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上池袋図書館さんぽ 本の背に情報を足すところ

visit:2026/06/07

前日にリニューアル開館した上池袋図書館へ。2025年2月3日から休館して改築工事をしていたのが終わり、同じ場所にて新しい建物となって2026年6月6日に開館したのだ。このリニューアルではリニューアル開館日に先だって前日の2026年6月5日に誰でも入れる内覧会をしていて、私はそちらにも行ってきた。借りたりすることはできないが館内に職員が点在しており建物や設備のことを説明してもらえて、小中学校が終わった時間帯には友達と一緒に内覧会に来た風の子どもたちが、これいいね、また来ようと話しているのもいい雰囲気、ぜひこうした内覧会が広がって欲しいと思う。おそらく職員にとっても、その立地でどんな人が来るのかを業務開始前に感じることができるいい機会だろう。

そんなわけで、リニューアル開館した上池袋図書館は今日が初めてだが、この建物に来たのは2回目である。今年2月にリニューアル開館した梅丘図書館開館初日が激混みだったので、内覧会で話した職員さんには初日は絶対混むと行ったのだが、リニューアル開館2日目の今日の様子はそれほどでもなく拍子抜けした。梅丘図書館の場合は前日にアド街ック天国で取り上げられたという要素が大きかったのかもしれない。あまりに混み過ぎているとさすがに居心地悪く、上池袋図書館の今日の様子のほうがちょうどいい。

新しい上池袋図書館は改築前と同様に地上2階・地下1階の建物、加えて、建物南側が1,2階吹き抜けになっている造りや建物の北端が直線の壁ではなく丸みがあるかたちになっているのも前の建物を踏襲している。新しいのに懐かしい。前の建物の南側にあったステンドグラスは残念ながらなくなってしまったか、と内覧会で図書館職員に聞いてみたら、児童コーナーの柱、じゅうたんコーナーから入口側に向かうと見えるところに一部を残していることを教えてくれた。そうそうこんな模様だったと残してくれたことを嬉しく思う。一方、前の建物との違いで目立つのは屋外テラスで、上池袋さくら公園の中にあるという立地をうまく活用している。天気がいい日にここで過ごしてみたい。

1階は「にぎやかなフロア」と題して、児童コーナー、中高生コーナー、一般書架のうち家政学・生活科学と妊娠・出産・育児に関する本がある。先で屋外テラスに触れたが、それとは別に中高生コーナーの奥にも飲食ができるラウンジがあり、最近流行りの「居場所としての図書館」という様子だ。

家政学・生活科学(59)については全てが1階にあるのではなく、大部分が1階にあるが2階の一般書架にも少しある。2階にある本を挙げると『70歳からのおしゃれ生活』『大人の上品ツヤ肌メイク』などで、シニア向けの本を2階にしたのかと思ったが、『自宅でできるライザップ レシピ編』等の「自宅でできるライザップ ○○編」シリーズも2階にあり、そう言い切るのは間違っていそう。今は蔵書数が少ないので、何が1階で何が2階になるという境目がまだよくわからない。もっと蔵書が増えた頃にあらためて見てみよう。

そう、蔵書数が少ないと書いたが、上池袋図書館は2023年度末の蔵書数が98,357冊だったのが2024年度末の蔵書数が23,933冊と、改修工事休館のタイミングで多くの蔵書を除籍したのだ。全くの新しい図書館にまだそれほど蔵書がないケースはよくあるが、元々あった図書館が工事による休館のタイミングでここまで蔵書を減らすのは珍しい。但し収納可能冊数は改築前と大きく変わっているようには見えない、つまり、今はまだ棚いっぱいに本が並んでおらず隙間が多いのだ。また、改修前の上池袋図書館は豊島区立図書館の地域館で唯一CDを所蔵していたのだが、リニューアル開館した後はそれがなくなり、豊島区で視聴覚資料を所蔵しているのは中央図書館だけとなった。建物だけでなく資料の在り方も新しくなったかたちだ。

2階は「静かなフロア」で、一般書架と新聞・雑誌コーナーのほか、座席予約システムで管理する自習室やPC席がある。新聞・雑誌コーナーの座席は窓に向かって1人分ずつカフェテーブルと椅子が並んでいて、同じ東武東上線にある板橋区立中央図書館の2階窓際席を連想してしまう。座席予約システムで管理する2階の席としてはもう一つ「電車席」というものがあり、壁際に窓に対して横を向くかたちで半個室的に1席ずつ空間が囲われた席がそれだ。図書館が建っているのが旧日本国有鉄道清算事業団から取得した場所ということから内装にもその特徴を折り込んだのだろう。この名前が付いていなければ特に電車を連想しないだろうけど、「電車席」と言われるとまさにその通りと思ってしまうのが面白い。

一般書架をぶらぶらと歩く。上池袋図書館の蔵書バーコード左上にある桜の花びらのかたちの煙を吐き出す汽車のイラストや、汽車を模った蔵書印が奥付に押されているのを見て、そうそう上池袋図書館の蔵書はこうだったと思い出す。一般書架の棚が同じ方向にびっしり並ぶのではなく、ところどころに隙間があって隣の列に移動しやすくなっているのが、あてもなく書架を歩くのに便利だ。

日本の地理・紀行の棚(291)で『東京裏23区』という本が目に留まる。読んでみると東京の区ごとに犯罪が起こった場所を巡る雑誌連載をまとめた本とのこと。私が住む江東区の章を開いてみると、導入で1965年に当時償焼却が追いつかず生ごみのまま埋め立てが行われていた夢の島から渡って来たハエやネズミが襲ったというエピソードが紹介されており、犯罪の話以上にぞっとしてしまう。昔のことだからそうだったとしても今の私には直接影響がないのに、今私が住む北砂までも来たのだろうかと考えずにはいられない。

社会科学の棚(3類)を見ていると、背にSDGs17の目標のアイコンが貼られている本がところどころにある。例えば『子どもたちがつくる町 大阪・西成の子育て支援』に「12 つくる責任 つかう責任」と「16 平和と公正をすべての人に」のアイコン、『親子で話そう!性教育 子どもを性被害から守るために大切なこと』に「3 すべての人に健康と福祉を」と「5 ジェンダー平等を実現しよう」のアイコン、といったかたちだ。SDGsの目標は、何番が図書分類でのこれ、というようなシンプルな結びつけがしづらく、同じ目標を図書分類のいろいろなものに結びつけられる。本の背にアイコンを貼ることで、図書館での分類に従った棚に収まったままでもSDGsのどれに結びつく本なのかがわかるようにしているわけだ。

図書館を建てる 図書館で暮らす』の中で山本貴光氏が、本の背表紙はすごい発明だ、たくさんの本を並べても背でどれが何の本かわかる、ということを書いている。確かに本の中身をいちいち開かなくても本棚に並ぶ本を選ぶことができるのは背表紙があってこそだ。そして図書館では自分で背表紙に情報を足すこともしている。まずは基本の分類ラベル、加えて上で書いたSDGsのアイコンもそうだし、豊島区立図書館では文学賞受賞作に「芥川賞」「直木賞」といった文学賞名を貼っている。図書館は「本を読めるところ」でもあり「誰でも滞在できる居場所」でもありといろいろな側面があるが、「本の背に情報を足すところ」でもあると考えると面白い。元々のデザインがある限られたスペースにちょうどよく情報を足すのにはある種のセンスも必要だ。

地下の「多目的フロア」に降りると、まず目につくのが堀之内跨線人道橋に関する展示だ。上池袋図書館の背後には、東武東上線とJR埼京線が通るのに加えて広い車両基地がある。それを跨いで歩ける橋が昔あったのが現在はもうないのだが、その在りし日の橋の全体図や鉄道レールを橋脚に使っていたその実物が展示されている。車両基地を上から見られる橋というのはそれほど鉄道好きではなくともそそられるところがあり、空想が膨らむ。

その奥には3Dプリンタやレーザーカッターでモノ作りが体験できるファブスペースや、多目的フロアがある。そういえば、中高生コーナーの棚のジャンルを示すミニ看板がレーザーカッターで作られたものだった。また、今日はリニューアル開館2日目なので、新規登録・登録更新をする人が多いことを見込んで登録専用の臨時カウンターが地下に設けられていた。結果的にそこまで混雑はしていなかったのは、休館している間も臨時窓口で図書館を使い続けていた人が多かったということなのか。豊島区はここ数年どこかが工事で休館していて、今も7館中2館が長期休館中なのだが、近くの図書館が長い休みに入ってもどうか別の図書館や臨時窓口に行くなどして図書館を使い続けて欲しいと願う。

そうこうしているうちに土曜の閉館時刻の18時が迫り、閉館音楽が流れてきた。不穏な印象を覚える曲で何だろうとPixelのNow Playingに聞いてみたら、マイケル・ナイマンの「Jack the Ripper Stalks His Victims」とのこと。閉館音楽としてはあまり採用されないタイプだが、閉館時刻が「迫っている」感を覚える曲だ。せっかくなので何か借りたいところなのだが、先に書いたようにまだ所蔵数が少ないのでこれという本が見つからない。そのうち音楽が同じマイケル・ナイマンの「Musique à Grande Vitesse:5th Region」に変わっても今の気分に合う本が見つからず、そのまま閉館時刻となってしまった。もっと本が増えた頃にまた来よう。