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日暮里図書館さんぽ 「暮らし」とは何ぞや

visit:2026/10/25

本を返しに日暮里図書館へ。日暮里図書館へは9月に二度行ったが、最初は1階中心、二度目は1,2階を利用しただけで、地下の児童フロアには一歩も足を踏み入れなかった。今日は地下を見るのも目当ての一つだ。

返す本は2冊あるが、そのうち1冊は返すことを少し躊躇する気持ちがある。『古びた未来をどう壊す?』なのだが、この本は現在改修工事で長期休館中の南千住図書館の蔵書で、私が返すと外部倉庫の保管となり、休館が明ける2028年7月まで荒川区立図書館の蔵書検索の対象外となるのだ。荒川区立図書館でこの本は1冊しかないので、私が返した後は検索結果上でこの本は荒川区立図書館にないということになってしまう。私が借りている間に誰かが予約を入れればその人へ回るのだが、残念ながらそれはなかった。

今回の南千住図書館はそうではないが、長期休館中の臨時窓口にも少し本棚を置いて、休館に入ってから返すとそちらに置かれて借りられるようになる場合もある。自分の返した本がそういう扱いになると、好きな本が封印されるのを救ったような気分になる。こうした長期休館と蔵書管理のユニークなやり方として思い浮かぶのは、奈良県生駒市の図書館本館が2025年11月から2026年4月初めまで休館したときの企画だ。このときこの図書館では、長期休館に入る3日前から本館の棚にある本に対して、「貸出冊数上限なし、返却期限は2026年5月下旬。この企画で借りた本はリニューアルオープンまで返さないようお願い」ということにしたのである。ざっくりいうと、保管庫行きになってしまう本で読みたいものがあれば利用者が保管してください、ということだ。「本館の棚にある本に対して」とすることで予約がたまたまこのときに回ってきた本などは対象外とし、まさに「企画がなければ保管庫行き」の本を有効活用できる企画だろう。都内の図書館でもどこかでやってくれたら面白い、但しあまり長い休館期間でこれをやってしまうと紛失率も高くなってしまうだろう、ちょうどいいのは生駒市のケースのような数か月の休館か。

1階カウンターで返却してから地下へ。階段・エレベーターのスペースから児童エリアに入ると、手前側の絵本を広げてよめるじゅうたんコーナーが目に入る。壁紙が青空、そこに星空のカーテンがかかっているという、昼と夜の空からなるデザイン。その奥に絵本棚、更に奥へ進むと児童読み物の棚がある。

大きな絵本が入っている棚の上には、ウォーリーをさがせのイラストを立てて飾って立体的な「ウォーリーをさがせ」にしている飾り付けがある。想像するに、ウォーリーをさがせの飛び出す絵本がたくさんの人に使われるうちに飛び出しの仕掛けが壊れてしまい蔵書としては処分対象になってしまった、その飛び出す部品を絵本棚の飾りとして再利用している、というところか。試しにウォーリーを探してみるが、今年55歳を迎えてアラ還に突入した身では老眼度合いを実感するだけ、見つけられずにその場を離れる。

外に目を向けると、地下ながらちょっとしたテラス、というほどでもない素っ気ないコンクリート敷きのスペースが屋外にあり、そこの壁ぐるりに夕焼け的色合いの街なみや動物が描かれている。荒川区立図書館ウェブサイトの「日暮里図書館をもっと知りたい」ページに「夕やけこやけ」などをモチーフにした児童室の外壁の壁画が紹介されているのだが、日暮里図書館の構造を知らずに説明を読むと、「児童室外壁に壁画を制作」したのに「児童室の窓から楽しい景色が見える」とはどういうことか謎に感じるだろう。地下のテラスぐるりの壁=屋内からテラスを見たときに見える側の壁なので、外壁でありながら児童室の中から壁画が見えるのだ。図案は児童室っぽく賑やかだが、夜へと日が暮れつつある色合いで味がある。

児童フロア内にも壁画と同じタッチで描かれた絵が掲げられ、こちらには絵を背景に「読書を愛するまち・あらかわ」宣言が掲げられている。そのパネルの左脇にも小さな説明パネルがあり、旧・ぬりえ美術館のことが書いてある。昭和20〜30年代に人気だった「きいちのぬりえ」の蔦谷喜一の親類によって町屋4丁目に開設された旧・ぬりえ美術館は2022年に閉館、その貴重なコレクションを荒川区が引き継いだとのこと。パネル付近に関連書があるわけではないが、同じ壁の左側に図書館に来た子どもたちが塗ったと思しき日暮里繊維街マスコットキャラクター・にっぽりんのぬりえがたくさん飾られている。受け継いだぬりえ資料を展示することもあるのだろうか、荒川区立図書館のイベント情報を気にして見るようにしよう。

大人の世界に戻ることにして1階へ。にっぽりんからの連想で一般書架のカウンターの近い辺りにあるハンドメイドコーナーを見る。「ハンドメイドコーナー」とあるので繊維街に近い日暮里ならではのコーナーかと思ったら、家政学・生活科学(59)の棚をそう呼んでいるだけのようだ。東京図書館制覇!を始めた20年前頃は手芸や編み物をときどきしていたのに今は全然していない、そもそもどうやって手芸・編み物の時間を捻出していたのかわからないくらい今は何かと忙しい、生活スタイルを見直した方がいいのかな、など思っていると、暮らしのエッセイ(S590.4)という分類があることに気付く。

ラインナップを見ると「暮らしのエッセイ」と言われればそうかもしれないが、女性が書いた女性向けのエッセイばかりが並んでいる。ジェーン・スー『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』はまだ「暮らし」要素がありそうだが、坂東眞理子『女性の品格』は「暮らし」に括るのは無理がある気がする(どちらも未読なので、書誌情報などからの想像)。ちなみに『女性の品格』を東京都立図書館の横断検索を使って調べてみたら、23区で590に分類しているのは日暮里図書館だけ、大田区立多摩川図書館と江東区立東陽図書館では女性史(367.2)、それ以外の全ての図書館は人生訓(159)に分類している。なるほど、367という考え方もあるのか、興味深い。

思えば東京図書館制覇!を始めた頃は、図書館での言葉の使い方として、料理・手芸・裁縫などの家政に関する本がある棚を「女性コーナー」と呼んだり、親と子に向けたコーナーを「お母さんと」と呼ぶような例があった。図書館がそのような性役割決めつけをしていたというよりは、社会全体がその頃はまだそうだったのだ。ここからは私の想像だが、荒川区立図書館の「S 590.4」も最初は「女性向けエッセイ」の分類として使われていたのが、時代の変化を受けて「暮らしのエッセイ」に名前を変えた、その後で分類を決める本はともかく、既に分類が決められた本を分類し直すことまではしていない、その結果実質的に女性向けエッセイが並んでしまっている、ということではないだろうか。そうだとしたら、分類名と実際に分類されている本のずれが、今が性役割解放の過渡期にあることを表しているといえそうだ。

さて、今日はこの後に文京区立本郷図書館へ行くつもりなので、この辺で日暮里図書館を出ることにする。日曜17時の谷中銀座は人通りが多く、それを避けるのに適当に路地を進めばいいだろうと思ったら早々に行き止まりに突き当り、谷中の細かい路地は迷路のようで適当歩きでは駄目だと谷中銀座に戻る。歩く人波には西洋人が目立つのは、元々特に西洋人に人気があるのか、または日中関係悪化で中国人観光客が減った結果なのか、いずれにせよ国際的観光スポットになった様子をあらためて目の当たりにしつつ千駄木へと向かう。

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