階に地域資料室、読書室、鑑賞室(おはなし会などイベントを行う部屋)があるという配置で、地下1階は平日20時まで、土曜は19時まで開いていますが、地下2階は17時で閉まってしまいます(日曜は地下1階も17時まで)。

建物自体も古いですが、中の設備も時代めいた雰囲気です。図書館の場合は、古さも“歴史がある”という長所にも思えるのがメリットかもしれません(笑)。京橋図書館は、起源をたどると東京市立京橋簡易図書館として1911(明治44)年に開館し、1950(昭和25)年に東京都から中央区へ移管され、1970年に現在の建物に移設しており、実際にはこの建物以上の歴史を持っています。住所としては「築地1丁目1番地1号」なのに「京橋」図書館と名乗っているのも、東京市立図書館時代からの「京橋」を受け継いでいるからなんですね。

§ 一般書架

地下1階の入口を入ると目の前にカウンターがあり、その右に返却箱や予約資料コーナーがあります。カウンター前のロビーには、検索機、自動貸出機、座席確保端末が設置されているほか、資料としてCD・DVDと旅行ガイドが並んでいます。ロビーとは壁で仕切られた奥一帯が一般書架で、一般書架内の配置は、中央にレファレンス(調べもの相談)カウンターがあり、その手前に新聞・雑誌コーナー、レファレンスカウンター向かって右から奥に向かって書棚が並び、向かって左の区画には事典・統計類。更に左の端には閲覧席が並び、そのうち一番奥には指定席制の学習コーナーがあります。左手前には中高生コーナーや「外国語の本」コーナーも設置されています。本棚でいくつかの区画に区切られていますが、一般書架内に壁はなく、見通しがいい空間です。

日本の小説は概ね著者姓名の五十音順です。「概ね」というのを説明しますと、まず頭文字が「あ」である主要な著者について見出しを付けて五十音順に並べており、その後に見出しのない著者を「あ その他」にまとめてその中で五十音順に並べています。これを繰り返して、「い」で始まる主要小説家→「い」で始まるその他小説家→「う」で始まる主要小説家…と続いていきます。つまり、ある小説家の本を探している場合、まずは五十音順に並んだ見出しの中から作家名を探し、もしなければ該当する頭文字の「その他」の中から探すという手順になります。

著者が複数いる小説集の場合は、タイトルの頭文字をとって「その他」の最後に入っています。また、書店では小説もエッセイも一緒にして著者名で分類していることが多いですが、京橋図書館では同じ著者の本でも小説は小説の棚に、エッセイはエッセイの棚に、と分かれているのでご注意ください。外国の小説は、「東洋の小説」「英米の小説」といったように国・地域別に分類したうえで、著者姓名の五十音順に並んでいます。

中高生コーナーの隅にある「外国語の本」の棚には、外国語の一般書のほか、児童向け読み物や絵本もあります。絵本は英語以外の言語の本も1~数冊ずつありますが、児童読み物や一般書も含めて大部分は英語です。低い棚なので見逃しがちですが、外国人の方が読むためだけでなく、英語の勉強にも使えそうです。

左奥の学習コーナーの仕切りとして使われている本棚はビジネスコーナーになっていて、通常の図書館の分類だといろいろなところに散在してしまうビジネス関連本がひとまとめになっています。「パソコン」「会社・事業所立ち上げ方」「合併・分割・清算」「プレゼンテーション」「クレーム対応」といった具体的なキーワードで分類されているので、仕事で必要な本を探しているときにはまずこのビジネスコーナーを見てみてください。

§ いろんな手続きを利用者が自ら行うシステム

一般書架エリア左奥にある学習コーナーは指定席制が10席あり、机ごとに電源があるので持参PCも使えます。ここの座席を使うには座席確保システムでの手続きが必要で、カウンター前ロビーの座席確保端末を操作します。座席確保できるのは9:00~10:00、10:00~11:00といった00分区切りの1時間のコマ単位で、1日4コマまでの利用が可能です。

座席確保の手順を説明しますと、座席確保端末で図書館カードのIDと登録したパスワードを入力して[確保]ボタンをクリックします。すると、現在の時間枠と次の時間枠(9時に操作したら、9:00~10:00と10:00~11:00の2コマ)に関して、あと何席空いているかが表示されます。確保したいコマを選んで[確保票発行]ボタンをクリックし、確認画面が出たらもう一度[確保票発行]ボタンをクリック、すると確保票が印刷されて手続き終了です。現在のコマを確保したならそのまま座席を使えばいいし、次の時間帯を確保したならその時間になってから座席を使用します。

学習コーナー席だけでなく、地下2階の読書室やレファレンスカウンター脇にある学習端末席(インターネット・データベース閲覧PC)を使いたいときにも、同様の手続きが必要です。コマを選択する画面の上部に、学習コーナー、読書室、学習端末席という選択ボタンが並んでおり、利用したいものを選択すると、それに関する座席確保ができるようになっています。

私が同じ中央区の日本橋図書館で座席システムを使った際の体験ですが、18:00~19:00のコマを利用していて、19時直前にもう1時間使いたいと思って座席確保しにいったところ、同じ席で19:00~20:00のコマが取れました。おそらく、時間帯を続けて利用する際に、前の時間帯で使っていいる座席に次の予約が入っていなければ、自動的に同じ席にしてくれるようです。

また、コマの終了時間を待たずに席を使い終わった場合は、自分で取消手続きをする必要があります。手順としては、確保するときと同様に、図書館カードのIDと登録したパスワードを入力して[確保]ボタンをクリックします。すると、現在確保しているコマに「確保中」という表示が出ていて、その隣に[取消]というボタンがあります。そのボタンをクリックすると確保が取り消され、別の利用者が確保できるようになります。ただ、学習端末席(インターネット・データベース閲覧PC)を使って予定時間を待たずに終了する場合は、すぐそばのレファレンスカウンターの職員さんにその旨伝えるだけでOKです。

また、貸出も自動貸出機を使って利用者自ら行う仕組みです。図書館カードのバーコードを詠み込ませた後に、貸出手続きしたい本やCDを置いて、今回貸出手続きする資料数を入力、ICタグから読み取られた貸出資料のタイトルが表示されるので[確認]をクリックすると、貸出票が印刷されて手続き終了です。自動貸出機はカウンター前ロビーだけでなく、一般書架や児童エリアにも1台ずつあります。

返却の際も、職員さんに渡さずにカウンター向かって右の返却BOXに投函すればいいだけ。CD・DVDを返却する際には、本より壊れやすいので、専用の袋に入れてから投函します。従来の職員さんに返す仕組みだと、本の中にメモなどを入れたまま返却しても職員さんがチェックして気付いてくれましたが、利用者が自分で投函する仕組みだと発見されたときには誰のものかわからないので、返却前にそうしたものがないか利用者側が気を付ける必要がありますね。

予約資料についても、利用者が棚から自分で探して貸出手続きします。予約資料が届いたという連絡が来てから、予約資料コーナー手前右のバーコード読取機で図書館カードを読み込ませると、「B-2」のようにアルファベット1文字+数字1桁が印刷されたレシートが来ています。これが貸出資料のある位置を示しており、「B-2」なら「棚Bの上から2段目」を意味しています。予約資料コーナーへ入ると、左からA、B、C…と棚が並んでいるので、自分の予約した本を探して予約資料コーナー内の自動貸出機で貸出手続きします。

更に、2014年3月からは、Felicaを図書館システムに登録することで中央区立図書館カード代わりに使うことができるようになりました。FelicaはSuica・PASMOなどの交通用ICカードやおサイフケータイに搭載されており、自分の手持ちのこうしたものを登録しておけば、図書館カードを持たずに貸出や座席予約ができるのです。

登録方法は簡単で、館内の検索機で利用者メニューへログインし、左サイドメニューの「FeliCa ID 登録」をクリックしてから、検索機に接続されているFeliCaリーダーにPASMOなどを載せるだけ。登録後は、図書館内で「図書館カードのバーコードをスキャン」あるいは「利用者IDを入力」という場面のさい、その代わりに「Suica・PASMOをタッチ」で処理できるようになります。FeliCa IDを利用者IDに紐付けするだけで、図書館システムからFeliCaへのデータ書き出しはしていません。利用者ID入力画面でよく入力ミスする人(私です 笑)や図書館カードを忘れやすい人は、手持ちのFeliCaを登録しておくと便利です。

§ 児童エリア

一般書架の部屋から廊下を隔てた対面にある小さな部屋が児童エリアです。所狭しと本が並んでいる空間で、靴を脱いであがれるスペースなどはなく、おはなし会を行う際は地下2階の鑑賞室で行います。児童コーナー内にもカウンターがあるのですが、仕切りを置いて本当に大人1人座るのがやっとという小さなカウンター。職員さんの座るスペースを最小限にして、そのぶん本をたくさん置いてくれています。

絵本は日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、絵を描いた人の姓名の五十音順に並んでいます。児童読みものは、日本人作家のおはなしと外国人作家のおはなしを別にして、著者姓名の五十音順に並んでいます。たくさん本がありすぎてどの本を選べばいいか迷うときには、図書館が配布している冊子・「このほんしっている」(えほん・1,2年生・3,4年生・5,6年生と年齢で分かれています)も参考になります。

児童エリアの奥には今は使われていない外への階段があるのですが、階段の最上段にくまのプーさんの大きなぬいぐるみがあり、その下には別のぬいぐるみも座っていて、プーさんのための雛壇みたいになっているのが面白いです。また、棚上には仕掛け絵本が展示されており、飛び出すお城や動物が児童エリアを彩っています。ただ、展示用に固定されているので、今開かれているページしか見られないのがやや残念。

こんな感じで、小さいスペースに所狭しと本が並んでいる中に、ぬいぐるみやしかけ絵本などが点在している様子が、おもち箱の中に入ったみたいです。広々とした空間もいいけど、特に子ども時代はごちゃごちゃした空間も面白く思えるんですよね。ずらっと並ぶ本の中からお気に入りの本を見つけましょう!

§ 地下の様子

児童エリア手前の階段から地下2階に降りると、すぐ右にイベントを行う鑑賞室があり、その隣に地域資料室、通路に沿って左に曲がった部屋が読書室です。30席ある読書室や、後述するように古い資料もいろいろ閲覧できる地域資料室がある地下2階が17時で閉まってしまうのはやや残念。

別室となっている地域資料室は敷居が高い印象を受けますが、入ってみれば一般的な図書館の地域資料コーナーと同様に、行政資料から町歩きガイドや地域が登場する小説まで地域に関連するさまざまな本が並んでいます。壁に沿って並ぶ書棚は扉がついているタイプですが、施錠はされていないので自由に扉を開けて中の本を見ることができます。浮世絵に関する本なども多いので、地下1階の書架と同様に気軽にいろいろ手に取ってみてください。

§ 見えない部分がすごいんです

この地域資料室、資料をコピーする場合は、冊数と資料の状態を確認した上でコピーとなり、戦前発行の資料はコピー禁止、それ以降の発行の資料でも状態によってはコピーお断りと、資料の扱いについては厳しい管理をしています。それも百年以上の歴史の中で収集した貴重な資料を有しているからであり、それらは閉架にあるので館内を回った限りではわかりませんが、1945(昭和20)年以前に発行された図書は25,500冊ほど、戦前に内務省が出版物の検閲の際に使用した内務省委託本も2,400冊持っているのだそうです。もしかしたら、この世に数冊しか残っていない本もあるかも…と思うと、緊張してしまいますね(笑)。ちなみに、それらの貴重資料は貸出・コピーはできませんが閲覧はできるので、ご興味のある方はぜひご利用ください。

そのように見えないところで貴重な資料を有している一方、錦絵や昔の風景写真や画像をデータベース化して、ネット上からも見られるようにしてくれているんです。中央区立図書館公式ホームページのタイトル下メニューの一番右の地域資料室画像データ検索から画像が検索できます。見たい場所や製作者などが決まっていればこのページから検索するのが便利ですし、特に決まったものがない場合は「マップ検索」で見るのがいいと思います。今からは想像できないくらい建物が少ない戦前の写真など本当に区内なのかと目を疑ってしまったり、見ていると楽しいです。

一見古びた図書館ですが、歴史ある図書館が有する資料を活用できるかどうかはその人次第。ある程度戦前のことを知らないと、つまり「○○のことを調べたい」と思うには「○○」という言葉や事実を知らないといけないのですからね。かくいう私もまだまだ知識が浅い人間の一人。知識があれば貴重な資料を閲覧して楽しめるだろうなと思いながら、地域資料室の開架にある本を楽しみました。いつの日か「○○の資料をお願いします」と専門的な調べものをしてみたいなあと空想する私です(笑)。

移転前の旧・中央区立京橋図書館 特集・行事・図書館だより感想記

―2013年1月5日から1月31日までの企画
キーワードをもとに職員さんがピックアップした1~3冊の本を貸し出す「福袋本」。キーワードが書かれたカードを選んでカウンターに持っていくと本の入った福袋を借りられる、つまり、中身は借りてからのお楽しみというわけです。