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移転前の旧・杉並区立永福図書館

旧・永福図書館は2021年1月4日を最後に移転のための休館に入りました。その後、現在の永福図書館が2021年4月2日に開館しました。

以下は、移転前の旧・杉並区立永福図書館の訪問記です。

移転前の旧・杉並区立永福図書館 訪問記

last visit:2012/05/01
§ 図書館の場所

永福図書館は、西永福駅と永福町駅の中央よりやや西永福駅寄りの位置にあります。西永福駅から行く場合、改札を出て左の北口に降り、階段なら真っ直ぐ、エレベーターで降りた場合は折り返すかたちで踏切まで出て、線路と交差している通りを左(北)に進みます。100m強進むと「西永福駅入口」交差点で井ノ頭通りと交わるのでそこを左折し、50mほど先の「西永福」交差点で右手前に折り返すように伸びている方南通りに入ります。400m弱歩いて、左に大宮八幡が見えてきたあたりで「永福図書館→」という小さな看板が出てくるので、そこを右折。するとすぐ左に永福図書館の門があり、入った右先に永福図書館が建っています。

§ 図書館の複雑な構造

建物は2階建てと言おうか、4階建てと言おうか。杉並区立図書館要覧にも書いてあるように、建物としては2階建てなのですが、中2階がある上に、3階の中に2層になった積層書架があるので、図書館の配架図は4階建てとして描かれています。おそらく、積層書架は3階から下の部分もあって、2階以下が閉架、3階以上が開架という形なんだと思います。面白い構造ですね。

各階の配置は、1階が雑誌・新聞コーナー、旅行ガイドと児童コーナー、2階が郷土資料、外国語図書、大活字本に法令集など。3階が閲覧席と一般書架で、一般書架のうち総記・哲学・歴史・政治・経済が4階にあります。カウンターは1階と3階にあり、どちらでも借りたり返したりできます。

§ 新聞・雑誌コーナー

1階は、入口入ってすぐのエリアが新聞・雑誌コーナー。入って右の壁には、旅行ガイドも並んでいます。カウンターは、入口から見て左奥になります。以前は1階にも机席があったのですが、今は椅子席だけです。

入口からみて正面の壁の上には、門田光秋氏という杉並区大宮一丁目在住の方の作品が2点展示してあります。さらさらと描いたスケッチですが、狛犬には力を感じます。描かれている堀ノ内妙法寺は、ここよりもっと北東の新高円寺の方にあるお寺ですね。

§ 児童コーナー

1階のカウンターの脇から奥に進むと、児童コーナーがあります。左から正面の壁に渡って、各大陸の地図とそれぞれの場所で描かれた絵本や児童書が紹介されています。例えば、オランダのところではミッフィーが紹介されていたり、ロシアではくるみ割り人形、ツバルのところでは『砂上の船 水上の家』という写真絵本といった具合。 ただストーリーを読むだけでなく、その話が遠くの国で描かれたことを考えながら絵本をめくると、世界がより広がりますね。

絵本は日本のおはなしと外国のおはなしとで分けて、タイトルの五十音順に並んでいますが、棚に入りきらない大きい絵本は棚の上に並べています。五十音順の当てはまるところに、欲しい絵本がなかったら、棚の上を探してみてください。また、絵本の中でも、バーバパパ・アンパンマン・ぞうのエルマーなどのシリーズ絵本は、読み聞かせコーナーの入口付近に置いてあります。読み聞かせコーナーは、絨毯のところと畳のところがあるので、好きな方を選んで読めますよ。

また、「のりもの・こうぎょう」「ことば あそび」「しぜん・むし・どうぶつ」の絵本は、読み聞かせコーナーの外にあり、「のりもの・こうぎょう」「ことば あそび」「しぜん・むし・どうぶつ」のそれぞれのジャンルの中で出版社名の五十音順に並んでいます。

児童コーナーで本を探している大人に利用して欲しいのが、紙芝居の棚の上にある「こどもの本 ~保護者・児童図書にかかわる方々向け~」という、図書館手作りの資料。絵本ガイドや児童文学ガイドなど、児童の本について書かれた大人向けの本というのは、永福図書館では3,4階の一般書架にあるのですが、そうした本を紹介する冊子を図書館が作って、児童コーナーに置いてくれているんです。中を見ると、本の表紙がカラーコピーしてあり、どの階にあって、請求記号が何かというのが書いてあります。絵本ガイド・児童文学ガイドに限らず、わらべ歌や遊びの本も紹介されているので、子どものための本を探す方は、この冊子を手掛かりに一般書架の本も活用してくださいね。

§ 2階の書架

2階は、1階から3階への階段の踊り場をちょっと広めにしてみましたみたいな、それほど大きくはないフロアです。並んでいるのは、郷土資料、英語の図書、大活字本、法令集など。また、財団法人の定期刊行物や、出版社の広報誌も並んでいます。出版社の広報誌は、最新号だけでなくバックナンバーも並んでいますよ。

§ 3,4階の一般書架

3階は広くて天井も高いし、ここがメインのフロアという雰囲気です。天井は高いけど、書棚は高くないので、163cmの私でどの棚も踏み台などなしに手が届きます。それでも柱の陰に長い脚立があったのでこれは何に使うんだろうと思いきや、天井の蛍光灯を換えるにはこれが必要ですね。天井の高い図書館は職員さんも大変です。

小説は、著者名の頭文字で分類されていますが、同じ頭文字の中の分類が独特で、著者名の頭文字ごとに図書館で著者に番号を振って、その順に並べているのです。つまり、「シ1」は誰、「シ2」は誰、みたいな番号を独自に振って、その順番で並べているのですね。新しい作家が登場すると新たな番号が振られるので、概ね「頭文字と文壇登場順」のような配列になるのですが、単純な著者名五十音順と比べるとちょっと探しにくい。杉並区立図書館は全館でこういう請求記号をつけているのですが、「頭文字と文壇登場順」的並び順より、著者名五十音順の方が探しやすいように思います。外国の小説は、東洋文学、中国文学、英米文学といった具合に、国・地域別に分けた上で著者姓名の五十音順に並んでいます。外国小説で五十音順にしているんだから、日本の小説も同じようにすればいいのにな。

また、小説のうち、複数作家の作品集は、著者名ではなく、出版社名の頭文字で分類されます。この場合、新潮社の本は「シ」というように、番号が付かない頭文字だけの請求記号になり、「シ1」の前に並んでいます。いろんな作家の作品を少しずつ読んでみたいときには、大きな出版社の頭文字の棚を見れば、いい本が見つかるかもしれませんよ。

ちょっと面白かったのが、小説以外の文庫本。文庫本は、日本の小説、外国の小説、それ以外で分けられているのですが、文庫本の漫画も「小説以外の文庫本」に分類されて、文字モノの文庫本と一緒になって著者の五十音順に並んでいるのですね。だから、『まことちゃん』(楳図かずお・作)の文庫本の隣に梅原猛の文庫本が並んでいたりするんです。ほとんどの図書館では漫画は漫画でまとめているので、こんな並びは都内でも永福図書館だけかもしれません(笑)。

小説以外の図書は、4階から3階へと分類番号順に並んでいます。これも大抵の図書館では、家事関連本などの利用の多い図書は入口近くに置いていたり、あえてイレギュラーな並びにして利便性を高めているのですが、永福図書館の書架が頑なまでに分類番号順です(笑)。建物の構造は複雑なのに、書架の並びは意外と整然としているというべきか、構造が複雑だからこそ書架を整然としてバランス取っているのか。

§ やっぱり魅力は構造の面白さ

永福図書館にいて面白いのは、やっぱり2階建てでもあり、4階建てでもあるというこの構造。永福図書館は、杉並区では柿木図書館と並んで最も古く開館した図書館で、その開館日は1965年8月1日なんです。おそらく最初は、積層書架全てが閉架だったんじゃないかな。それを、開架書架が図書館の主流になるに従って開架にしたのではないかと思います。

永福図書館の1階から4階まで面積が全て異なって、階段の位置もずれているので、上に上がっていくというより、斜めにあがっていく感じなんですね。それが、行けども行けどもまだ奥に書架がある感じになっていて、とても面白い。エレベーターもないし積層書架は狭いので、バリアフリー面では悪いのですが、建物として楽しいんです。

新しくできる図書館はバリアフリー面にも配慮したシンプルな構造になることが多く、シンプルさはコストを抑える点でもメリットなのでしょうが、ちょっとつまらない面もあるんですよね。古くに建てられた図書館は、変に凝っている構造も魅力の一つ。ぜひ、この面白い構造を楽しんでください!