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「広告と折込チラシ資料展」

―2014年2月1日から2月28日までの展示
visit:2014/02/13

墨田区立緑図書館は2,3階に展示ケースを設置しており、それぞれ期間ごとの入れ替えで企画展示を行っています。2014年2月某日に暫くぶりの緑図書館へ閉館時刻間際に行ってみたら、2階で開催されていた「広告と折込チラシ資料展」という展示が面白く、これは後日じっくり見ようと心に決め、あらためて再訪してきました。

まず目につくのが2階展示ケースそばの壁に貼られた折込チラシや江戸時代の広告。配布資料によると、日本のチラシの起源は江戸時代の「引き札」だそうで、紙の値段が下がったことから広まったようです。有名な平賀源内・山東京伝・式亭三馬も広告文をつくるコピーライターとして活躍したそうで、言われてみれば時代小説で広告文を作るシーンを読んだような気も。

展示本に掲載されているものや、実物の江戸のチラシをコピーした掲示物をみてみると、達筆な文字がぎっしり紙を埋めていることに驚きます。絵が描かれているものもありますが、そういうものも余白にぎっしり文字が書かれており、限られた紙面で商品やお店をアピールしようとする迫力を感じます。当たり前ですけど「続きはウェブで」というわけにはいかないわけで、そのチラシだけで「行ってみよう」という気になってもらえるかどうかが勝負なんですね。

また、高尚な学問の読み物ではなく、商売チラシに文字がぎっしり埋まっていることから、識字率の高さもうかがえます。現代人は、キーボードやタッチパネル入力で文字を書く機会が減っていますし、予測変換などの便利な機能も活用しているので、江戸時代の人々のほうがよっぽど文字を書いているのかも。そのせいか、アナログな江戸時代のチラシに味わいを感じて惹かれます。

現代の広告としては新聞の折込チラシを展示しており、緑図書館では1998(平成10)年から新聞折込チラシを資料として保存しているとのこと。展示担当者さんの文章によると、今回の展示にあたって保存していたチラシを紐解いて実感したのは、折込チラシの数自体が減っていることだったそうです。確かに私も一人暮らしをしていた頃は、どうせ見ないから折込チラシなしでの新聞配達をお願いしていました。今はネットチラシなどもありますし、何より紙ごみが増えるのが面倒で。広告媒体全体における折込チラシの存在感も時代によって変わりますね。

折込チラシの現物展示は、同じお店・会社について15年前のチラシと現在のチラシを並べるかたちになっており、見比べるのが面白いです。私が特に興味深く感じたのはドラッグストアのチラシで、15年前のものには薬、女性用化粧品、生活用品といったものが掲載されているのに対し、現在のものにはメンズケア商品(リアップや男性用洗顔料など)や食品も掲載されています。考えてみれば、昔は今ほどドラッグストアで食品が売られていることが当たり前ではなかったですよね。

値段比較も面白いところですが、残念なのは15年前のチラシと今のチラシで配布された月が異なり、単純比較がしにくいところ。商品によっては時期によって価格が変動するので、願わくば同じ月のもので比較したかったです。年間での商品価格の変動に詳しい方なら、私が読み取った以上にいろいろなことが読み取れると思います。

展示ではそれらチラシを配布する側のスーパーにも焦点をあてており、区内のスーパーマーケットの写真を取ってマップにしたものも掲示されています。面白い新聞記事が紹介されており、店のオーナーが作った時事川柳を毎回チラシに掲載しているスーパーが墨田区にあるのだそう。古い新聞記事が紹介されているだけで、そのお店のチラシ現物が展示されていなかったところを見ると、今はもう川柳掲載はやめてしまったのか、または単にそのスーパーが緑図書館のある地域にチラシ配布していないだけなのか。

最後にもう一つ紹介したいのが、墨田区のお店で配っている広告マッチの展示です。よく飲食店などで店名入りの小さな箱入りマッチを配っている、あれがずらっと並んでいます。私は煙草を全く吸わないので気にしたことがありませんが、喫茶店『ルノアール』のマッチ箱は見てすぐそれとわかったので、それだけ広告効果があるんですね。展示されていたものは、印刷の褪せ具合から察するに、今より少し前に配布されていたものに見えましたが、今でもこの手のものは配っているのでしょうか。

この展示のおかげで、これからいろんな広告に目がいきそう。広告のような身近なものこそ、あらためて歴史をふりかえることが面白いです。展示期間中に緑図書館にお越しの方は、ぜひお立ち寄りください。