現在の高円寺図書館が2025年4月1日に開館しました。" /> 移転前の旧・杉並区立高円寺図書館の訪問記―東京図書館制覇!
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移転前の旧・杉並区立高円寺図書館

旧・高円寺図書館は2024年12月30日を最後に移転のための休館に入り、その後1階カウンターで窓口業務だけを行っていましたがそれも2025年1月31日で終了しました。その後、現在の高円寺図書館が2025年4月1日に開館しました。

以下は、移転前の旧・杉並区立高円寺図書館の訪問記です。

移転前の旧・杉並区立高円寺図書館 訪問記

last visit:2024/12/30

杉並区立高円寺図書館は、高円寺駅よりも、むしろ東高円寺駅に近い、環七通りから路地を少し入った場所にある図書館です。2008年3月に改修されて、新しくきれいな設備と昔ながらの設備が混在するのが個性的です。

小学校があった場所に建つ図書館

高円寺図書館がある「杉並区高円寺南」という町は、上を通る中央線、下を通る東京メトロ丸ノ内線に挟まれていて、中央付近を環七が通っています。高円寺図書館はその「高円寺南」のちょうど真ん中あたり、駅で言ってもJR高円寺駅・丸の内線新高円寺駅・東高円寺駅を結んだ三角形の中央からやや東寄り辺り。光塩女子学院や杉並区の高円寺体育館などがある付近にあります。

図書館の駐輪場には「六つ塚跡」という史跡説明の看板があり、それによると大正末年頃に区画整理で崩されるまでは円墳型の塚があって、「その頃はまだ当図書館の場所にあった杉並第三小学校の児童たちの格好の遊び場」だったとのこと。そうか、高円寺図書館のある場所は小学校の跡地、つまり図書館が建つ前から人が集まって学ぶ場だったということか。後述するように入口が階段を上がった2階にある図書館の造りと子どもが塚に登って遊んでいたという看板の記述を照らし合わせても、かたちが少し変わっただけで「人が集まって登ったところで遊んだり学んだりする」という過ごし方が共通している感じで面白いです。

建物は3階建てで、竣工が1967年と古いです。現在は屋外の階段を上がった2階の入口と、その階段の下をくぐった位置にある1階の入口のどちらからも入れますが、バリアフリー対策などの改修工事をして2008年3月1日にリニューアル開館するまでは2階の入口しかありませんでした。こうして入口が2つになった今も、昔からある2階の入口が正面入口で1階が裏口のように感じてしまうのは、私がリニューアル前を知っているからでしょうか。予約本の取置は1階カウンターなので、機能的には1階がメインカウンターと言えそうです。

古い設備と新しい設備の混在が面白い

フロア構成は、1階がネット閲覧PCと小説・エッセイなど文学の棚。2階に新聞・雑誌コーナー、文庫コーナー、中高生コーナー、児童コーナー。3階は小説以外の一般書架、行政資料や地域資料がある参考資料室、閲覧机が集まる「読書室」となっています。リニューアル工事の際に後付けでエレベーターを設置したせいでしょう、読書室という静寂が求められる区画の奥にエレベーターがあるのが、不自然というべきか、どうにか設置場所を確保した設計者さんのご苦労を思うべきか。読書室を利用したいけど集中力を削がれるのを避けたい場合は、エレベーターを背にする席を選んだ方がよさそうです。

このエレベーターに限らず全体的に古めかしい設備と比較的新しい設備が混在しているのが、「古い図書館を工夫して使い継いできた」感を醸し出していて面白いです。例えば1階だったら、小説・エッセイなど文学の棚がある区画が昔ながらの設備、カウンター周りやお手洗いが新しい設備。リニューアル工事から10年以上も経った今はそれほどでもありませんが、リニューアル工事直後に来たときのお手洗いは渋めのおしゃれな雰囲気でお手洗いに見えなかったくらい(笑)。ちなみにそれら新しい設備のある区画は、リニューアル工事前は食堂でした。図書館に求められる設備や機能は時代によって違っていて、図書館巡りをしていると開館したときやリニューアル工事をしたときの考え方が図書館の設計に反映されているのを感じます。

2階はいろいろなコーナーのあるフロアですが、それぞれの区画に明確な区切りがあるというよりは中央の階段から各コーナーに自然に繋がっている造りで、自由にあちこち行けます。2025年4月の移転に向けて閉館する前に来たときは、中高生コーナーに面している壁に利用者から図書館へのメッセージ(だけでなく、職員さんから利用者へのメッセージも1つありました。いろいろな思い出をお持ちであることが伝わる素敵なメッセージでした)を掲示する場所になっていて、確かにここなら図書館の中でも多様な世代の利用者が通り、子どもも大人も参加する企画の場として最適だと気付かされました。

3階の書架は文学以外の一般書架なので図書館の中では硬派なエリアと言えると思うのですが、床が赤と白のチェック柄という妙に派手な色合いなのが面白い。図書館はわりと「児童フロアは色とりどり、一般書架は白基調のすっきりした感じ or 木目調の落ち着いた雰囲気」という色使いをしがちなところ、それとは一線を画す色使い。勝手に想像を膨らませると、ありきたりな図書館内装にはしたくなくて、気分が上がるような色使いを意図したのかも?

移転の予定あり、でも、この先も学びと縁がありそう

この高円寺図書館は上に書いたように、1967年開館なので2024年時点で開館58年目。2024年いっぱいはこの建物で運営されますが、2025年からはカウンターだけの開館をしながら移転作業に入り、2025年4月からはこの建物から見て北西寄りの複合施設に移転オープンする予定です。移転先の新しい施設は建物の造りや図書館サービス用の設備が今の基準で選ばれてきっと使い勝手のいいものになるでしょうが、これまで本と人を繋いでくれたこの建物も忘れないでいたい。

それに、図書館の前には小学校があった場所だったことを思うと、高円寺図書館ではなくなった後も何かしら人と文化を繋ぐような場として使われたらいいなと思います。次の活用が既に決まっているのかもと思ってネット検索してみたら、移転直後は光塩女子学園小学校・幼稚園を改築する間の仮校舎等として貸し出す旨の杉並区総務財政委員会資料が見つかり、やはり何だか学びの場として使われる運命にある場所のような。移転先からも近いことだし、新しい高円寺図書館に行くときにはこの跡地の様子もたまに覗いてみようと思います。

<移転前の旧・杉並区立高円寺図書館さんぽ記事>