豊島区立中央図書館さんぽ 決められない日
本を返しに豊島区立中央図書館へ。メカニカルキーボードを買うのに試し打ちをしたかったので、池袋の家電量販店に寄った後グリーン大通りを通るかたちで向かう。このときは図書館に行くまでの間のどこかで食事を済ませようとお店を探すことしか考えていなかったのだが、この文章を書くにあたって豊島区立中央図書館に関する過去のメモを見たところ、グリーン大通りの歩道に豊島区立中央図書館や同じ建物にある劇場・あうるすぽっとの案内タイルがあって、それを辿って歩くと豊島区立中央図書館に着けるようになっているという情報があり、その実物を目にできる機会を逃してしまったことに気が付いた。豊島区立中央図書館は東池袋駅にほぼ直結しているビルの中にあるので、池袋から歩いて行くことはなかなかないのである。いや冷静に考えると、17時頃に池袋を歩いたこの日、たとえそうやって歩こうとしても先の地面が見づらいほど人が多すぎだった。辿って歩きたければ人が少ない午前中などを狙わないといけないと覚えておくことにしよう。
豊島区立中央図書館は、下層階が公共施設、上がオフィスフロアとなっているビルの4,5階だ。まずは4階のカウンターで本を返し、フィクションを読みたい気分だったので日本の小説の棚へ。27万冊を所蔵する豊島区立中央図書館だが、日本小説の棚の冊数は数万冊規模である他の豊島区立図書館と同程度のように見える。ただ、この図書館にある日本小説本はここにしかないかというとそうではない。
豊島区関連資料の中の小説の棚(T913)に行くと、後半生を西池袋で過ごした江戸川乱歩の作品、石田衣良の池袋ウエストゲートパークシリーズ(文庫本で23冊もあるとは今回知った)など、池袋・豊島区ゆかりの小説がいろいろある。『さらば雑司ヶ谷』『雑司ヶ谷R.I.P.』が並んでいるのが目に留まり、前に豊島区役所1階のとしまセンタースクエアでビブリオバトルが開催されたときに『R.I.P.』を紹介したもののイマイチ受けが悪かったのを思い出す。雑司ヶ谷というノスタルジックな場所でアクション映画的なバトルが繰り広げられる面白さをうまく伝えられなかった苦い気持ちがよみがえる。
地域資料の棚全体に視野を広げて、『東京しるしのある風景』を手にとる。サイト「東京新聞ほっとweb(現・ぐるり東京)」で連載された、郵便局の風景印を求めて東京23区をまわるコラムを単行本化した本で、まち歩きも兼ねて回りうちに親切な郵便局員に出会ったり、イマイチな印影に押し直しをお願いしたり、街歩きのなかでその場所の個人的なエピソードを思い出したりする様子が面白い。23区の各区ごとに立てられた章のうち今いる豊島区の章を読むと、風景印の多くが場所の特徴を出そうと区の花であるツツジのかたちになっており、それがかえって豊島区内では似た風景印ばかりに見えてしまうのを、著者が「ツツジの呪い」と呼んでいるのに笑ってしまう。既に大田区に行った後の品川区の章で「とてつもなく素敵なことを知ってしまったので、どうしても欲しくなった」と区を飛び出して回ってしまった大森郵便局の風景印が馬込文士村にちなんだ素敵なデザインで、そういえば馬込図書館もしばらく行っていないと思いを馳せる。
そこから出入口に戻る方向に書架を歩いて、人生訓(159)の棚でひろゆき著『1%の努力』が目に入り、思わず請求記号を確認してしまう。というのも、去年烏山図書館でこの本の請求記号が「159 ニ」となっているのを見つけて、そっちもあるかと驚いたからだ。この豊島区立中央図書館では「159 ヒ」である。最後のカナが著者名先頭1文字なのだが、「ひろゆき」だから「ヒ」としている図書館と、「西村博之」だから「ニ」としている図書館の2パターンがあるわけだ。
2ちゃんねる開設者であるこの人には、「ひろゆき」名で出版している本と「西村博之」名で出版している本がある。具体的には『ひろゆき流ずるい問題解決の技術』は「西村博之」名で出版しており、図書館分類では『1%の努力』と同様に159になる内容だが、豊島区立中央図書館のこの本の請求記号は「159 ニ」である。だから、人生訓(159)の中で著者名五十音順に並んでいる豊島区立中央図書館の棚では、『1%の努力』と『ずるい問題解決の技術』は同じ著者が書いた同じジャンルの本だけど少し離れた場所に収まることになる。一方、ひろゆき名義であっても「159 ニ」とする図書館の場合は、名義に限らず同じ人の同じジャンルの本としてひとまとまりになる。
これが小説家で複数の名前を使い分けている人、例えば阿佐田哲也の筆名も持つ色川武大や中田永一など多数の筆名を使い分ける乙一の場合は、名義に応じた場所に置くのが普通であり、阿佐田哲也名義で書かれた『麻雀放浪記』を色川武大の別名だからとイの棚に置くようなことはない。ひろゆきについて悩ましいのは、姓と名からなる名義と名の部分をひらがなにしただけの名義という、別物だと言い切れるほどはっきりとした別物ではない点である。こうして実際に図書館によって図書記号のつけ方が分かれてしまっているのが面白い。
棚巡りに話を戻すと、まだ小説を読みたい気分が残っていたので5階の文庫・新書コーナーへ向かう。5階の階段を上がった正面の展示コーナーでは、こちらも豊島区ゆかりの作家である泡坂妻夫の自筆原稿などが展示されている。升目が並ぶ原稿用紙に書かれた原稿もあれば、無地のノートの上2割程度をメモ欄、下8割を細かい字びっしりの本文欄とするスタイルで書かれた原稿もあり、興味深い。
ここのところ続けて豊島区立図書館に行った私としては、豊島区立図書館の文庫小説本といえば、著者名頭文字がアの日本小説→著者名頭文字がアの外国小説→著者名頭文字がイの日本小説…と日本と外国の小説が交互に並ぶ様子が頭に刷り込まれている。中央図書館もきっとそうだろうと勝手知ったる豊島区立図書館通の気分で行ってみると少し違う、というか、もっと細かい並び方で驚いた。ここの文庫小説本は日本小説→外国小説→日本小説…の切り替わりが頭文字1文字ではなく先頭2文字、つまり、著者名頭2文字がアイの日本小説→著者名頭文字がアイの外国小説→著者名頭文字がアオの日本小説…といったかたちなのだ。並び方に注目すると切り替わりが激しすぎて落ち着かない気もするが、全体的に日本小説と外国小説がごちゃ混ぜな感じが強くなり、日本・海外問わずに面白そうな本がないかと探すにはいい。
とはいえ、これぞという本が見つからず、今日は何も借りずに図書館を出る。キーボードの方も今日回ったところでは決めきれずに明日秋葉原に行くことにしたので、何だか「決められなかった日」となってしまった。まあ、こんな日もある。