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「森田睦絵/日本の名詩52点とのコラボレーション鑑賞展」

―2008年4月19日から5月18日までの展示
visit:2008/05/14

墨田区立緑図書館は1階に展示コーナーがあり、ガラスケースも大きいものが設置されていて、本だけでなく墨田区に関連するいろいろなものがそのときどきのテーマに沿って展示してあります。4月下旬から5月中旬にかけての展示は「森田睦絵/日本の名詩52点とのコラボレーション鑑賞展」。

森田睦氏は墨田区在住で生まれも墨田区の画家。緑図書館で詩と絵のコラボレーション展を行ったのも今回が初めてではないようです。この展示の期間中、緑図書館で森田氏自身の文化講座も行われたんですよね。そちらは残念ながら私は行けなかったのですが、緑図書館は月に1度の割合で3階の学習室で文化講座を開催しているので、いつか受講してみるつもりです(毎回当日申し込みで学習室の定員分受講できるようです)。

展示コーナーの方は、画用紙の上にいろいろな詩人の詩とともに、絵が描かれている作品が壁に貼ってあったり、ガラスケースの中に展示されていたり。詩の部分も森田氏の手描き文字です。画用紙の半分を詩、もう半分を絵が占めていて、主副の関係ではなく、両方合わさって1つの作品になっているのですね。寺山修司の「幸福が遠すぎたら」には力強い山独活の絵、清水哲男の「てのひらほどのうた」には3つの石の絵など、また、中には絵でなく版画と詩のコラボレーションもあります。

戦時下に作られた詩もあるのですが、それが芽を出して上に枝を伸ばさんとしている植物などと一緒に描かれると、悲惨な状況よりもそれに負けじという生命力を感じて、元気が出てきます。それに、今回選んだものがそうなのか、森田氏の作品にそういう傾向があるのか、韻を踏む詩が多くて、頭の中で詩を読んでいると音も楽しめるんですよ。パッと見では柔らかい絵と文字なのですが、詩を読んでまた絵を見たりしているうちに力強さを感じてきます。

緑図書館には、この1階の展示コーナー以外に3階にも1階の1/3くらいの面積の展示コーナーがあり、そこでは「"すみだ"ゆかりの詩人」というテーマ展示をしていました。今回が詩と絵のコラボレーションだったので、それにちなんで詩人にしたのでしょう。

取り上げられているのは、吉岡実(本所生まれ)、会田綱雄(本所生まれ)、関根弘(寺島育ち)、辻征夫(子供時代を本所・向島で過ごす)、佐々木幹郎(千歳在住)の5人。ガラスケースの中に展示されているので手に取って見たりはできないのですが、詩集はもちろん、各作家の墨田区を描いた詩も展示されています。関根弘と辻征夫が同じ「吾妻橋」というタイトルで詩を作っているのですが、時代も様子も全く異なっていて、読み比べると面白い。どちらもそのときの吾妻橋の姿なんだろうなって。

今回の展示、特に1階を見てから3階を見ると、この詩と合わせるとしたらどういう絵がいいかなと考えてしまいますね。吾妻橋という詩だったらそりゃ吾妻橋を描くのが王道なのでしょうが、今の吾妻橋を描いたらアサヒビール本社のあの物体が入っちゃうし(特に関根弘の方の吾妻橋は神谷バーから吾妻橋を眺める詩なので)、ここはあえて外して…など空想が膨らみます(笑)。こういう詩の読み方も面白いなあと、これから私の詩の読み方も変わりそうです。